あらすじ
数十億年前、いま最も注目を集めるあるウイルスの祖先が誕生した。ヒトや細菌とは遺伝的系統を異にする彼らが、私たちの〈共通祖先〉に感染し、生物の発展・繁栄に不可欠なDNAや細胞核をもたらした!?そして、その子孫たる「巨大ウイルス」が明らかにする、生命と進化の知られざるからくりとは?日本初の巨大ウイルス=トーキョーウイルスの発見者が語る、生物進化のアナザーヒストリー。
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Posted by ブクログ
タイトルの通り、ウイルスが生物の進化にどのように関与してきたかということを、筆者の考えを中心に述べてあった。筆者も述べている通り、内容の多くが仮説であったが、その仮説が非常に面白かった。というより、ここまで生物とウイルスの関わりが深かったのか、と驚きを隠せなかった。ウイルスが感染した細胞性生物の中で作り上げる様々な構造と、我々の体を作っている細胞との間にここまでの類似性があることに驚いたと同時に、本書で述べられている仮説は仮説ではなく、事実なのではないかと一人で勝手に興奮してしまっていた。もしかしたら未来の教科書に、本書の内容が載るのではないかと思った。そうなったら本当に面白い。
Posted by ブクログ
この時期だから、読んでみた。
メディアでの露出度の高い感染症学者の視点ばかりが強調されるが、もっと足元のことが知りたい。免疫学やウィルス学、更には集団感染の現場で指揮をとったディーパットの方々の話などだ。
その中で今回選んだのがこの本。
「ウィルスって生物なの?」と立ち止まって考えたり、タイトルのように「生物とウィルスの関係性」に想像を馳せたりすることができる。
武村先生はオタクっぽくも感じるが、研究者ってこういう方が多い。そうでないと、自分のオリジナルの仮説の確からしさを解明するために何度も、挫折を味わっても立ち上がれない。(いやそんなことをしているからそういう雰囲気が漂うようになるのかもしれない)
このウィルスのナノマイクロの世界を見つめながら、「人類いや、生物に影響を与えてきたウィルスが本当の地上の主役だった」なんて仮説は普通の人間は受け入れられない。
でも、そんなウィルス主体WORLDが存在していてもおかしくない。もしかしたら、数年後の歴史と生物の教科書は書き換えられているかもしれない。
この本の情報はSF小説や映画を見るときに、かなりの考証のヒントを与えてくれるし、グッと深く楽しめるようにしてくれた。
18歳の俺が武村先生に出会っていたら、巨大ウィルス研究所の門を叩いていたかもしれない。
Posted by ブクログ
2017/6/10 ジュンク堂三宮駅前店にて購入。
2018/10/1〜10/5
ミミウイルスという巨大ウイルスが見つかった、という話は知っていたが、その学術的意義についてはあまり知らなかった。この本はそのあたりと生命の進化に関して書かれており、凄く面白かった。良い本でした。
Posted by ブクログ
『ウイルスの本体は「ヴァイロセル」、ウイルス粒子は”生殖細胞”に過ぎない』など、腰帯の『「常識が覆る快感」を味わう、極上の生命科学ミステリー。』に、偽りを感じませんでした!
Posted by ブクログ
タイトルの「ウィルス」とはヒトに病気をもたらすものではなく、細胞に対して感染する一般的なものを示しており、医学的より生物的な話に終始している。
小さめな単細胞に迫る勢いの大きさの巨大ウィルスから触れているが、細胞とウィルスの境界を曖昧にするという話ではなく、ウィルスがいかに規格外か示す一例であり、本書中には他にも多様なウィルスを紹介している。
そういったウィルスの特性を元に、真核生物など現時点で起源が分かっていないものに対する仮説を説明している。
ある程度DNAの仕組みなどを理解していたつもりだったが、この本を読んで余計にわからなくなった、それだけ根本的な議論に触れるという意味で良本と感じた。
細胞に感染してからDNAを複製するまでの間で、一時的にウィルスが消えるように見えるいわゆる「暗黒期」、ウィルスが本領発揮して複製しまっくている意味では「黄金期」であり、その過程で複製工場のようなものを細胞内に構築するとのこと、またそれが真核生物が生まれた経緯であるとのこと。
個人的に興味の持っていた、遺伝子の水平移動についても触れていた。
ただ細胞の立場では「移動された」であるが、ウィルス的には、ある細胞のものが自分の遺伝子に組み込まれ、またそれが別の細胞に組み込まれる、2ステップあることを改めて記載している。
ただそれ自体の説明の流れではなく、ウィルスの起源が不明過ぎる件について、特にリボソームの観点で明らかに説明がつかない種についての、一つの説の根拠として述べている。
卵子に対する精子の挙動について、細胞に対するウィルスのそれと同じであると言及があった、同じことを考えていたので、よく言語化してくれたと思った。
ここから派生して、ウィルスとは何かという問いになる、一般的には細胞を求めて彷徨ってる姿を想像するが、それはほぼ非活性な状態であり、対してウィルスが活躍してる姿は細胞内の暗黒期であり、他の細胞内にいるタイミングが真の姿とは…というジレンマもある。
「共感染」と言うキーワードが出ている、一つの細胞に対して複数のウィルスが感染している状態を示す。
ただウィルスの立場としては、細胞のリソースを分け合うわけなので、それぞれ迷惑しており、もう一方を排除するための免疫相当の機能がある。
一般的に思い浮かぶ免疫細胞とは違うが、もう一方の遺伝子情報を保持する意味では若干仕組みは似てるし、そこでも遺伝子の水平移動の概念が出てくる。
Posted by ブクログ
積読していたが、ウイルスの話題が多くなったので、改めて読んでみた.最近の研究成果からウイルス自体の存在について、これまでの考え方を一変させる議論が展開されている.様々なテクニカルタームが続出するが、ヴァイロセルが最も重要だと感じた.ウイルス粒子が普通の細胞(ライボセル)に侵入してウイルス工場を作る という話(p224)だが、土台としてのライボセルをベースにRNAがDNAに進化し、生物が誕生した由.凄い話だと思う.
Posted by ブクログ
巨大ウィルスの存在など、知らない情報が多くて勉強になった。くだけた文筆に賛否あるかもしれないが、説明もうまいし読みやすくて良いかと思う
紹介されている仮説についても、辻褄を合わせた内容に留まっている部分もあるが、今後発展が期待される。
ウィルスは生物ではないとする現在の定義こそ、古いし偏屈的で、見直されるべき。
遺伝子の水平移動をふまえると、ウィルスが細胞生物の進化に寄与しているのは常識化しているが、より生命の起源に近い存在だととらえるのは飛躍が著しいとまでは言えない。細胞核やDNA、免疫システムなど、様々な革新の形成に関与している可能性が高い。ウィルス粒子を生殖細胞と対比する見方も面白かった
Posted by ブクログ
正直なところ、書いてあることの半分程度しか理解できなかった。
だがしかしウイルスが生物をどう進化させてきたのか、という大胆な仮説と、巨大ウィルスの概要についてはそれほぼ難しくなく理解できた。
この大胆な仮説、言われてみれば「そんなん当たり前だろ」という気しかしないが、本当に飛躍した仮説なんだろうか。
ウィルスは生物なのか、という点についても無難なところに落ち着くことなく解釈されていて、とてもおもしろい。が、ちょっと自分には難しい箇所も多々あった。
よくわからないまま自分の感想というのもなんだが、「生物とは何か?」という問いの答えは、ウィルスは生物なのか?という問いの答えの中にあり、また「巨大ウィルスのように、目に見えているものの気がつかない存在」が今後も数多く見つかって行く過程で、その答えが少しだけ見えてくるという感じでなかなか興奮する一冊。
Posted by ブクログ
内容メモ: 巨大ウィルスはtRNA合成酵素遺伝子を持っている
ウィルスの進化系統樹
ウィルスによる遺伝子の水平移動
イントロンスプライシングはミトコンドリアからもたらされた、でスプライシングによって細胞核が必要となった、かも
胎盤に関わる遺伝子はウィルス遺伝子由来
ヴァイロセル仮説: 生命観の再定義?
感想: 面白そうな話がバラバラと出てくるが、話のまとまりにちょっと課題があるのと、どこまでが広く受け入れられた説でどこからが大胆な仮説なのかちょっと混乱しやすい。