【感想・ネタバレ】将棋殺人事件のレビュー

あらすじ

謎々を拾った者が、次第に心を病み、墓地で死体を掘り返す――六本木界隈である怪談が広まっていた。そんなとき静岡で大地震が発生、土砂崩れの中から二つの屍体が発見される。屍体と怪談との類似点に注目、調査を始めた天才少年棋士・牧場智久が到達する驚愕の真相とは? 書き下ろし短編「オセロ殺人事件」収録。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

○ 総合評価  ★★★☆☆
〇 サプライズ ★☆☆☆☆
〇 熱中度   ★★☆☆☆
〇 インパクト ★★☆☆☆
〇 キャラクター★★★☆☆
〇 読後感   ★★★☆☆

 ゲーム3部作の2作目。「将棋殺人事件」というタイトルだが,テーマとなっているのは「詰将棋」と「恐怖の問題」という六本木界隈で流行しているという噂
 将棋殺人事件は,2つの流れがあり,1つに収束していく。1つ目は詰将棋の盗作問題をめぐる話。2つ目は静岡県掛川で見つかった男女の死体と,六本木界隈にある「恐怖の問題」をめぐる話。
 恐怖の問題関係については,牧場智久と牧場典子の姉弟による調査がされる。その調査の中で,女子寮が噂の出どころと突き止める。
 詰将棋に関する話は「赤沢真冬」という詰将棋作家の作品の盗作に関する話。こちらの話は主に将棋雑誌関係の人の視点が描かれる。
 そして恐怖の問題と詰将棋の盗作問題が「加納房江」という人物を介してつながる。
 この小説のオチ・メイントリックは,犯人が二重人格だったというもの。女子高生である秋村紗貴が二重人格で,二人目の人格が狂っていたために,脅迫行為や殺人をしていた。しかし,二重人格モノ(多重人格モノ)は夢オチみたいなもので,上手く処理しないと「何でもあり」という印象を与え,陳腐になってしまう。この作品も,竹本健治好きでないと陳腐に感じてしまう可能性がある。
 竹本健治好きの目から贔屓目に見ても,「将棋殺人事件」は傑作とは言えない。詰将棋に関するうんちくは読んでいて面白いし,牧場智久と典子による捜査と推理は,それなりに読ませる。しかし,全体の構成がもっと深い謎を持っているように感じさせるにもかかわらず,二重人格で落としてしまっている点が物足りない。解説にも書かれているが「将棋殺人事件」には隠されている空白があるように感じさせる。何か,もっと深い秘密・真相が残されているように思わせる。とはいえ,結局,読者に最後まで分からない真相は存在しないものと変わらない。単に伏線の回収不足と感じてしまった。
 最後のオチが「二重人格でした。」だったので,サプライズ感は薄い。ときおり挟まれるよく分からない記述が物語への没入感を妨げるので熱中度も低い。
 キャラクターは牧場智久や牧場典子などそれなりに描かれている。総合評価としてはどうだろう。甘めに見ても★3といったところか。
 なお,追加で収録されている書下ろし作品「オセロ殺人事件」はオセロに似た源平碁をテーマとした作品。源平碁が白と黒ではなく白と赤の駒を利用するという点をトリックにしている。駒に高価な貨幣が隠されていたというオチ。分かりやすい短編小説。傑作とまでは言えないが佳作。これも含めたトータルで見ても総合評価は★3だろう。

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2019年05月06日

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