あらすじ
不妊治療を始めるか、続けるか、やめるか、突然の妊娠、仕事と出産、育児をどうするか、流産をどう受けとめればいいのか、独身で産むか、病気で産めなくなることにどう向き合えばいいのか……妊娠と出産をめぐる女性のさまざまな戸惑いや迷いを丁寧にすくいあげる注目作。産む、産まない、産めない―ー「産む性」として揺れ動く女性たちの"心の葛藤"とそれぞれの"人生の選択"を描いた八つの物語。人生のヒントがここにある。
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Posted by ブクログ
タイトルからずっと気になっていた作品。
妊娠と出産を巡る8つの物語。
8つの物語はそれぞれ短編集になっていて、ひとつひとつ読み終える事に感情が揺さぶられて読み終わるのに時間がかかった。
どの短編に出てくる女性たちはとても強くて、悩み・葛藤しながらでもどんな選択も正しいと思わせてくれる。
解説にもあるように、
『他人や社会が何を言おうとあなたが悩んで考えて自分で決めたことならそれが“正解”』なのだ。
まさにその通りだと思った。
スラスラと読めるような内容ではなかったが、女性ならではの悩みや葛藤もあり、読んでいて出てくる人物達に感情移入をして苦しくなる場面も多々あった。
が、結果的に自分の選択が1番正しいと思わせてくれるそんな小説でした。
Posted by ブクログ
産む人、産まない人、産めない人、同じ女性でも立場が違う。結婚してるかしているかの線引きはない。
私は産まないを選択した1人。桜子のようなエネルギーは無いから、百合子の立ち位置が近いかも。夫との子どもを産み育てたいけど、そんなエネルギーも余裕もないから、産まないことを選んだ。
どんな選択をしようとも、この話の中に出てくる女性たちはみんな素敵。人生がガラリと変わる経験があっても、強くなったって思えるってなかなかむずかしい。特に桜子と重美の話が好き。産んでいない人という立場が同じ2人の状況が変わっていく。最後は産むとか産まないとかにとらわれない関係性になっていく所にぐわぁっとした感動があった。私の周りは子どもを産む選択をした人がほとんど。あとは不妊治療と闘っている子。子どもの話を聞くと素直に喜べないし、不妊治療の子の言葉にも傷つく。また遊べる子が減っちゃったって。いつか、こんな悩みを心から話せる友人と出会えるのかな。
Posted by ブクログ
短編集。全てのお話が、つらい状況でも終わり方がすごく前向き。
ダウン症の姪が産まれる、「レット・イット・ビー」の最後が良いなと思った。
「妊娠したら産めばいいし、機会がなかったとしても後悔する必要もない。ないものばかりを捜す毎日はつまらないし、手にしたらきっと他のものが欲しくなる。あるがままに。」
この箇所を読んで、泣くまではいかないけど、じーんと来た。
私自身は、子どもを一人産んだけど、妊娠も出産も育児も、一人で精一杯、二人目は無理と思っていて、でも本当に二人目を産まなくて良いんだろうか…と悩んでしまっていた。だけどこの箇所を読んで、ないものを捜しているだけなんじゃないかと思った。二人目を産んだら、次は何か他のものが欲しくなるのかな。
この「レット・イット・ビー」が一番良いなと思ったら、あとがきを読むと著者の経験から来ている話だと知ってなるほど〜と思った。
あと、死産の話は、私にも死産を経験した友達がいて、その友達のことを思いながら読んだ。
産院で他の人の赤ちゃんの声を沢山聞きながら死産で入院しているのはほんとに辛かっただろうな…と読みながら思った。かけられる言葉なんてないのに、私がかけてしまった言葉は友達を傷つけただろうな…とも思った。
この話では、最後に主人公は旦那さんの言葉で前向きになるけれど、そんなにすぐに前向きになれるだろうか…と思った。自分が苦しんで産んだ子どもの遺骨を海に撒くシーンが読んでてつらかった。
最後のお話「昨日の運命」が、一番最初のお話「最後の選択」の続きで、途中に出てくる「コイントス」でも同じ登場人物が出てくるのが良かった。
「昨日の運命」に出てきた言葉、
「わかりやすい不幸を見せびらかすのは甘えだ」
に、自分も気をつけようとハッとさせられた。
あと、男性の育休についてのお話。
この本が単行本で出たのが2014年なので10年くらい前だけれど、そんなにも男性が育休取るのって珍しくて難しいことなのか…と思った。
夫は2023年に4ヶ月育休を取ったが、夫の会社では男性で育休を取ったのは夫が初めてだったらしい。男性が育休を取りたいって会社に言うのは相当の勇気がいるものなんだなとこの本を読んで思った。もっと当たり前になってほしい…。
窪美澄さんの「いるいないみらい」と似たようなテーマの本だった。「いるいないみらい」は出産前の妊娠中に読んで、この本は出産後の子育てしてる時に読んだ。読むタイミングの問題かもしれないけど、この本の方が心に残った。
Posted by ブクログ
凄く良かった作品でした。
窪美澄のいるいないみらいと同じヒューマンドラマ。
それぞれの物語が、赤ちゃんを産む、産まない、産めないをテーマにしていて、それぞれ読んでいた後に色々考えてしまいました。
それぞれの登場人物にも色々事情があって、それについて考えて生き方が変わって行く所が印象的で、妊活している僕としても赤ちゃんが出来たら、こんな風に変わるんだなーと思いました。
次男坊の育児日記
子供持ったら、雄二のように写真撮ったり、日誌にも出来後等を残すのかなーと思いました。
Posted by ブクログ
「妊娠」についての短編小説。
シングルマザー、再婚、男性の育休取得、不妊治療、死産、未婚ママ、ダウン症、子宮体癌。
はじめて甘糟りり子さんの小説を読みました。
タイトルから、女性の立場からのストーリーなのかなと思っていましたが、中には男性の育休取得のストーリーもあり、興味深かった。
最後、解説で大矢博子さんが「妊娠や出産について、そんな周囲の声と自分の気持ちの狭間で悩む全ての人に、本書をお届けしたい。」と書かれていた。
どの年代、性別、価値観であっても考えさせられるストーリーになっていて、最後はどの選択をしても正解であり、間違えではない。
どの選択をしても、自分はこれでいいと思える1冊だった。
とってもよかったです
わたしはまだ18歳で、大学生になったばかりで妊娠や結婚なんて遠くの存在だと思っていました。
ですがその時はふと来るんだと、また自分が望んでいた場合でも命が宿らない場合があるんだと再認識させられました。
全て読み終わってとっても感慨深い気持ちになって、なんだか当たり前のことしか書けないのですが本当に素敵な小説でした。様々な「産」の選択肢がある事がわかりました。
こんな良い小説に出会えて良かったです。
Posted by ブクログ
10代、20代、30代、40代、未婚、既婚、シングルマザー、高校生などなど、色々な立場の女性の妊娠出産にまつわる葛藤や思いが伝わってきます
男性の育休制度や女性のキャリア、高齢出産と、出産での社会的な課題は出版当時からあまり変わってない現状が少し悲しい
どのお話も、ラストは明るくて良かった
Posted by ブクログ
当たり前に人それぞれだった。年齢、体調、夫婦関係、仕事の立場、親や義母との関係など、背景は様々で、どの女性の選択も勉強になった。妊娠出産って、想像以上にデリケートな話題なんだな。
Posted by ブクログ
11年も前の作品だから要所要所に時代を感じるアイテムやキーワードが出てきつつも、本質は11年経った今でもそう変わってないなと感じる。
男性の育児休暇取得や女性の社会進出はそこそこ進んだのかもしれないけど、女性に与えられた生物学的役割やそれを求める世間というのは変わらんもので。
ただ、読みながら考えさせられたのは11年前にこれを読んでいたら私は誰のストーリーに心を動かされ、誰に共感したのだろう?ということ。
ある種人生を達観し気味の今、女性という生き物は大変だなと俯瞰して読めたが、それでいいのか?という疑問も残る。
人にはそれぞれの価値観があり、それらの考えは尊重され、誰かと比較するものではない…と、自分に言い聞かせたのも事実。
今世の環境を受け入れ楽しむこととする。
Posted by ブクログ
女性と切っても切れない関係の妊娠と出産。ある程度の年齢になると嫌でも意識させられるこの話題。
誰と話そうと、何を読んでも聞いても、結局は自分がどうしたいかだけなんだなと思う。それが未来の自分からすると正解なのか後悔になるのかはわからないのがまた不安になり悩んでしまう。誰か正解を教えてほしいと思うことばかり。仕事・結婚・出産など不安になったりモヤモヤしたりするけれど正解は後にならないとわからないからこそ、悩んでいきたい。目の前にある今しかないかもしれない幸せや楽しみを蔑ろにしない程度に。
Posted by ブクログ
同世代の友人たちと話すときに、いろんな事情がある可能性を頭に入れておきたいと思い読んでみた。
妊娠することも、出産することも、出産を歓迎されることもとても有り難いことなんだなと感じた。
Posted by ブクログ
再読。
前回読んだ時は、妊娠も出産も現実味がなく、
一児の母となった今、読んだらどう感じるだろう、と思ってもう一度読んでみました。
"妊娠=めでたい"だけではない、不安や焦り、嫉妬などのマイナスな感情も包み隠さず書かれていて、リアルだなと思いました。
むしろ生々しいくらい。
5話の温かい水では、涙が止まりませんでした。
Posted by ブクログ
男性や女性が妊活や妊娠出産育児を通して経験する多くの葛藤と様々な背景が描かれていて読み応えのある本でした。一通り経験のある私にとっては共感できる心情も多くぶっ刺さりました。改めて妊娠出産は奇跡だなあと。男性にもぜひ読んでもらいたい!
Posted by ブクログ
初めての、甘糟りり子さん。
SNSで婦人科系の病気に罹り、悩んだ末に読んだという記事を知って。
自分は不妊治療はなく経済的な理由とその他もろもろと家族と話し合い、
子なしの選択をした。でもどこかで踏ん切りがつかなかったのだろう…
「読んだら答えがわかるのかもしれない」と不思議に思った小説です。
『女性は子どもをつくることが使命』
子孫を残さなければいけない『固定概念』
それが私たち女性を縛っているのではないかと思っている(たぶん)。
第四話の『コイントス』、産婦人科医の言葉が衝撃的でした。
「出産が女の人生の全てとは考えないようにしませんか」
その固定観念が『正解』じゃなく、本人・家族が『一番いい道だと決めたものが正解』であること。妊娠・出産は本当に奇跡。機会がなかったとしても後悔する必要はない。その言葉は自分自身への『解い』だったのではないかと思い心がスッとしました。
また男性の育休。導入してる企業も増えてきていますが、まだまだ男性が育休を取るというのが少ない印象。育児だって女性がやる仕事ではない、男性だってやる仕事。それが家族という『組織』なのだから。そういう部分も解消していける世の中になることを願ってます。
仕事と育児・男性の育休・死産・婦人科系のガンに不妊治療と、どれも女性がぶち当たる壁。それぞれを経験している8人の女性の感情が繊細に描かれていて、心が潰されそうになりましたが…。
数年前にこの本に出会ってから、今とは違って価値観が変わっていたのかもしれない…と思いました。
Posted by ブクログ
私は半年前に死産を経験しました。その辛さを誰にも打ち明けることができず、気持ちの整理もつかないまま日々過ごしています。
誰かに話しても「どうせ誰もわからない」と思ってしまっていますが、それでも誰かに共有したいという気持ちがありました。テーマを絞ってこの本に辿り着きました。
『温かい水』では死産について描かれており、あまりにも感情移入しすぎて、涙が止まりませんでした。
短編形式で複数のテーマが扱われているため、各テーマについてもっと深く掘り下げられる余地があるように感じました。
現実はもっと苦しく、もっと地獄のような日々です。
しかし、自分の言葉にできない感情や葛藤が様々な場面で言語化されており、共感できました。どんどん感情移入しました。
たくさん泣いたら、少し気持ちが楽になりました。
各テーマの主人公たちは、最終的に前向きに切り替えようとしていますが、情けないながら、私はまだその段階に至っていません。それでも、たくさん泣くことでほんの少しだけ前進した気持ちもしています。
私は今、周りの幸せを感じると、「なぜ私は、、」と毎回思ってしまい、自分がどんどん嫌な人間になっているような気がします。
「惨めな気持ちは心を醜くする」という言葉が小説内にありました。
まさに自分自身に当てはまると感じました。
前向きにはなれやいし、すぐには立ち直れない、けれど言語化できたことで少しスッキリしました。
Posted by ブクログ
タイトルの通り、妊娠・出産にまつわる8つの話。
現在妊娠中、これから出産を迎える私にとってはどれも自分事のように感じられ、感情移入してしまった。
予期せぬ妊娠、未婚の母、歳の近い連れ子、流産、子宮全摘、ダウン症、娘の妊娠...どれも重いテーマだけど、女性である自分のすぐ側にある事。小説だったからこそ、良い意味で気軽に考えることが出来たのかも。
Posted by ブクログ
産まないという選択をした人は出てきませんでした。
自分と重なる部分が多く涙を流れた。
温かい水では死産の話題。自分は流産だったけれどそれでも手術が終わって新生児室の前を通って帰る時はあーーってなったから死産となればよりだろうと思ってその時の感情とかいろいろなもので涙がでた。
不妊治療の話もダウン症の話も自分の心を触っていかれるような感覚になった。
産まないという選択の話も出てきて欲しかったな。
桜子には子供の父親に伝えてほしかった。
Posted by ブクログ
「妊娠」と「出産」をテーマに描かれた短編集。
男性の育児休暇取得、産婦人科医の出産、不妊治療、シングルマザーについてのお話などなど、興味深く読ませていただきました。
「彼女たちが勇気を持って決めたことを、応援してあげたい」そんな気持ちになりました。
ラストの2行が個人的にはすごく好きです。
Posted by ブクログ
・
読書する時って、共感要素があると「良い本だ!」って思いがちなのだけど、それで言うと
・ある→産む、産めない
・ない→産まない
というストーリー展開なので、全女性からの共感性は低そうだな。わざとらしい配慮は、それこそわざとらしくなっちゃうけれど”産まない”選択をした話も読んでみたかった。
見通しだけでは何ともならないのが出産。
でもバランス取れないことが、”生”そのものなんだと思う。
Posted by ブクログ
どの立場の女性も、読めば感じることがあると思う。
死産の話はつらかった。。
うちの主人は育休をとることにしたが、やはり、周りに相当気を使うようで。男性の育休がもっと浸透するといいな。
Posted by ブクログ
もう産むことの出来ない年齢になってから読んでよかった。まだ産める年齢だったら(やっぱり二人目欲しい!)と色々動き出してしまうところだったかも。
産むのも産まないのも、それぞれの人生。私は40歳過ぎてからラッキーにも子供に恵まれた。そのことに感謝しようと思った。
Posted by ブクログ
辛い話や悲しい話もあるが、最後はとても清々しい。何を言おうと自分で決めた。それが正解。これは女性だけど問題ではなく家族の話でもある。だから無関係な人は誰もいないと思う。子供もいろいろな形で生まれ人生をたどる。それも家族、人生最後は幸せになってほしい。
Posted by ブクログ
タイトルは「産む、産まない、産めない」の3つに分けられているけど、この本を読むと女性の数だけ妊娠・出産にまつわるエピソードがあるんだと夢中で読んでしまった。
特に心にグッサリきたのは、老舗呉服店に嫁いだ主人公が、姑から早く孫をとプレッシャー受けながら、なかなか妊娠に至らない悩みを書いた「コイントス」かなぁ。
妊娠・出産にかかわらず、諦めたいけれどキッカケがなくて辛いってことあるよねぇ。
妊娠・出産は女性だけのものじゃない。
体の負担だけで言ったら女性特有のものになっちゃうけど…
無関係だと思っている人にこそ読んで欲しいと思った1冊でした。
Posted by ブクログ
それぞれの立場にある女性による、
「産む、産まない、産めない」短編集。
望んでいない妊娠・望んでいるのに妊娠できない・
待望の妊娠・・・
どんな立場にあっても、女性って強いな。
結婚して、妊娠して、子どもを育てて。。。
当たり前のようで、当たり前ではないと
改めて思った。
男性目線のこういった物語も読んでみたい。
Posted by ブクログ
レット・イット・ビーがリアリティーがあってよかった。あとは“物語”としての美しさはあれど、現実とはちょっと離れていると感じた。
主人公の心の動き、全体の流れ、展開がよかった。
Posted by ブクログ
妊娠・出産をめぐる女性の葛藤、そして人生の選択。
前作がとても好みで良かったので、
続けてこちらの作品も読んでみた。
女性としてはもちろん他人事のようには思えなくて、男性にも考えさせられる内容があったり。
いくら考えても正解はないけど、
あなたが考えて出した答えなら、それが正解。
多様化が進んでいる現在の時代で、
結婚や妊娠・出産が女性のすべてではなくて、
女性の数だけ、命の数だけ生き方があるのだと、
そう気づかせてくれるような作品。
Posted by ブクログ
子どもを産むか産めないかをテーマにした短編集。自分の意思で「産まない」人は出てこなかった。
子どもというより家族の話。目に見える以外にも家族にはいろいろある。
Posted by ブクログ
妊娠、出産…この問題にぶち当たらないで生きて行けるなら幸せだろうなーと思う。
読んでいて楽しいと言うよりは「わかる、わかるよ~」と共感したくなる部分がたくさんあって、さらりと読み易い。
一応核として描かれている桜子は最初こそ取っ付き難い女だったが、「シングルです」と言い切る生き方は恰好良い。自由で居るために孤独を引き受けつつ、それが絶対的な自由でないことを知っているのも。でもやっぱり、自分の子どもが何所かで生きているとなれば、男性としてはやはり気持ちの良いものではないと思う。ここらへんは男性の意見を聞きたいものだ。
重美は核の人として描かれるのに、彼女には救いがないような気がする。全体的に最後は幸せな家族が描かれているのに、彼女は「産めない」をどん底まで煮詰めてしまっていて、最終話は不要だった気がする。産めなかったけどそれで良いと前進していく姿だけで充分だった。
「産まない」女性が居ないのはその通り残念。もう1冊で描かれるのだろうか。