あらすじ
「英語をうまくしゃべれるようになりたい」は見果てぬ夢でしょうか。日本人の「英語苦手意識」の根幹には、外国人を前にすると緊張し、言葉を即座に発することができないことにあります。短い言葉で切り抜けようとしたり、思い出せるフレーズを連発するだけで、話が続かない、自分の意見を言わない等、落ち込んでしまいます。こうした状況を打破する最良のストラテジーを同時通訳者としての経験豊富な著者が丁寧に指導します。
...続きを読む感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
同著者による『国際共通語としての英語』(2014年),『本物の英語力』(2015) (いずれも講談社現代新書)に続く続編です。
英語を使うには単語やフレーズ,そして単語の適切な並べ方(いわゆる文法)を学ぶ必要がありますが,英語でやり取りする場合には日本語で行う場合と多少異なるコミュニケーション上の約束事があります。本書はそのようなコミュニケーション・ストラテジーを紹介したもので,特に鳥飼氏の前著『本物の英語力』(2015)と対を成すものと解釈できます。
鳥飼氏の言う「コミュニケーション・ストラテジー」とはどのようなものかというと,うなずきやあいづちに関する日本語と英語の差や,エレベーターの中やバス停でバスを待っている人どうしで行われるちょっとしたスモール・トーク(頻度が日本語での場合よりも多いという話)や,褒め言葉,意見の仕方,反論の仕方(英語は意外に丁寧である)等々がそれに当たります。英語でコミュニケーションを取る場合には,単に単語やフレーズの意味を覚えて使うだけでは不十分で,文化的バックグラウンドの異なる人と意志疎通をするという前提に基づいた,コミュニケーション・ストラテジーを理解することが大事だということです。
このような考え方のもとに本書は展開されているわけですが,鳥飼氏による講談社新書のシリーズで,本書が他書と異なる点は,使えるフレーズが多く載っているということです。『国際共通語としての英語』(2014年)や『本物の英語力』(2015) は,読んでも英語力そのものの足しにはなりませんが,本書は,こういう時にはこのようなフレーズを使ってこのように言えます,というアドバイスがちりばめられているので,この意味では本書は英語力の伸長にも多少寄与すると思います。
本書に語られていることでちょっと引っかかったのは,「国際共通語としての英語」を標榜しながらも,この本に書かれていることはイギリスやアメリカなどの英語圏のネイティブスピーカー(広く見積もっても欧州圏の人々)との英語でのコミュニケーションを前提にしたものであるということです。英語が国際共通語として機能することを前提にするのなら,アジア圏の人々など,我々と文化的背景の近い人々とのコミュニケーションも視野に入れてほしかったなと思います。
私がアメリカに留学していた時に感じたこととして,韓国人や中国人とは相対的にコミュニケーションが取りやすかった(もちろん英語で,です)ということがあります。しかしながら,はやり微妙にコミュニケーション・ストラテジーは異なるので,そのあたりのことも視野に入れて本書が書かれているともっと良かったなと感じます。