あらすじ
34歳のフリーター・彩はバツイチの54歳・伊藤さんと同棲している。ある日、彩のもとに兄から「お父さんを引き取ってくれないか」との依頼が。彩は申し出を拒むが、74歳の父は身の回りの荷物を持って、部屋にやってきてしまった。父は「この家に住む」と譲らない。その日から六畳と四畳半のボロアパートでぎこちない共同生活が始まった。誰にでも起こりうる家族問題を、笑いと緊張の絶妙なタッチで描く傑作。
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Posted by ブクログ
映像化されたキャスティングの表紙を見たので、読みながら頭の中で映像が浮かぶ感じでスラスラ読めた。彩のお父さんに対する思いが複雑だけれど共感できた。柿の木や田舎の家が燃えてしまう場面は切なくなった。親子のギスギスした関係に伊藤さんがいい具合に入ってくるのは微笑ましい。20歳差の娘の彼氏というと微妙な想いになるだろうけど人柄は申し分ないのではないか。ラストはお父さんが自分の将来に悲観するでもない決着をつけるけどなんだかやっぱり寂しい。
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父親とは不思議な存在だ。
何となく逆らってはいけないと感じる一方で、心のどこかではうっすら軽蔑している。
彩のように父が死んだら泣けないだろうと思う人は意外と多いと思う。
そういえば私も父の話を聞くのはいつも母親からで、本人の口から何を考えているのか聞いたことがいくらもないということに気づいた。
家族ではあるがよく知らない他人のようだ、そう思ってしまったことに少し申し訳ない気持ちになった。
それにしても伊藤さん、良い。
何にも考えてなさそうでいて実は広い視野で物事を見ることのできる余裕のある人。
重い話に突入すると苦しい気持ちになったけれど、この人の存在が本当に有り難かった。
Posted by ブクログ
映画版を観てからの原作小説。
ですが、雰囲気が大きく変わらないのに驚きます。
いい感じの映画化だったんだなぁと改めて思いました。
小説の方は、映像や演技からは読み取れない背景部分が
丁寧に描かれていて、クライマックスから終盤は涙を誘います。
カンマニワさんいいキャラクターですね。映画版でも見たかったなぁ。
Posted by ブクログ
ある意味ステレオタイプの登場人物達の造形ですが、それが見事に噛み合って面白い話になっています。
著者の中澤さんはもともと劇作家のようで、確かにビジュアル感のあり、映画化には向いているでしょうね。しかし、表紙にドンと出ているリリーフランキーさんがいかにもハマってる感じです。
Posted by ブクログ
34歳、独身で長らくアルバイトで過ごしていた彩は、アルバイトで知り合った20歳年上の伊藤さんと、アパートに同居している。そこへ突然、彩の父親が、小さなダンボール一箱を持って現れた。一緒に住むと言う。
頑固で気難しい、教員出身の父親、ふらふらとなんとかアルバイトで食いつなぐ娘に、同じくアルバイトで生計を立てながら、能天気に生きる伊藤さん。ドラマの配役としては申し分のないキャラクター付である。実際にドラマか映画になったのだろう。読んだ本は、表紙が俳優の写真だ。
長年犬猿の仲だった父と娘の間を、ひょうひょうとすり抜けていく伊藤さんが全般に渡って読者を助けていく。しかし登場人物はそれほど助けられないのが面白い。また、彩の仕事先のカンマニワさんは、そこまででもないにしろ、ストーリーの緩和に役立っている。
一方で、彩の兄、つまりは父の息子に当たる人物、その嫁、叔母さんによって、硬く難しい関係を表現しており、緊張感を維持している部分が、良いコントラストになっていると言える。
大きな事件は1つか2つ程度に抑えられ、難しいながらの日常が本作品の醍醐味である。
ところで、文章はかなりブロークンで、主語がなかったり、突然過去のエピソードが入ったり、事後のことが2行ほど挟まるなど、正直褒められたものではない。まあ、そのあたりは「リズム感が良い」「勢いがあってよい」と評されるものかもしれないが。しかし事件の途中で、突然事後の話になっていたりするのはちょっとどうかと思う。その辺をもう少し整理してあればよかっただろう。
とにかく、本作の一番良いところといえば、タイトルに他ならないわけで、買う際に本棚でつい二度見したもんね。タイトルで買わなきゃと思わせるものがあった。
で、問題は、表紙でリリー・フランキーを見てしまったことなんだよな。伊藤さんだろ。読んでいる最中にリリー・フランキー以外浮かばないんだもの。こういう表紙は考えものだわ…。
Posted by ブクログ
彩は34才のアルバイター。元バイト仲間で、今はパートで働く20才年上の恋人・伊藤さんと、気ままな同棲中。
そこに、頑固で気難しい父が、転がり込んできた。兄一家と同居していた父が突然やってきたのは、兄嫁とのトラブルらしいが…
父に対して、はっきりと愛情と呼べるものがない彩と、兄の潔。思いのほかうまく父との同居を受け入れていく伊藤さん。
彩と父、そして彩と伊藤さんの、心の距離感が、ゆっくりと変わってゆく。
読後感が良かった。
崩れすぎず、力の抜けた文体も心地よい。
大きな衝撃を受けるような作品ではないが、心に良いものをぱらっとふりかけてくれるような作品。
おとなになってから、人の領域に踏み込み過ぎない事で、心地よい関係を保つ事が多くなった。
それなのに、家族は、うっかりすると互いに土足で踏み込みまくりで、容赦がない。
あ〜あ、私もそうだなぁ。孝行&きょうだい仲良くしとかないと。
伊藤さんのキャラがいい。
『〇〇は逃げない』という口癖、これから採用しよう。逃げやしないものを、慌てて追いかけてしまう事で、自分で忙しなく苦しくしてる事、多いかもしれない。