【感想・ネタバレ】今昔物語集 本朝世俗篇 (上) 全現代語訳のレビュー

あらすじ

我が国最大の説話集であり、内容の多様さも文学的興趣も群を抜く「今昔物語集」。古来我が国で「世界」を意味した三国、天竺・震旦・本朝(インド・中国・日本)の一千を超える説話を収めた三十一巻(うち三巻を欠き、現存は二十八巻)のうち、本朝の世俗説話を収めた巻二十二~三十一。その平易で読みやすい全現代語訳をコンパクトに刊行。語注も充実。巻二十二~巻二十四。

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今昔物語集 本朝世俗篇 (上) 全現代語訳
訳:武石 彰夫
出版社:講談社
講談社学術文庫 2327

本朝世俗編は、たのしい。線香臭くないのがいい。この巻を読むために他の3冊を購入したといってもいい。

第二十二巻 藤原歴代史
第二十三巻 力自慢、怪力娘の話
第二十四巻 安倍晴明など、陰陽師、式神。和歌の話がたくさんのっている、ちょっとうれしい
第二十五巻 平将門から、後三年の役(寛治元年:1087年)まで、これにより、今昔物語は1120年以降の成立と推定されている
第二十六巻 盗賊などの話

寄進などの争奪戦で、お寺は、霊験あらたかな話が当時量産されたとあり、案外、本書は、宣伝のためにつかわれたかも、陰陽師の話で、本文がないのも、仏教の布教におもわしくないからかもしれない。欠とは、あきらかに、成立後に消去された可能性は高い。なんともったいないことだ。

解説、参考付図・系図がついているが、けっこう役に立つ

〇解説

曼荼羅がついている(胎蔵界である、金剛界はどこいったのでしょうか?)⇒
金剛界が「仏の智慧(ちえ)」を象徴し、胎蔵界が「仏の慈悲(じひ)」を象徴しているとのことです。説話には、智慧ではなく、慈悲のほうなのかもしれません。

〇略図

平安京は、三重構造になっている。
内裏略図、大内裏略図、平安京図、京都近郊図 と段々範囲がひろがっていく。その中核にあるのが、内裏である。無数の院、殿、神社、門の名前や、通り(大路という)

〇官位相当表

正一位から、少初位下まで、30階級
官、省、職・坊、寮、司、監署、台、衛府、按察使、検非違使、勘解由使、後宮

〇系図

皇室
源氏 清和56、村上62、嵯峨52、淳和53、宇多59 (番号は、代をあらわす)
平氏 桓武50、仁明54、文徳55、光孝58
藤原氏 南家、北家、式家 藤原の本流は、北家で、道長へ続いていく
皇室と藤原氏との関係系図

<天竺編:原本まえがき>

冒頭にある原本まえがきにある、マップは以下のとおりです
講談社学術文庫では、本朝仏教説話に関する出版はありません

第1巻 天竺 仏教史、仏像霊験説話
第2巻 天竺 霊験説話
第3巻 天竺 霊験説話
第4巻 天竺 因果応報話
第5巻 天竺 因果応報話* ~ここまで講談社学術文庫天竺編(印度編)

第6巻 震旦 仏教史、仏像霊験説話
第7巻 震旦 霊験説話
第8巻 欠 推定 菩薩諸天霊験説話
第9巻 震旦 因果応報話
第10巻 震旦 世俗説話* ~ここまで講談社学術文庫震旦編(中国編)

第11巻 本朝仏教説話 仏教史
第12巻 本朝仏教説話 仏教史、三宝霊験説話、仏像霊験説話
第13巻 本朝仏教説話 仏像霊験説話
第14巻 本朝仏教説話 霊験説話
第15巻 本朝仏教説話 霊験説話
第16巻 本朝仏教説話 観音霊験説話
第17巻 本朝仏教説話 地蔵その他霊験説話
第18巻 欠
第19巻 本朝仏教説話 因果応報話
第20巻 本朝仏教説話 因果応報話
第21巻 欠 推定 皇室関係説話 ~第11巻から第21巻は、講談社学術文庫未出版

第22巻 本朝世俗説話 藤原氏逸話
第23巻 本朝世俗説話 僧俗、剛力話、
第24巻 本朝世俗説話 工芸、医術、陰陽、管弦、詩歌
第25巻 本朝世俗説話 源平武人
第26巻 本朝世俗説話 地方民衆の運命談 ~ここまで講談社学術文庫本朝世俗編(上)

第27巻 本朝世俗説話 霊鬼、狐、野猪の怪異談*
第28巻 本朝世俗説話 滑稽諧謔談
第29巻 本朝世俗説話 盗賊談
第30巻 本朝世俗説話 恋愛、和歌伝説
第31巻 本朝世俗説話 雑記、口碑伝* ~ここまで講談社学術文庫本朝世俗編(下)

いわゆる奇譚は、第5、10、27、31巻にあります。

目次

凡例

巻二十二 本朝

大織冠、始めて藤原の姓を賜はる語 第一
淡海公を継ぐ四つの家の語 第二
房前の大臣、北家を始むる語 第三
内麿の大臣、悪しき馬に乗る語 第四
閑院の冬嗣の右大臣并に子息の語 第五
堀河の大政大臣基経の語 第六
高藤の内大臣の語 第七
時平の大臣、国経の大納言の妻を取る語 第八

巻二十三 本朝

平維衡同じき致頼、合戦をして咎を蒙る語 第一
左衛門尉平致経、明尊僧正を導く語 第二
陸奥の前司橘則光、人を切り殺す語 第三
駿河の前司橘季通、構へて逃ぐる語 第四
尾張の国の女、美濃狐を伏する語 第五
尾張の国の女、細畳を取り返す語 第六
比叡の山の実因僧都の強力の語 第七
広沢の寛朝僧正の強力の語 第八
大学の衆、相撲人成村を試むる語 第九
相撲人海恒世、蛇に会ひて力を試むる語 第十
相撲人私市宗平、鰐を投げ上ぐる語 第十一
相撲人大井光遠が妹の強力の語 第十二
相撲人成村、常世と勝負する語 第十三
兼時敦行競馬の勝負の語 第十四

巻二十四 本朝 付世俗

北辺の大臣、長谷雄の中納言の語 第一
高陽親王、人形を造りて田の中に立つる語 第二
小野宮の大饗に九条の大臣、打衣を得る語 第三
爪の上に於て勁刷を返す男と針を返す女の語 第四
百済川成と飛弾の工と挑む語 第五
碁擲の寛蓮、碁擲の女に値ふ語 第六
典薬の寮に行きて病を治する女の語 第七
女、医師の家に行きて瘡を治して逃ぐる語 第八
蛇に嫁ぐ女を医師治する語 第九
震旦の僧長秀、此の朝に来て医師に仕はるる語 第十
忠明、竜に値ふ者を治する語 第十一
雅忠、人の家を見て瘡の病有を指す語 第十二
慈岳川人、地の神に追はるる語 第十三
天文博士弓削是雄、夢を占ふ語 第十四
賀茂忠行、道を子の保憲に伝ふる語 第十五
安倍晴明、忠行に随ひて道を習ふ語 第十六
保憲晴明と共に覆ふ物を占ふ語 第十七
陰陽の術を以て人を殺す語 第十八
幡磨の国の陰陽師智徳法師の語 第十九
人の妻悪霊と成り其の害を除く陰陽師の語 第二十
僧登照、朱雀門の倒るるを相ずる語 第二十一
俊平入道の弟、算の術を習ふ語 第二十二
源博雅の朝臣、会坂の盲の許に行く語 第二十三
玄象といふ琵琶、鬼の為に取らるる語 第二十四
三善清行の宰相と、紀長谷雄と口論の語 第二十五
村上天皇と、菅原文時と詩を作り給ふ語 第二十六
大江朝綱の家の尼、詩の読みを直す語 第二十七
天神、御製の詩の読みを人の夢に示し給ふ語 第二十八
藤原資業の作る詩を義忠難ずる語 第二十九
藤原為時、詩を作りて越前守に任ぜらるる語 第三十
延喜の御屏風に伊勢の御息所、和歌を読む語 第三十一
敦忠の中納言、南殿の桜を和歌に読む語 第三十二
公任の大納言、屏風和歌を読む語 第三十三
公任の大納言、白川の家に於て和歌を読む語 第三十四
在原業平の中将、東の方に行きて和歌を読む語 第三十五
業平、右近の馬場に於て女を見て和歌を読む語 第三十六
藤原実方の朝臣、陸奥の国に於て和歌を読む語 第三十七
藤原道信の朝臣、父に送れて和歌を読む語 第三十八
藤原義孝の朝臣、死にて後和歌を読む語 第三十九
円融院の御葬送の夜、朝光の卿和歌を読む語 第四十
一条院の失せ給ひて後、上東門院和歌を読む語 第四十一
朱雀院の女御失せ給ひて後、女房和歌を読む語 第四十二
土佐守紀貫之、子死にて和歌を読む語 第四十三
安陪仲麿、唐に於て和歌を読む語 第四十四
小野篁、隠岐の国に流さるる時和歌を読む語 第四十五
河原院に於て歌読共来たりて和歌を読む語 第四十六
伊勢の御息所、幼き時和歌を読む語 第四十七
参河守大江定基、送り来たりて和歌を読む語 第四十八
七月十五日盆を立つる女、和歌を読む語 第四十九
筑前守源道済の侍の妻、最後に和歌を読みて死ぬる語 第五十
大江匡衡の妻赤染、和歌を読む語 第五十一
大江匡衡、和琴を和歌に読む語 第五十二
祭主大中臣輔親、郭公を和歌に読む語 第五十三
陽成院の御子元良親王、和歌を読む度 第五十四
大隅の国の郡司、和歌を読む語 第五十五
播磨の国の郡司の家の女、和歌を読む語 第五十六
藤原惟規、和歌を読みて免さるる語 第五十七

巻二十五 本朝 付世俗

平将門、謀反を発し誅せらるる語 第一
藤原純友、海賊に依りて誅せらるる語 第二
源充と平良文と合戦する語 第三
平維茂が郎等、殺さるる語 第四
平維茂、藤原諸任を罰つ語 第五
春宮の大進源頼光の朝臣、狐を射る語 第六
藤原保昌の朝臣、盗人の袴垂に値ふ語 第七
源頼親の朝臣、清原__を罰た令むる語 第八
源頼信の朝臣、平忠恒を責むる語 第九
頼信の言に依りて平貞道、人の頭を切る語 第十
藤原親孝、盗人の為に質に捕へられ頼信の言に依りて免す語 第十一
源頼信の朝臣の男頼義、馬盗人を射殺す語 第十二
源頼義の朝臣、安陪貞任等を罰つ語 第十三
源義家の朝臣、清原武衡等を罰つ語 第十四

巻二十六 本朝 付宿報

但馬の国にして鷲、若子を爴(つか)み取る語 第一
東の方に行く者、蕪を娶ぎて子を生む語 第二
美濃の国の因幡河、水出でて人を流す語 第三
藤原明衡の朝臣、若き時女の許に行く語 第四
陸奥の国の府官大夫の介の子の語 第五
継母、悪霊託きたる人の家に継娘を将て行く語 第六
美作の国の神、猟師の謀に依りて生贄を止むる語 第七
飛弾の国の猿神、生贄を止むる語 第八
加賀の国の蛇と蜈と諍ふ島に行きたる人、蛇を助けて島に住む語 第九
土佐の国の妹兄、知らぬ島に行きて住む語 第十
参河の国に、犬頭の糸を始むる語 第十一
能登の国の鳳至の孫、帯を得る語 第十二
兵衛佐上緌の主、西の八条にして銀を見て得る語 第十三
陸奥守に付きたる人、金を見付けて富を得る語 第十四
能登の国の鉄を堀る者、佐渡の国に行きて金を堀る語 第十五
鎮西の貞重の従者、淀にして玉を買ひ得る語 第十六
利仁の将軍若き時、京より敦賀に五位を将て行く語 第十七
観硯聖人、在俗の時盗人に値ふ語 第十八
東に下る者、人の家に宿りて産に値ふ語 第十九
東の小女、狗と咋ひ合ひて互ひに死ぬる語 第二十
修行者、人の家に行き女主を祓へして死ぬる語 第二十一
名僧、人の家に立ち寄りて殺さるる語 第二十二
鎮西の人、双六を打ち敵を殺さむとして、下女等に打ち殺さるる語 第二十三
山城の国の人、兄を射るに、其の箭当らず命を存ふる語 第二十四

解説
参考付図・系図

ISBN:9784062923729
出版社:講談社
判型:文庫
ページ数:592ページ
定価:1880円(本体)
発行年月日:2016年06月
発売日:2016年06月11日

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2026年06月17日

Posted by ブクログ

ネタバレ

他の本に追い越されながら2年ほどかけてゆっくり読んだ作品。
「今昔物語」の内容には文句はないのだが、解説がめちゃくちゃ過ぎて自分が編集なら(解説部分のみ)原稿を破り捨てそうだと思った。古典は、解説で素人の知識を補完してこそ物語をより楽しめると思っているので、そこが欠けている本書の評価は3点になった。

今昔物語は天竺、震旦、本朝の仏教説話、世俗説話をまとめた説話集で、本書は特に本朝(= 日本)の世俗説話(の前半部分)を現代語訳した作品である。
説話は一話完結で、まれに同じ主人公であることがあるが、前話とのつながりはないようにできている。ほとんどの話が2〜3ページ程度の短編なので、短い時間で読みやすい。
中身も、強い相撲取りの世代交代であったり、貴族の恋愛話や怪異譚、武士の日常や合戦、僧の逸話など当時の人々の生活が分かるような”世俗”のものばかりで面白い。

良くなかったのは解説の部分で、最初の出だしから意味が分からない文章が続く。
その後すぐに解説する内容の雲行きが怪しくなり、一部の僧のやたら詳しい経歴や当時の仏教、密教の話など、内部の登場人物とも今昔物語とも関係ない仏教関連の内容が冗長に続き、そのオチ(本作との関連など)が示されないまま今昔物語の概説が唐突な形で入ってくる。
ただ、概略と言っても非常にいい加減な物で、歴史学的な説明も文学的な位置づけもなく、また性懲りも無く仏教系の羅列が出てくる。論理性もないので著者はバカなのかと思ってしまう内容だ。
度々引き合いに出される梁塵秘抄や徒然草については本書との位置づけ、関連性がほとんど語られることが無く、解説とはなんなのか?を考えさせられる。
数ページの意味の無い今昔物語の概説らしき物を経ると再び仏教っぽい内容がちょろちょろ顔を出すつながりの薄い文章が続く。途中、武士の話などが挟まれ、著者的には今昔の内容を順を追っているような気で書いているのだろうが、全く伝わらなかった。

余りに支離滅裂な(というと言い過ぎだが)解説であったので、本文の現代語訳が心配になり調べると、本書の解説は別の本を丸パクりのようで一安心した。それならば本文と合わない解説も得心がいく(納得はしたがヒドいことに変わりはない)。
著者は法政大出身の国文学者で仏教歌謡が専門とのことで仏教関連の解説が場違いに厚いのも著者の専門分野だからだろう。

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2024年03月04日

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