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Posted by ブクログ
女児と男子大学生の誘拐・監禁譚という、なんとも時事に即したイマドキな話題だが、「女子小学生に男子大学生が誘拐・監禁される」という点で少し特殊であり、気を惹く大きな点だった。まあそんな話、普通ではないし、そのプロット自体に無理があるので、その無理をどう納得させてくれるのだろうかという期待を込めて読んだ。結論から言うとそれは大きな期待はずれだったし、結局かなり強引に物語が進行していて、その筋立てそのものに対しては楽単の度合いがかなり大きかったけれど、小説としてはそこそこ楽しめた。
この話は現在作家である主人公が、学生時代に遭遇した事件について回想して語るというもので、そのうえその「作家」というのは序盤で明言こそしないものの、おそらく「西尾維新」本人らしい語られ方をする。月産原稿用紙1000枚だとか。いかにもノンフィクションであるかのように書かれるが、まあどう考えても実話であるはずもないし、つまりそこらへんの諸々がおおむね《嘘》なのである。
そしてまた作中において自己言及的に「小説の必要条件は嘘をつくことではなく、物語をつくることである」などといった旨の記述があり、つまりこの小説は序盤においては「小説」ではなく単なる「嘘」にすぎない。しかし月産原稿用紙1000枚だとかいうのはおそらく西尾維新にとっての事実だろうし、そういった「事実」と「嘘」を故意に曖昧にして書いてあることも分かる。ところが、話が結末に向かうにつれてどんどん話の「物語らしさ」が強くなっていく。ドラマチックになっていく。いつの間にか「嘘」が「物語」になり、「小説」になっていく。そういう構造をもった小説なのである。
だから結末、あの都合のよすぎる結末も"そういうものとして"書かれている。実話らしからぬ、物語らしい物語、あまりに陳腐すぎて笑ってしまうほどの「物語」としてのエピローグこそがこの構造のキモなのだろう。
そうそう、それからこの話は「女子小学生に男子大学生が誘拐・監禁される」というプロットと同時に「男子大学生が小説家として必要な、(嘘をつくのではなく)物語をつくることができるようになる」というプロットも抱えており、それがいい感じにうまくハマったクライマックスはわりと好きだった。
それもまた「いかにも」すぎて、「物語らしさ」を補強する要因の一つだったのだけど。
……という好意的な解釈をしたけど、もっと文章上手に書いてくれー。
推敲してるのかコレ? とか勘ぐってしまった。
Posted by ブクログ
西尾維新さんで2作目に読んだ本。文章がやはり慣れなくて読みにくかったけど、内容は面白かった。大学生が小学4年生の少女に監禁されるというとても非日常的な話。少女の読めない行動にはちゃんと原因があったことに安心した。
Posted by ブクログ
誰にでもあるような些細な反骨心を「変人を演じている」と考えているあたりが、他人と心の内を語り合ったことが無い人間らしくて良かった。(良いというのは効果的という意味で自分にとっては苦手だった)
主人公は太宰の人間失格のように自分の考えについて逆説を持ち出し「自分は偏屈なだけで他人に理解がない訳では無い」と言い訳するような語り口だったが、生命活動をする事にだけは貪欲であり素直であった。それは10年前の出来事で人間が死ぬという事はどういう事なのかを意識せざるを得なかったからだろう。
過去の彼はよく交通事故で人が死ぬ現場を目撃していた。それは人が死ぬという現象を観測しただけであって本当に人の死について触れていた訳では無い。だからこそUの家に入った時の違和感に気づかないふりを無意識にしていたのだろう。
しかし、10年前の事件を通して死ぬということは当事者だけの問題ではない事を知る。彼にとって物語を書く事が周りに与える「生」の影響であり、個人的な理由で作家として死んでしまう事はUが両親にされた事と同じだと思っているのだと思う。
また、彼が物語で伝えたい「道を外れてしまった人間でも幸せに生きていける」というテーマは何の根拠もない事であり、自分自身が道を外れた人間として作家を続ける事でその根拠になろうとしているのだと感じた。
U(とは書かれてないが、柿本の昔からの読者)が担当編集になるラストは、あの事件から物語を書くことで生きてきた彼が報われた瞬間であり、彼自身が何故生きるのかを綴った結末として非常に良かったと思う。
確かにあのままUが一人で生活していても警察は家に来ただろうし何らかの出会いで不自由帳から解放される事はあったかもしれない。しかし、彼女がずっと読者であった事は少なからず主人公の「生」によって与えられた影響である。
Posted by ブクログ
昔、ゲームバランスが崩壊しているボードゲームをやったことがあった。プレイヤー同士が空気を読んで、なんとかゲームを成り立たせようとして、奇妙な馴れ合いの元、ゲームは進んでいった。最終的にゲームは終了したものの、クソゲーの烙印を押して、すぐ売り払った。
その時のことを思い出した。
読み方を間違えているのかもしれない。信頼できない語部として、主人公を据えるなら、小学生に監禁される異常な展開に小説家としての経験ができる‥というのを裏で考えていたとか。
終章付近で述べている通り、色々お粗末な点を作中でも指摘されている誘拐ごっこの延長に近い状態なんだけれども、状況の推進力が弱過ぎィ!
主人公の状況への協力姿勢が何処からくるものかをもっと納得できる理由が欲しかった。
色々述べているけど、ちょっと弱いような〜。
あと、小説家の一人語りの形式を取ってて、状況の進みが遅過ぎるってのは、会話劇がないとやっぱり目立ってしまうのかもしれない‥
物語を語る理由としては、オチとしては落ちてて面白かったのでそこは良かった。