あらすじ
世界から軍隊が消えた時代。しかし戦争は諜報戦への姿を変えていた。家族を惨殺され一人生き残った海棠鋭利、兄と生き別れた御津見珀は、戸籍を剥奪されたスパイ集団、警備局特別公安五係、通称「サクラ」にスカウトされる。桜のように潔く散る、それが彼等の流儀。舞台・映画化の人気シリーズ原作。書き下ろし短編小説「哲学者より愛を込めて」収録!
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Posted by ブクログ
近未来の日本を舞台にしたスパイもの。
「世界の改心(ワールドリフォーミング)」という、国々が軍縮を行い"平和"な世界を作ろうとしている世界で暗躍するスパイたち。日本も例外ではなく、公安五係として極秘裏にスパイが存在している。
日本のスパイは国籍・戸籍等がなく「サクラ」と呼ばれており、その候補生である海棠鋭利(主人公)とその相棒・御津見珀が、物語の主人公。
この本は角川文庫から出版されていたものの二次文庫になるため、本編の内容は、角川文庫のときとほぼ変わらない。
だけど、角川版を読み込んでいた身としては、あ、ここ削ったんだ、とか、ここの言い回し少し変わってる。というのが楽しめた。
ストーリーの緻密さ、登場人物たちの個性、感情の動き…とにかく全てが素晴らしい!
主人公二人がなぜ戸籍(書類上の生)を捨て「サクラ」になったのかということも丁寧に描写されていて、感情移入して読んでしまった。
ストーリーもキャラのバックボーンも緻密だけど、読み手が彼らの感情を汲み取って、考えて読み進められるだけのスペースは与えられているのが高殿マジックのような気がする。
角川文庫版との決定的な違いは、2つの書き下ろしである。
1つは初版限定で折りこまれている「サクラノモリ」、もう1つは本編の後に収録されている「哲学者より愛をこめて」。
サクラノモリは、御津見珀と、同期のサクラ五条颯真がメインで、哲学者より愛をこめてはサクラの上司一嶋晴海がメインの話。
作者のキャラへの愛が存分に伝わってきて、読んでいて自然と涙がこぼれた。
この2つの書き下ろしは、続編があるんじゃ…?と期待が膨らんだ内容。
解説は、舞台版の演出家が書いていて、メディアミックス先のメサイアも好きな身としてはとても嬉しい。
表紙から解説まで、全てが「メサイア」という作品への愛に溢れた1冊。
スパイ・相棒もの・少年・青年が好きな人にはぜひ読んでみていただきたい!