あらすじ
2015年夏に就任した森信親・金融庁長官の真意を知ろうと、いま金融機関のMOF担はじめ多くの銀行関係者は右往左往している。もともと不良債権処理のために整備された金融庁による金融検査の手法が一変しようとしているのだ。森長官に密着する金融庁担当記者がそのすべてを明らかにする。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
先日紹介した「花咲舞が黙ってない(池井戸潤)」からのこの一冊。
金融庁長官が推し進めている金融改革について新聞記者の綿密な取材によって書き起こされたもの。もともとは金融専門ではない貴社だからこそ、金融に明るくない一般人にもわかりやすく書かれている。
主題は「地方金融」の在り方。(簡単に言うと「地銀」の現状が良いことも悪いことも含めて書かれている。)地元に根差した本質的な「融資」をしている地銀があることはこれからの日本においては重要な気がする。
と、この読書の流れから、どうしてもドラマ「半沢直樹」が観たくなってしまい週末にかけて一気見してしまった。なんとも「スカッ」とする一方で、毎回「自分はちゃんと攻められているか?」という問いを投げかけられて、自分を見直すのにも活用している。笑
ここまで見てしまうと、どうしてもそのまま続きが観たくなるのだが、残念ながら続編はまだ放映されなさそう。。。仕方ないので、ちょうど文庫本化もされたので「ロスジェネの逆襲」と「銀翼のイカロス」を流れで一気読みしてしまった週末だったのである。
学生の頃は「絶対に金融だけの仕事はしない」と思っていたのに、知れば知るほど面白いのかも?と感じてしまうから不思議なものだ。そう考えると、就職活動という限られた時間で自分のやりたいことを見つけるってきっと難しいのだろうな。
Posted by ブクログ
本書は主に地銀について書かれた書籍です。したがって全国の地銀・第二地銀・信用金庫・信用組合にお勤めの方、及び関係者にはぜひ読んで欲しい名著です。
余りにも本書の評価が良かったのか「捨てられる銀行2」という書籍も出版されています。私も元第二地銀マン。前職のことは気になっているので、「捨てられる銀行2」も読破したいと本著を読んだ後思いました。
では、早速本著の一部を紹介します。
2015年7月7日、早くから金融庁のエースとして待望されてきた森信親が長官の座に就いた。
その森が行った画期的な行為は金融行政の究極の目標の設定だった。これまでは、自己資本比率や不良債権比率で計る「銀行の健全性」に比重を置いていたが、今回は「企業と経済の成長と資産形成」を最大の目標として明確に打ち出した点だ。
どの官庁も同じだが、金融庁も設置法に基づいて設立された行政機関だ。任務を示す第1章第3条にこうある。
「金融庁は、わが国の金融の機能の安定を確保し、預金者、保険契約者、有価証券の投資者その他これらに準ずる者の保護を図るとともに、金融の円滑を図ることを任務とする」
つまり、銀行などの金融機関が連鎖的につぶれないように目配りし、預金者など利用者を守り、企業や個人に必要としているお金を円滑に貸し出すよう監督する官庁だ。
しかし森は2015年7月30日の就任後の初めての全国財務局長会議でこう述べた。
「日本の中小企業の生産性は、アメリカに比べて極めて低い。中小企業の新陳代謝も重要で、企業・産業の生産性向上を図るべきだ」
森の話は次第に熱を帯び、やがて革新に切り込んだ。
「にもかかわらず、いまだに地方銀行は担保・保証に依存しているといった声が政治家や企業から聞かれる。本当にそうなのか。なぜなのか。中小企業1000社のヒアリングで実態を把握したい」
当然ながら旧態依然とした、全国各地の財務局長からはこう疑問が上がった。
「実施するには相当の労力が必要であり、なかなか厳しいのではないか」
しかし、森は怒気を含みこう言った。
「これまでも財務局長会議の発表をずっと聞いてきたが、君たちの報告は、部下が作った資料を読み上げるだけで何も面白くない。君たち財務局長は、地方創生における各地のリーダーとして、地域金融機関をどう導いていくのか真剣に考えるべきだろう!地方創生の処方箋を創るのが仕事なんだ!その処方箋を持ってこい!」
なぜここまで森が怒ったのか、伏線がある。
森は前任時、全国財務局長に対し、地銀から創意工夫あるサービス開始の相談が上がってきた場合、情報を本庁まで上げるよう異例の要請をしていた。
それにも関わらず、ある地銀が預金者のお墓掃除サービスの開始を試みて財務局に相談していたが、地元財務局が「鼻で笑って門前払い」し、本庁に報告せず握りつぶしていたことなどを森が知ったからだ。こうした財務局の旧態依然とした態度に、森は危機意識を強めていたのだ。
森はこのような仮説を立てていた。
金融庁が検査・監督業務で地銀に話を聞くだけでは、企業が地銀をどう見ているか、取引において企業は何を望んでいるか、銀行が企業の経営課題に寄り添い、解決に向けて汗をかいて成長や再生を促しているのか、真相に迫ることはできない。
2015年10月から開始し、同12月までに取りまとめた第1弾ヒアリングの318社の集計結果によれば、やはり、地銀などが担保や保証をあてにした取引に依存し、顧客から遠い存在になっていることが浮かびあがった。
多くの地銀は「低金利での貸し出しこそ、企業や事業者が最も求めているものだ」と思いこんでいるが、企業側は「金利以上に事業内容を見てもらい、経営課題の解決と成長に向けて一緒に歩んで欲しい」と期待していたのだ。
2015年12月に実施した約400社を対象にした第2弾のヒアリングでは、地銀からの借り入れの実態にまで踏み込んだ。地銀は短期融資で対応すべきものも、担保や保証をつける長期融資(証書貸付)で対応している比率が38%と最多だったことが分かった。つまり、事業の本質を見て貸してるのではなく、担保と保証しか見ていない地銀取引の実態が浮かび上がった。
そんな森長官の今回の行政方針に初めて盛り込まれ、地銀会を騒然とさせたのが。これまでにない新たな価値観、つまり地銀が地方創生にどう貢献しているかを評価するベンチマーク(指標)の導入だ。
当該行政方針で例示されたのは、「地域における取引企業数の推移」や「支店の業績評価」だ。
「取引企業数」を重視するのは、横浜銀行で大規模な不良債権処理に取り組み、その後破綻直後の足利銀行頭取等を歴任し、現在はゆうちょ銀行社長の池田憲人の持論だ。彼は森の信任も厚く、森金融行政の柱の一つである有識者会議のメンバーにも起用されている。
池田は国有後の足利銀行で不良債権処理に取り掛かる一方、「靴底減らし運動」を提唱して、徹底的に顧客訪問に取り組ませ、その後の復活になる顧客基盤を固めてきた。
池田の考えはこうだ。
普通、売り上げは、数量と単価を掛け合わせて決まるが、銀行の場合は、売り上げを伸ばそうとして単価を無理にあげれば、リスクを増やすことにつながる。
リスクをコントロールしながら売り上げを伸ばすには、単価でなく、むしろ数量この場合取引企業数を増やすのがベストだというロジックだ。
もう一つの「支店の業績評価」は営業ノルマを撤廃し、顧客の課題解決に取り組んだ行動を評価する北國銀行の取り組みを森が高く評価した経緯が背景にある。
このようなベンチマーク導入が行政法人で公表されると、地銀からは早速、不安や懸念が噴出した。
それは「顧客の数を無理に増やそうとすると金利競争を助長するのではないか」「現状の顧客の満足度向上を優先すべきだ」といった具合だ。
このため金融庁は、「ベンチマークさえ守れば、あとは地域の問題など、どうでもいい」とやり過ごそうとする地銀の悪しきマニュアル慣習を許さない秘策を練った。それはあえてベンチマークを大量に用意し、すべてのベンチマークをクリアすることを難しくしたことだ。
金融庁のご機嫌取りではなく、顧客本位の営業と地方創生を本気で取り組まねば、及第点を達成できないような制度設計としたのだ。
さらにベンチマークそのものの達成ではなく、地域に欠かせない企業に対してどのように向き合っているのか、その取り組みや実績を見ていくという3つの重要業績評価指標(=Key Performance Indicator)を設定した。以下の3つだ。
①金融機関が主力とする企業の経営改善や成長力の強化
②持続可能性に懸念がある企業の抜本的事業再生や早期転廃業等円滑な新陳代謝の促進
③担保・保証依存の融資姿勢からの転換
ベンチマークは、この3つのKPIを達成するためのいわゆる「大工道具」としての位置づけとなる。したがって、ベンチマークをいかに達成しようともKPIが達成できなければ地域金融の責任は果たしていないということだ。或いは、ベンチマークを達成できなくても3つのKPIが達成できていれば良いという定義だ。
森が地域金融行政において、もっとも力を入れたのが「金融仲介の改善に向けた検討会議」の設置だ。これは前期のような議論や以下のような森の考えを反映したものだ。
「地域金融行政で有識者の意見が継続的に入る仕組みを作りたい。外の有識者の意見が入る。アドバイザリーボード的な存在だ。地域金融行政はこういうところが欠けているのではないかとか、これにスポットライトを当てるべきではないか、という知見があるはず。期限を区切らず継続的にやりながら情報発信していく。どういう議論をしてのか、情報発信の場。議事要旨とか、議論内容を公開する」
ここで森の考えと近似した、広島銀行の事例を紹介してこのブログを終了する。
一部の地銀では森が事業性評価を研究するもっと以前から、事業性を見なければいけないという問題意識を強めていた。その先駆けが広島銀行だ。
広島では自動車メーカーのマツダが工場を構え、部品を供給するサプライヤーが地元に多数存在する。1台の自動車をつくるには2万~3万の部品が欠かせないといわれる。こうした部品を供給するサプライヤー無くして、マツダは決して成立しえない。
不良債権処理に追い立てられた当時の広島銀行は、財務面でこれらのサプライヤーを評価し、融資の審査を実行していた。しかし、それでは取引を打ち切らなければならないサプライヤーが生じてしまう事態が発生したのだ。
広島銀行としては、財務内容を見極めて「正しい」判断をしているつもりが、広島の基幹産業であるマツダを苦しめることになるのかという本末転倒の自己矛盾に陥っていていたのだ。
そのため、広島銀行ではサプライヤーを単に財務面で評価するのではなく、「マツダにとって欠かせない技術かどうか、そうではないのか」といった定性情報も含めて融資を実行することが必要になった。
そうした現実も踏まえ、1999年、広島銀行は融資部の中に自動車の専門家を集めた。マツダからの転籍者が、サプライヤーの工場を視察し、技術面を評価していくことになった。これに銀行の税務分析を併せて「技術」と「財務」の両面の優劣で判断することで、どこに改善点があるか把握することが、明確に浮かび上がってきた。
広島銀行はこの事業性評価をさらに磨いていく必要性を感じていた。経済産業省が提唱していた「知的資産経営」に基づき、2008年ごろから事業性評価の本格的な研究が進められ、11年には当時、広島銀行融資企画部長だった日下智晴が法人の投資銀行部門とチームをつくり、コンサルティングの知的資産マネジメント支援機構と財務面以外の顧客やブランド力、経営、従業員などの「無形資産」をどのように分析するのかを体系化し、一定の成果にたどり着いた。
こうした分析は、財務情報で判断する「定量分析」に対し「定性分析」と位置付けていた。
これは財務情報では読み取れない企業の力を見極めることができるという斬新的なもので、25項目を1~4点の100点満点で評価し、チャートで強み、弱みを「見える化」できるといったものだった。
このように今回の金融庁の変革を待たずに独自の解釈で顧客本位の経営に踏み出している金融機関もあり、事業性評価はより広義に解釈されるべきであることも分かった来た。
しかし、事業性評価に関して、どのように取り組むかを示したチェックリストを出すことには森は断固反対だ。なぜならチェックリストさえ守れば、あとは何もせずとも構わないというかつてのマニュアル編重主義や免罪符のように誤った解釈に走り、機能不全に陥った金融行政の轍は二度と踏まないという反省と問題意識があるからだ。
森金融庁の合法以来、地銀の間では、事業性評価のチェックシートをつくったり、対策室を設置する動きも広がり始めた。しかしそれでは失敗に陥る。
そうではなく、金融機関の思考と行動を顧客本位に変えることが真の目的だ。事業性評価は、その登山道の極めて重要であるが、最初の入り口に過ぎない。
以上のブログは、本書の第1章の何分の1かである。これを見て「面白そう~」と思った地銀マン・金融機関マンはぜひ本書を読んで欲しい。最終章には地銀・信用金庫の具体事例もふんだんに載ってあります。
Posted by ブクログ
共同通信の担当記者による、金融庁長官の金融機関改革についての本。主に地銀に対して、不良債権問題からリスクをとらなくなった経営を、きちんと顧客の事業性を評価しコンサルティングをして融資していくように改善していくということで、実際に稚内信金、北國銀行、きらやか銀行、北都銀行等の成果を上げた地域金融のケーススタディも紹介されていて大変興味深く読んだ。
銀行業界はまったくの門外漢なので、詳しい方が読めばいろいろと反論やツッコミどころもあるのかもしれないが、素人の私としては、この改革が目指す地銀の在り方というのはまさしく本来あるべき姿だと思うし、そのような本来の使命を捨てさせることになった「失われた20年」の深刻さを改めて痛感もした。メガバンクについても、今後続編が出たら読もうと思う。
Posted by ブクログ
自分の評価を高めるため営業ノルマで数字に追われる一方で、不良債権を発生させれば引当金が積まれ…。目先の利益を追う現場だが、本当の使命は何なのか考えさせられる本だった。
続編も読みたい。
Posted by ブクログ
あまりにも森さん礼賛に終始し立体感が無いのと、著者自身の知見が弱いので、知的アウトプットとしてのクオリティにはケチが付く。しかし単純にテーマの面白さと取材力の高さで押し切られた。
地銀の体たらくはチェックリスト思考の恐ろしさを象徴している。人の考えが介在する余地を無くすチェックリストは「守り」には強いので(不良債権問題からの脱出とか、違う例で言えば医療ミスの防止とか)、一概に否定すべきものではない。しかしどんな業界でも、「本質を考えなくてもいい仕事」をし始めると何かがおかしくなっていく。
Posted by ブクログ
2015年7月から3年間、金融庁長官を務めた森信親氏の政策運営を中心に、金融行政の変化や、変化に対応している地銀、していない地銀の姿を描いている。バブル崩壊後の不良債権処理に重点を置いた金融行政から、地方創生に軸足を置いた行政に変化するのが遅れ、特に地銀の改革が遅れた。旧態依然とした検査マニュアルの「奴隷になりさがった」地銀、信用保証制度に頼り切りで目利きの能力を無くした地銀。森のほか、広島銀行で事業再生に取り組み、金融庁に転じた日下智晴、早くからリレーショナルバンクの重要性を説いてきた多胡秀人の問題意識や足跡を追うことで、日本の金融行政や金融機関の問題をわかりやすくあぶり出している。「ルールや規定を求めても、行動そのものを変えなければ無駄に終わる」
Posted by ブクログ
2019年 1冊目
森金融庁長官の就任に伴い、地銀に求められるものが「財務健全性」から「地域への貢献」に大きく変化した。
これは金融庁の目を気にしながら「不良資産を作らないこと」を念頭に置いていた地方銀行に対し、「きちんと顧客を意識した経営をせよ」という金融機関のあるべき姿を再定義したものに他ならない。
先日社外有識者から「欧州に比べて日本の金融機関はリスクを取らない」という指摘を受けた。
銀行は資金を提供する機関ではなく、顧客、あるいは世の中の課題を解決するための主体であることを強く認識しなければならない。
Posted by ブクログ
前金融庁長官 森氏 を中心とした地域金融機関改革に関する本。
地域企業の事業支援をおろそかにする地銀は企業から捨てられると言うのが、本のタイトルの意図。
詳しく無い分野だったけど面白かった。
Posted by ブクログ
銀行が今まで不良債権の回収、引き当て、保全の強化に重きを置いていたことによる弊害が大きく出てきている。
かつての金融庁マニュアルによるもの。
これからはリレバンを軸として、本当の意味での顧客本位の営業が求められる。
自身のノルマばかりに目を向けるのではなく、顧客にとって一番の理解者である必要がある。
利ざやがなくなって銀行は厳しい、というのはただの言い訳。むしろ金利でしか顧客に利益をもたらすことが出来なかった銀行の末路である。
自分はこれからリレバンを意識した銀行員生活を送ろうと思った。
Posted by ブクログ
専門的な内容で普段から銀行と付き合いがある方でないとピンとこないかもしれないが、銀行の本来の仕事とは何か?の本質を問う本。
この本を読まないといけないのは全ての銀行員だと思う。
Posted by ブクログ
森金融庁長官に変わって、地方金融機関の指導方針が変わった、という話。小泉・竹中も悪くない、と言われると結局何が悪かったんだ、という気になる。足利銀行の破綻処理が決定的に地銀を萎縮させたのではないのか?
いやはや、お上に振り回される金融機関は大変だ。
まぁ、失われた時間も20年になると事業家も銀行もマインドが変わってしまって当然。地方再生に向け、これから考えを改めていけば良いのかもしれない。
Posted by ブクログ
金融庁長官森信親氏の改革について理解が深まった。地域金融機関は、不良債権処理問題、さらに金融庁の金融検査マニュアルのチェックリスト重視、信用保証制度の拡充(100%保証付き融資)による目利き力の喪失。低金利の状況下での金利競争により、規模の拡大。規模拡大ありきの再編は地方創生に意味はない。「引き当て」と「融資判断」は切り分けるべき。中小企業に密着した取引関係(リレーションシップ・バンキング)の風化。地銀が企業の「事業」を見なくなったことによる資金需要を生まない構造問題が発生している。事業支援、事業再生などサポートに全力を尽くすのが地域金融の本分。
Posted by ブクログ
捨てられる銀行
銀行、特に地方金融についてのレポート。異端児である森金融庁長官の改革と、そのブレーンについても書かれている。
増田寛也氏の地方消滅や自分自身の北海道旅行から地方の金融に興味をもって読んだ。現在起きている銀行の機能不全とは、極めて役所的な金融庁マニュアルに則ることばかり考えすぎて、本来の銀行業・金融業の意義である、将来的に拡大するのであろう企業や地元に密着した中小企業などへの融資が少なくなっていることである。財務諸表だけでは表れない地域との関係性や将来性に対する目利きが圧倒的に低下したことによって、銀行がマニュアル的な融資しかしなくなったことが地方金融の衰退の原因でもある。また、バブル時代の信用保証協会による100%の保証により、融資の緊張感や基準が弛緩し、無謀な融資が増えたのも拍車をかけている。現在進行形で起きている地方の衰退は、地銀の目利き力とネットワークを活用した粘り強く、かつアグレッシブな展開でこそ、食い止められる問題であり、食い止めねばならない。ハゲタカでも出てきたが、銀行の不良債権問題の本質は根深く、外科的手術も必要ではある。しかしながら、不良債権を請け負う銀行系サービサーに多くの銀行OBが出向しているものも多く、根本的な問題解決にならない。銀行内部の売り上げ競争に奔走するばかり顧客満足を軽視しているという点もあるが、これは実際に銀行で働いたことはないのでわからないが、難しい問題だと思う。数字上の向上を標榜しなった時の士気の低下およびそれが招く銀行の弱体化と顧客満足の軽視のどちらを取るかと考えると、短期的な利益を考えた場合、難しく、トップの「英断」が必要であろう。本質的には、定性的な評価体制が確実に必要で、それを伝搬して、企業の様な集団レベルで実践していくには、粘り強い呼びかけが必要なのだろう。
Posted by ブクログ
森信親金融庁長官に変わってから、従来の担保主義による貸出しだけではやっていけなくなる特に地銀にスポットを当てて問題提起している。
不良債権処理のための検査マニュアルを金科玉条にし、貸出先企業の本質を見極める努力も放棄してただただ担保や資産に基づいた融資だけを行い、その企業が経営難に陥れば真っ先に融資の引き上げに走る地銀の断罪は膝を打つ。
財務諸表には現れないその企業の将来性までも考慮に入れ、さらにその地域の活性化という地銀本来の役割を全うしようとする銀行の話は勇気づけられた。
僕の知識レベルではちょっと難しいところもちらほらあった。
東芝が医療部門や半導体部門を切り売りすることで当座の資金を捻出した結果、将来性ゼロの会社になってしまったように、短期の利益とリスク回避しか頭にない銀行の態度は本当に腹が立つ。
自分の怠慢を棚に上げて業績悪化をマイナス金利のせいばかりにして企業への本来の支援を怠っていると、ICOやクラウドファンディングなどの発達でそもそも銀行事態が不要になってしまうんじゃないだろうか。
Posted by ブクログ
問題意識は正しいはず。金融機関の人間はまず一回読んでみて、綺麗な正論を受け止めるべき。その上で、そもそも銀行始め金融機関なんかに事業の育成は出来ないよね、金融庁にじゃあ綺麗事で経営してみろよ、この作者は森長官の極フォロワーだよね、みたいなワイワイガヤガヤしたら良いと思いました。
Posted by ブクログ
良書。
題名から、ネガティブな本かと思っていたが、ポジティブな内容の本だった。
半沢直樹シリーズでの金融庁とのやり取りは少し前のことで、現在は、不良債権処理から地域を活かす方向に金融庁は先導しているそうだ。
稚内、広島、金沢、日本には、地域の事を優先させた地方銀行がある。やっぱり、人のために働くのが一番大切なんだろう。
Posted by ブクログ
多くの地域金融機関は、地域の経済の発展なくしては、発展も持続可能性もない。地域の企業、産業を良くすることで金融機関自ら良くなると言う両立が重要だ。健全性は、この時点の話ではなく、将来に向けての健全性のはずだ
Posted by ブクログ
金融庁のスタンスが森長官就任ともに大きく変わった。検査マニュアルで不良債権を除外することは弊害の方が大きいとし、融資先である中小企業にヒヤリングをかけ、地方再生のため足を使って企業を支えているかという点れレーションシップバンキングの復活に指導の軸足を移している。そのために地方金融の有志を集め、短期継続融資(短コロ)を復活させ担当者が足繁く運ぶ環境を整えた。
Posted by ブクログ
不良債権処理の頃から変わった銀行業務について。
地方銀行は地域企業を考えてるどこがある。
北国銀行(石川)、きらやか銀行(山形)、北都銀行(秋田)
Posted by ブクログ
地銀など地域金融が企業再生の機能を持たなければならない、とゆー主張。同感。ただ、地域にも色があるし、首都圏にも地域金融はあるので、もっと網羅的に掘っていかないと正しい把握にはならないだろうと思った。
Posted by ブクログ
卒業論文の資料の1つとして読んだ文庫本。地方銀行の現状とその原因が書かれている本。その後で,テーマを変えてしまったのでこの本を活用する機会はなくなってしまったが,純粋に教養本として面白かった。元々,銀行志望の人間だったので硬い文章ではあるもののなんとか最後まで読むことが出来た。ちょっと専門用語も目立つので基本的な単語を一通り学んでから,読むことをおすすめします。
Posted by ブクログ
地銀は地元中小企業のニーズに耳を傾け、営業支援せよ。債務不履行だけを恐れて業務を行っても銀行に未来はない
●感想
旧態的で、独善的な経営が続いてきた地銀を批判し、これからの銀行の在り方を指し示す本。ただ貸し付けるのではなく、経営コンサルティングを行えないと、ただの地元銀行は落ちぶれていくのではないか、と思わされる。
●本書を読みながら気になった記述・コト
■森金融庁長官が、債務不履行だけを極端に恐れるルールを改定。もっと顧客の立場にたった営業・事業を推進していくように指導した
Posted by ブクログ
捨てられる銀行シリーズ第1弾。2015年を機に、金融庁がリレーションバンキングを中心とした金融行政に舵を切ったことを事例含めて紹介した一冊。
新聞記事の広告を拝見し、シリーズ全冊を購入。前半の施策紹介については、現金融庁への賛辞中心になっているように読めてしまった。かつ冗長。一方後半の地方金融商品の事例紹介は読み応えあり。施策説明はほどほどに、こちらを深掘りすればより著者の考えも伝わる気がする。
Posted by ブクログ
これも数年前の話題の本。
勝手に、経済学者が銀行業界の行き詰まりの原因と現状を分析した本だと思っていた。
が、著者は、経済、特に金融庁を専門とする記者。
本書は、近年の金融庁の方針転換をドキュメンタリーとしてまとめたものだった。
少子化によるマーケットの縮小で、地銀どころかメガバンクさえ、最近行員の削減やら、統廃合で喧しい。
バブルの不良債権処理を、金融庁指導のもと、マニュアル化して進めてきた結果、地銀が地方経済を支える金融の役割を果たさなくなった。
(この辺り、半沢直樹で陰湿な金融庁監査の話が頭をかすめる。あれはメガバンクという設定だったけど。)
目利き力も、コンサル能力も失った。
いわば、失政だ。
それを立て直そうとした金融庁の関係者の奮闘が描かれる。
ただ、彼らの理想がうまくいかなかったくだりには、ど素人ながら、やっぱりね、と思ってしまう。
中小企業に密着して取引関係を築くリレーションシップ・バンキングを金融庁は解禁する。
アイディアも技術もあるのに資金がなくて潰れていく地方の優良中小企業が救える、と見込んでの改訂だ。
ところが、実際に動いたのは余力のあるメガバンクだけ。
筆者は、地銀の側に原因を求める。
勿論、しっかりした取材に基づき、地銀の問題点を指摘するのだが、金融庁の施策の側に問題はないのか?と素朴に思ってしまう。
理屈ではそうかもしれないが、地銀の機能不全は起こるべくして起きていて、それに対するアプローチがかけている理想論だったのではないか?なんて思ってしまうのだが。
Posted by ブクログ
森金融庁長官の改革を中心に、その考え方、背景、人物、先進事例などについて紹介する。一昔前に話題になった一冊で、時事ネタなので1年半もたってから読むのもどうかと思うが、まあ気にしない。
日本の失なわれた20年について、地域の中小企業を支援する機能を失い、低金利競争にのみ突き進んだ地銀、第二地銀と、それを結果的に後押しする形になった金融行政に原因を求めるというのは、ちょっと言い過ぎな気がするが、しかし、第四章の稚内信用金庫、北國銀行、きらやか銀行、北都銀行の事例は面白く、楽しく読める。
Posted by ブクログ
銀行の間接金融機能(融資)について、森金融庁長官の考え方を解説したものです。
リレーションシップバンキングというものが実現可能なものかどうかはよくわかりませんが、すくなくとも単なる金利競争と金融検査マニュアルに基づいた格付け、担保評価などしかしないのであれば、AIにとって代わられるのだろうと思います。
Posted by ブクログ
銀行は組織が大きく官僚的な体質だからかもしれないが規制や金融庁の方針への対応で精一杯な面もあるであろう。意思決定に時間がかかる組織だ。
また民間の営利法人であり収益を上げることも大きなミッションの一つ。公共性は高いが慈善団体ではないのだ。
単なる官へのパフォーマンスではなく、リレバン、事業性評価にいかに主体的に取り組む事が出来るかだ。