【感想・ネタバレ】差別感情の哲学のレビュー

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Posted by ブクログ 2019年08月31日

差別感情という人間の奥底に潜んでいるものを徹底的に炙り出している力作。

著者の中島義道に関しては、社会不適合である自意識のある人に寄り添い、励ましてくれるような言葉を投げかけてくれるような印象を勝手にもっていたが、概ね間違ってはいなかったようだ。本書でも中島義道は「常識」や「普通」といった言葉の危...続きを読む険性を訴え、違和感を実直に書き連ねることで、同じような経験をした読者との間に共感の橋を架けている。

一般的に疎まれる「高慢」や「驕り」などの否定的感情と「誇り」や「高邁」などの肯定的感情を対置させ、どちらにも差別感情は含まれていると説く。
自分自身を肯定する感情のそばには、他者を蹴落とす精神も必ず付いて回るという。相手が社会的弱者である、ということを無意識にでも認識した時点で差別感情は必ず発生しているともいう。

ただ、筆者はすべての差別感情をなくすことは難しく、むしろ無くそうといった偽善的な行為はますます社会を窮屈にしていき、そういった(強い)差別反対の意思表示は逆説的に差別を助長しているとまで説く。
どうすれば良いのかといった問いに対しては、解決策を具体的に提示するわけではない。ただ、どんな些細な事象であれ、必ず差別感情は発生するので、その感情と自分が向き合えるか、意識できるかどうかというのがポイントなのだろう。

文中に出てきた「パレーシア」という概念が気になるので、その発案者のフーコーもかじってみたいと思った。

昨今の群集化した怒りの感情や、過激な差別反対主義に違和感を感じる人は読んでみても良いかもしれない。

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Posted by ブクログ 2022年03月30日

生きてるだけで、目線を送るだけで、"誰かを踏み付けてるかもしれない"という繊細な心を持つことが必要、との主張。
障害を持った友人、知人らと接する時や、自身が主催している社会問題の勉強会の時にあったどこか"モヤモヤ"した、スッキリしない部分をハッキリ言語化しても...続きを読むらった感覚。
日々、もっと繊細に生きようと強く思えた。

仏教はなんでこんなに『苦』にフォーカスするんだろうとモヤモヤしていたのだが、確かに著者の視点で世の中を見渡したら『苦』ばかりだなと、論点はズレるが、後書きを読んで、別の納得感も得られた。

数十年経ったら古典として、多くの人に読まれ継がれそう。

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Posted by ブクログ 2021年07月05日

自分や他人の汚さ...という地獄からの脱出法が書いてあった。
物事の底が見えると、それはそれで安心してそれなりに過ごせる気がしてくる。
不思議だ。

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Posted by ブクログ 2020年07月27日

差別感情はどこから生まれ、育っていくのか。
偏った者が差別感情を生み出していると考えられがちではあるが、所謂ふつうの人こそが差別の温床である。ふつうの人が、差別などしていないという意識でいるからこそ、無意識に差別が起こるのだ。
ナチスドイツがその最たる例である。
私たちはあらゆる行為に差別感情が付随...続きを読むしていることを意識し、「他人」を自分の目線から外すことのないよう行動しなければならない。そのために、差別する自分と向き合わねばならない。

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Posted by ブクログ 2019年07月22日

-非権力的が権力に立ち向かい自らの理念を実現するためには、それ自身が権力を持たねばならないという自己矛盾に陥る。
SNSでだれかが悪を糾弾しあっというまに炎上、忘却を繰り返す世間。正義とは善とは、わからなくなる今日に読みたい本。新聞で引用されていた、フランス文学者の渡辺一夫の”寛容は自らを守るために...続きを読む不寛容に対して不寛容たるべきではない”という言葉を思い出す。

寛容は寛容にしか守れない。
難しいけども、常に繊細な自己批判を行うこと。いかなる理論もそれを欠如していて、無条件に自らを正しいとするならば、背を向けてよい、というメッセージ。

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Posted by ブクログ 2017年12月18日

現実的かどうかはわからない。しかし、どうだろうか? と考えることは大切だと思う。綺麗事かもしれない。しかし、一面的な綺麗事とは一線を画すと思う。加えて、必要になるであろう景色も著者は提示している。どこまで添えるかは各人それぞれだと思うけれど個人的には、こういう率直な議論が一番、響くように思う。有意義...続きを読むな読書だった。

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Posted by ブクログ 2021年12月27日

ウーマンリブや障害者解放運動については、言いたいこともあるが、最後の息子を誤って引きこ…してしまった母親が自責に耐えながら自死せずに生きているとしたら、どんな勲章もこれに及ばないという考察は本当にその通りやと思った!

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Posted by ブクログ 2021年01月24日

 差別感情を軸に「繊細で自己批判的な精神を常に持ち続けること」を一貫して主張している。なお、本書の主張は殆どが著者の経験に依るので、評論というよりかはエッセイに近い。(もっとも、感情という極めて主観的なものを対象としているので仕方ないことではあるが)
 そうなると必然的にこの主張は納得できる/できな...続きを読むいがより顕著になるので、そこから自身の「差別感情」を追求れば理解が深まると思われる。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2016年05月28日

誠実でありながら、他人が幸福であるように行動するという主張で締められる。要は、差別に関しては怠惰に考えることをやめてはダメで、差別に敏感であり続ける必要がある。

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Posted by ブクログ 2020年03月07日

普段から差別について考えていると、あまり目新しい感は受けないと思う。内容は格別に革新的ということもない。不快や嫌悪の情を根本から否定することはできないという論にはまったく同意するが、その依拠するところが「人間らしさ」の喪失であるのはいささか心許ない。学術書というよりはエッセイに近い印象をうけた。

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