あらすじ
昭和二十年八月の敗戦を境に、皇室は根本から変わらざるをえなかった。平和日本を実現し、「新しい天皇像」を示さねば、皇統を維持することなどできない。そんな切迫した思いを胸に、昭和天皇と当時皇太子だった今上天皇はともに戦後を歩み、今日の礎を築いた。新時代の皇室へ至る軌跡を、天皇父子のありようから描いた好著。
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Posted by ブクログ
昭和史の大家による今上天皇論。 出生から現代までの歩みを振り返り、昭和天皇の時代を痛烈に反省しながら、平和主義、国際交流、国民と寄り添うなど、「平成」の特徴を描き出している。例えば、沖縄訪問、英国や中国など旧交戦国への訪問、サイパンへの戦没者慰霊など、まるで先代が残した課題を片付けるような今上天皇の生き様である。
興味深かったのは小泉信三が、皇太子時代の天皇への教育方針を記した原稿を引用した下り。小泉は、昭和天皇の戦争責任にはっきり触れつつ、それでも民心が天皇から離れなかったのは、平和を愛好し、学問を尊重し、国民への思いやり深い昭和天皇の君徳があったためとし、「将来の君主としての責任をご反省になる事は殿下のいささかも怠るべからざる義務である」と。この言葉は今も天皇の胸に生きているように思える。