【感想・ネタバレ】山躁賦のレビュー

あらすじ

確かなものに思われた日常の続きをふと見失った「私」は、病み上がりのけだるい心と体で、比叡高野等の神社仏閣を巡る旅に出る。信仰でも物見遊山でもない中ぶらりんの気分で未だ冬の山に入った「私」を囲み躁ぐ山棲みのモノ達――。現在過去、生死の境すら模糊と溶け合う異域への幻想行を研ぎ澄まされた感覚で描写。物語や自我からの脱出とともに、古典への傾斜が際立つ古井文学の転換点を刻する連作短篇集。

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Posted by ブクログ

迷路、しかも靄のたちこめた中を徘徊するような感覚でした。もちろん快楽原則にそくした徘徊なのですが、それは不安を迫り出させる徘徊でもある。一種、ゲシュタルト崩壊をいざなう、この文体が、確固と属していた世界から離解させるような効果を持っているように思いました。かつ、ニヒリスティックな質感を湛えた視点により、二重の意味で不安定化するのだが、それが素晴らしい酩酊であるという、宜しき小説体験でした。そう、素晴らしいです。

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2023年05月07日

Posted by ブクログ

「山躁賦」(古井由吉)を読んだ。襟を正して向き合うべき文章を紡ぎ出す作家として私は先ず古井由吉氏を思い浮かべる。古典文学についての素養がない私にはこの作品群はかなり難解ではあったが、『杉を訪ねて』のエロティシズムと『花見る人に』のダイナミズムには体の奥深くから震えがきた。

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2013年03月18日

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