【感想・ネタバレ】反逆(上)のレビュー

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Posted by ブクログ

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~全巻通してのレビューです~

これは面白かったですね。特に荒木村重の部分。

司馬先生の「播磨灘物語」を読んだ時の荒木村重は官兵衛を酷い目に遭わせた武将という程度の印象でしたが、
本書は村重が信長に服従した時に剣先に刺した饅頭を満座の中で食わされた屈辱を忘れず、その後色々あってついに謀反を起こすまでの心理描写を克明にしており、
村重の人物がはっきりと浮かび上がってきます。

キリシタンで元々村重の家臣で後に信長に寝返る高山右近についても結構詳しく触れていて、寝返る時の葛藤など興味深かったです。

明智光秀についても描かれていますが他の本で既述のものが多く新鮮味はなかったです。
本書は荒木村重の部分を読んでこそだと思いました。

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2021年02月27日

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遠藤周作さんの作品はテーマの根底にキリスト教という視点があり、本作品も他の歴史小説にはない面白さ。絶対的権力であった信長に反逆心を抱く武将たち。現代にも通じる登場人物の心の動きは読みごたえありです。

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2012年05月25日

Posted by ブクログ

ネタバレ

誰にスポットをあてるかで印象が変わるなぁと思う。
何年もかけてこの戦略を繰り返す人生、誰かに仕える人生、それぞれにおいて常に死と隣り合わせという人間模様が壮絶すぎるなと思う。時代が違えば人殺しが無く、生き死にを賭けなくても上の地位につくような人が何人もいるんだろうな。
宗教の話はやはり面白いなと思う

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2019年05月10日

Posted by ブクログ

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荒木村重、高山右近、明智光秀、豊臣秀吉、そして織田信長。遠藤周作の書く歴史小説。
上巻は荒木村重の籠城半ばまで。他の作品で持っていた印象より、荒木村重が誠実な人間に描かれていて面白い。
しかし情感ゆたかな筆致であるがゆえに、人間の弱さや無常がことさらにしみる。

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2017年07月07日

Posted by ブクログ

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 昭和に多くの記憶を有する世代にとって、遠藤周作は悪ふざけが好きなだけのオッサンというイメージだ(遠藤先生すいません。真摯な遠藤文学ファンの方にもすいません)。インスタントコーヒーのTVCMで、「違いがわかる男。遠藤周作」という渋いナレージョンとは裏腹に、よれたセーターを着て庭で体操をする姿は不格好で変なオジサンそのものだった(本当に先生すいません)。作家仲間や編集者、女優さんの類が狐狸庵先生の悪戯電話で困らされたエピソードは、それらの「被害者」が、例えば阿川弘之氏の令嬢阿川佐和子さんのエッセイなどで、回想記として数え切れず残している。勿論怒ったり恨んだりしている人は一人もいない。そして、それらの多くの人たちが口を揃えて言うのは遠藤先生が抱える懊悩の深さゆえにバランスをとるためのものが「悪ふざけ」だったということだ。
 信仰をテーマとした深遠な純文学作品の作家遠藤周作としての顔と、罪のない悪ふざけで人を笑わせる珍妙な随筆作家狐庵先生としての顔を表裏として併せ持つというとこまでは、普通の愛読者になら解りきったことであろう。それが解っていれば、先のTVCMでのいかにも運動神経が鈍そうな身のこなしも、この作家が終戦直後に繰り返した肋骨を何本も切除する生死を賭した手術の名残であり、それが信仰の問題とともにこの作家の内奥の苦悩と表裏不可分のおどけて見えるだけの表層であることが理解できる。
遠藤周作の第三の側面ともいうべき歴小説家としての顔は、愛好家の中でさえあまり重きを置かれず注目もされてこなかった嫌いがある。何故だろうか。
 一昨年横浜であった「遠藤周作展」の展示や、本書『反逆』の解説によれば、本書の成り立ちはに3つの契機がある。その一は、遠藤氏の母方の祖先である竹井氏一党が岡山の山奥に依拠する小豪族であったことを知り興味を抱いたこと。第二に、信長秀吉時代の歴史の裏話をふんだんに織り込んだ古文書『武巧夜話』(前野家文書)が当時発見され、その文書の中で語られた秘話、裏話の類に多くの着想をえたこと。最後に、これは私が近代文学館で文面を見たのだが、遠藤氏が敬愛する歴小説家司馬遼太郎に宛てた質問の手紙とその返書に概要こんな風に書かれていた。
 遠藤問う:私の先祖に岡山の小豪族竹井一族というのがいるのだが、司馬先生詳しく知らんかね。
 司馬遼答えて曰く:秀吉の水攻めで有名な備中高松城の戦いの前哨戦に「冠山城の戦い」というのがあった(備中高松も冠山も岡山県岡山市)。その冠山城の戦いで攻める秀吉軍中にいた若き加藤清正と、籠城側の猛将の一人とが凄絶な一騎打ちを演じ清正が勝った。だが、その勇猛果敢な戦いぶりに敵方の大将だった秀吉も感服し50両を清正に与えその猛将をともらうことを命じた。その猛将は名を「竹井将監」とう。名字からいって将監は貴兄のご先祖である竹井一党のひとりかもしれない。このくだりは『中国兵乱記』という古文書に記されているから興味があれば調べてみるといい。
 遠藤は自作『加藤清正』のあとがきに、そもそも清正の物語を書こうと思ったのは、自分の先祖が清正との一騎打ちで殺された名もなき武将であったことを知ったからだと記している。『清正』の作中には竹井将監は登場しないが、その後何年かの構想を経て、信長に抗った荒木村重を主人公とした『反逆』の中に、副主人公の役回りで竹井将監は登場することになるのだ。
 先日私は、岡山県の冠山城、早島城、小笹丸城の三つの城跡を訪ねた。冠山城は竹井将監が清正との一騎打ちの末打ち取られたところである。早島城はその将監が城主だった城で、秀吉が作らせたという供養塔が残っている。小笹丸城は岡山最西部の山中にあり、戦国時代に竹井一党が籠っていた古城跡だ。
 いずれも山城がかつてあったと言われているだけのただの「山」で、冠山は笹竹に埋もれ早島は墓地となり、小笹山は見事に何もない城跡にぽつんと「小笹山城跡」という小さな石碑だけがあった。遠藤周作が建立したものだった。
 それらの侘しさは今思い出すだけでこみあげてくるものがある。遠藤は小笹丸城跡を訪れた際同行の編集者にこう漏らしたという。
 「おれの先祖はこんな辺鄙な山の中を守るため、あちらの大勢力につき、こちらの勢力にへつらいといった、みじめな小豪族だったんだなあ」
 ずるくみじめに生きるしか方途のない弱者に向けられた慈愛の目。その目で描いた物語であるという一点において、『反逆』をはじめとする歴小説の一群は、『沈黙』などの純文学作品と比較して一段低くみられる必然性などまるでない、燦然と輝くれっきとした遠藤文学である。それだけは間違いない。

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2012年03月03日

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