あらすじ
増加と停滞を繰り返す、4つの大きな波を示しつつ、1万年にわたり増え続けた日本の人口。そのダイナミズムを歴史人口学によって分析し、また人々の暮らしの変容と人生をいきいきと描き出す。近代以降の文明システムのあり方そのものが問われ、時代は大きな転換期にさしかかった。その大変動のなか少子高齢化社会を迎えるわれわれが進む道とは何か。(講談社学術文庫)
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Posted by ブクログ
歴史というと政治史ばかりを追うようになりがちであるが、そうではなく人口などの統計資料から歴史を見る本である。
海外では信徒名簿、日本では宗門改帳が人口統計をするための台帳となる。
日本は縄文時代からずっと人口増加の一途を辿ったわけではないが、そのウラには経済構造の変革やそもそもの生産力の影がある。農業革命が起きれば人口は増加するし、産業革命が起きても人口は増加する。
また江戸時代には、困窮から間引きが発生したようである。
この本には、「ある経済構造・社会体制が爛熟してくると人口増加が緩慢になってくる」とある。
人口増加とか現象とかは結果に過ぎず、人間一人一人が子供を産み育てることへの意欲があるかどうかである。そしてそれは減っている。それは社会が爛熟し社会保障が充実したとか、そういう要因が大きい。
しかし社会は発展していくものであるから、当然の帰結でもある。これをこの著書では「文明の逆説」と呼ぶ。
いまでは資本主義がよろよろになりながら「生きている、生きている」とさながらカテーテルや胃瘻や点滴を施しながら延命している状況であるが、誰もがそれが限界にあることは認識しているはずである。かといって共産主義が時代に早すぎたのかどうかは分からないが、もう墓場の中である。
浪費をしつつけ、飽食の時代に終止符を打つ必要があるのかも知れない。そうしないと、いくら資源があっても足らない。それをこの本を読んで思ったことである。