あらすじ
繁華街のカラオケボックスに集う四人の男。めいめいに殺意を抱えた彼らの、今日は結団式だった。目的は一つ、動機から手繰られないようターゲットを取り換えること。トランプのカードが、誰が誰を殺るか定めていく。四重交換殺人を企む犯人たちと、法月警視&綸太郎コンビの、熾烈な頭脳戦をご堪能あれ!
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Posted by ブクログ
このシリーズを読むのは久しぶりだ。今回は倒叙ミステリだった。
四重の交換殺人の謎に挑む法月親子。
叙述トリック的なところは少しずるい気がしたけれど、きれいに騙されてしまったので、とても楽しく読めた。
星5つ。
Posted by ブクログ
四重交換殺人という奇想、ミスリードの巧さ、最後の犯人の奸計にも充分翻弄されっぱなしだったが、交換殺人の組み合わせ数の話に1番感心しちゃったよ。冷静に考えるとそらそうなんだが、盲点だったので非常にスッキリした。
Posted by ブクログ
見事なカラクリ。タイトルに踊らされた。キングはいなかった。ジョーカーをキングと思い込むことで、イクルくんがJを引いたという描写から、イクルくんはりさぴょんの兄の担当であると考える。しかし、りさぴょんの兄はジョーカーで、カネゴンが殺して欲しい相手がJだった。その一つの勘違いから、読者はりさぴょんとカネゴンの担当も勘違いしてしまう。
最初に、犯人目線の状況を語ることで、読者は探偵よりも真実が見通せていると思い込む。それを逆手に取りその部分にからくりをしかけているのが見事だった。
Posted by ブクログ
○ 総合評価 ★★★☆☆
〇 サプライズ ★★★☆☆
〇 熱中度 ★★★☆☆
〇 インパクト ★★★☆☆
〇 キャラクター★☆☆☆☆
〇 読後感 ★★★☆☆
「夢の島」,「イクル君」,「カネゴン」,「りさぴょん」。ニックネームで呼び合う全くの赤の他人の4人による交換殺人。その交換殺人に,法月警視と綸太郎のコンビが挑む。講談社ノベルス版のカバー袖には,「匿名かつ離散的な都市型犯罪を相手に,圧倒的データ不足に悩まされながら,仮想ロジックを積み重ねて未詳の犯人「キング」をあぶり出そうとする名探偵」とある。まさに,そういう作品。交換殺人による犯罪小説パートと,法月親子による謎解きミステリパートからなる。
まず,最初に描かれるのは,夢の島によるイクル君の伯父の殺害部分。かなりリアルな犯罪の様子が描かれる。このパートのポイントは,イクル君の伯父がタンス預金を守るために偽札を用意していたこと。夢の島はこの偽札の一部も持って帰り,脅迫を受けた際に振込に使おうとしたことが,夢の島の事故死と交換殺人の判明につながっていく。
離散的な都市型犯罪である見ず知らずの4人による交換殺人。犯罪のタイプ的に,名探偵に与えられる情報は圧倒的不足してしまい,名探偵が謎を解くことは困難。しかし,夢の島の交通事故とイクル君の伯父が残していた偽札から,複数の犯罪がつながり,法月は交換殺人の存在を知る。
物語全体の仕掛けとしては,そもそもタイトルがミスディレクション。キングを探せというタイトルながら,キングは存在しない。4人が交換殺人に利用したトランプは,エース,ジャック,クイーンとジョーカー。カネゴンとりさぴょんは,法月がキングが存在すると勘違いしている点を利用して,交換殺人が成立していないと見せ掛ける。夢の島の妻は自殺をしていた。「自絞死」。物語の最中で,夢の島を恐喝していた恐喝者の恐喝のネタ,自分の兄がしたように夢の島の妻も自絞死だったのでは…という話が,真相だった。イクル君は,カネゴンとりさぴょんにより口封じのために殺害されていた。
法月綸太郎作品らしい,地味ながら堅実なミステリ。大技,力業はないが,細かい伏線がちりばめられている。力業はないといったが,交換殺人をしていた4人に「キング」がいない,いたのは「ジョーカー」という点は意外性があった。この作品の最大のインパクトである。しかし,その明かし方がそれほど効果的ではない。そもそも法月綸太郎の作風が意外性よりロジックの完成度を重視しているからだと思われるが,キングが存在せず,ジョーカーが存在していたこと,警察の勘違いを利用して生き残っていたカネゴンとりさぴょんの二人が罪を逃れようとしていた。そのことを見抜いた法月綸太郎が犯人を追い詰めるところが終盤にしっかりと描かれている。これはこれで面白くないわけではないが,意外性を効果的に演出できていない。
よくできた作品なんだけど,傑作とまで思えなかったのは,意外性がそこまで感じられなかったからだろう。こういう作風が好みではないのが難点。法月綸太郎の作品はどれもこのような雰囲気で,アベレージは高いが,作風が好みでないからか,読後,少し物足りなく感じてしまう。トータルの評価は★3で。