あらすじ
「損したくないニッポン人」はなぜこんなに多いのか。妻から「あなたは貧乏じゃなくて、貧乏くさいのよ!」と罵倒されても、ついつい「損したくない」行動に走って、損ばかりしている高橋秀実さん。まじめに「損得」について取材と考察を重ねた結果行き着いた「ニッポン人の新・行動経済学」とは? (講談社現代新書)
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Posted by ブクログ
「得したい」ではなくて「損したくない」、分かる分かると思って手に取った。
なぜそのような考え方なのか、を追求するものではなくて、日常の「損したくないあるある」をまとめた本。色んなあるあるが面白かった。
12章の日付に疎い人の話が好み。
それにしても、なんでこんなに「損したくない」って思ってしまうんだろう?周りと同じでいたいって気持ちが強いのも影響しているのかな。
Posted by ブクログ
<感想>
本書を読んで「健康のためなら死んでもいい」というジョークを思い出した。本書には損をしないためにコストに合わない努力をする人々が出てくる。俯瞰して眺めると明らかに非合理的なのだが、当人たちにとっては目先の小さな損得を回避することが正義になるらしい。
特に「自分の得」を「相手の損失」で測る人々の存在は身につまされた。
損得は比較の中で生まれる。比較対象が無ければ主観の満足度しかない。「損したくない」は同程度の他者との比較から生まれる感情なのだ。
最終章の年配のご婦人たちのコメントは「損したくない」感情を見事に昇華した偉人のようでもあり、哲学者の雰囲気も感じさせる。「損したくない」感情に振り回され苦しんでいた自分自身にとっては、まさに目から鱗が落ちる思いであった。
「「失敗するのもこれまた一興」であり、「せっかく生きているんだから、失敗を楽しまないとそれこそ損じゃないですか」
「一興」という日本語は心に刻んでおきたい。辛いときに呟くマイ呪文にしようっと。
<アンダーライン>
・輝かしい底値
・最終的に最安値を確認できるのは最後のスーパーを確認した時で、実際買うにはそこから最安値のスーパーまで戻らなければいけない
・知ると損した気分になる
・(ポイント)小さな得の積み重ねは大きな損に通じているのではないだろうか
・企業に損させることが彼女の得ということらしい
・価格と値段
★生きているだけで、私たちはリスクを取っている
・「分からなさ」を数値化したものを「リスク」と呼ぶ
★現在価値
★後悔はありますけどね。後悔は損じゃないから
★口にしたら本当に損になっちゃうでしょ
★損しているのを「損している」と言ったって何の意味もないでしょう。愚の骨頂じゃないかしら
★現実の損得を考えたら、結局損するからです。底値だと思って買っても次の日になるともっと安くなっているかもしれないでしょう。
★たまたま安いモノに出くわせば「ラッキー!」と得した気分になるし、高いモノを買って失敗するのもこれまた一興です。「あっ失敗しちゃった」っていうのも楽しいじゃないですか。せっかく生きているんだから、そういうことを楽しまないとそれこそ損じゃないですか
Posted by ブクログ
損したくない生き方をしているのに、よくよく考えてみれば人生に損をしている人が多い。買い物に一円を気にする生き方が快適なのか?良く考えるべきだ。
Posted by ブクログ
損にまつわる話が沢山出てくる.第6章の「定価のゆくえ」が面白かった.要は定価があるから値引きもあるということで,その定価も決め方が明確でないところが面白い.また,第10章の富山の薬売りの話も核心を突いていて楽しめた.浄土真宗の根深さも凄いと感じた.
Posted by ブクログ
『歎異鈔』の一節の紹介で何となく損が分かったような気がしました。「地獄は損しない」ことを知り、底辺にいる、あるは無能であると自覚していれば、ちょっと努力したら得することしかこの先ないような気がしました。過信は努力を妨げ、さらには困難に出くわすたびに「損した」と思わずにはいられず、自ら苦しむだけだと気付きました。
Posted by ブクログ
損及び得について作者が様々なところに取材に行くエッセー。
経済学者ではない作者が、損を経済学的にアプローチをしようとするが、行動経済学やミクロ経済学ではなんか納得が行かないらしく、もっと地道に聞いていく。節約のために何時間もあるいはママ友との交際費を費やす主婦、巨大なTVを買う狭い家の住人。富山の薬売りに緒を発するケチくさい富山の幸福度合い。適当に鉛筆をなめて不動産鑑定士が決める路線価。小ネタの積み重ね。
得はもともと徳から来たらしく、二宮尊徳もそこらへんと関わるらしい。
Posted by ブクログ
日本人の損得"感情"についてのルポ。自称"貧乏臭い"という著者が、日本人の金銭感覚について考察する。「損したくない」「得したい」という気持ちは、誰にでもある感情だが、その気持ちが強すぎて、辻褄が合わないおかしな行動をする人達がいる。著者はそういう行動に素朴な疑問を提示する。テーマは、スーパーの買い物、ポイント収集、家電の買い方、定価や貨幣、不動産の仕組み、ビジネスや人生における損得"感情"まで、独自の視点で考察しており、大変面白く読めた。
この本で紹介されている事例を読むと、他人事とは思えないことがある。わずかなポイントを得るために、無駄な買い物をすることはよくある。例えばスーパーで100円で1ポイント(1円)のサービスを得るために、98円の商品に30円の小物を付けて買ったりする。そういう行動は理論上明らかにおかしいのだが、ポイントの損得感情が働くとつい買ってしまう。今、流行の行動経済学には違和感を抱く著者の主張は、納得できる部分も多かった。
ちなみに、自分は損得感情は強いほうである。この本の内容は確かに面白かったが、定価に相応しいかどうか考えてみると、とりあえず値段相応という結論になった。損しなくて良かったかも。
Posted by ブクログ
最初は行動経済学の最新の成果を紹介する本だと思った。
だから、読み始めてすぐに、様子が違いすぎて、???となった。
でも、「経済学の理屈ではこう説明されてるけど、全然実感と違うじゃん!」という、我々の声を代弁した本なのかもしれない。
例えば、テレビを買おうとするとき。
本当は30インチくらいでいい、と思っていても、売れ筋は40インチ。
むしろ価格的には、大量に生産されているから、そっちのほうが安い。
これ、サイズの経済学。
でも、本当に要りもしないデカいサイズのテレビを買って、生活がよくなるのか?
部屋が狭くなったり、大きな映像から圧迫感があったりして快適でなくなってしまうのではないか?
こうやって、「今起きていることを最適なものとして説明する」経済学からひらりと身をかわしていく。
損とか、得とは何かを考えるために、二宮尊徳の子孫にインタビューしたり、易学を紐解いたり。
最初の期待が違ったのは「損」だったかもしれないけど、斜めから見ることができて楽しかった。
これ、「得」なのかも。