【感想・ネタバレ】遠山金四郎の時代のレビュー

あらすじ

天保の改革で幕府最後の改革に挑んだ老中・水野忠邦。歌舞伎三座の移転から庶民の娯楽・寄席の撤廃まで風俗取締で断行しようとしたが、町人の実情を理解し、抵抗したのが町奉行・遠山金四郎だった。仮設店舗や屋台店など「床見世」の撤去や、江戸に流入した人口を農村へ強制的に返そうとした「人返しの法」に、江戸の内情を考慮して反対したのも遠山だった。名奉行の見識と行政手腕を、江戸町奉行所の史料から実証した名著。(講談社学術文庫)

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Posted by ブクログ

「遠山の金さん」の主人公を入口に、モデルとなった人物が活躍した天保年間辺りの様子を広く考えられる内容の本書は興味深い。そして…江戸時代にも「とりあえず“上”の意向」という考え方で何かをしようとする人も在れば、「本当に善いのか?」とい人も在ったというのが、妙に面白かった…

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2015年08月31日

Posted by ブクログ

江戸後期、幕府は財政窮乏化のなか風紀粛清と質素倹約を旨とする天保の改革を断行する。風俗取り締まりのため庶民の娯楽である寄席の撤廃や歌舞伎三座の移転、廃止まで打ち出した老中水野忠邦に対し、真っ向から対立したのが北町奉行の遠山金四郎だった。庶民生活の実情を重視し、厳しい改革に反対しながら骨抜きにした名奉行の論理を明らかにする。(親本は1992年刊、2015年文庫化)
・まえがき
・第一章 遠山の金さん像の虚実
・第二章 繁栄の江戸か寂れた江戸か
・第三章 寄席の撤廃をめぐって
・第四章 芝居所替をめぐって
・第五章 株仲間解散をめぐって
・第六章 床見世の撤廃をめぐって
・第七章 人返しの法をめぐって
・第八章 近世後期の町奉行たち
・第九章 「遠山の金さん」の実像
・むすび

全九章もある学術文庫なのに、容易に読むことが出来た、良書である。従来、遠山の金さんが何をやった人なのかいまいちよくわからなかったが(大岡越前に比べ、これといった実績が見当たらない)、本書を読むと、天保の改革に際し、どの様な観点から、水野忠邦と対立したのかがよくわかる。
すべてに共通することは、江戸の下層民の暮らしをどの様に守るかということであった。寄席や芝居を廃止すれば、庶民は、娯楽を失うだけでなく日々の暮らしの糧を失う。かといって農村に帰っても暮らし成り立たず困窮する。そうなれば、うちこわしにより江戸の治安は乱れ、公儀の威光にさし障る。リアリストの金さんは、老中と対立することとなった。
それにしても、これだけ対立してよく身を全うしたものである(途中、大目付に左遷されたとはいえ町奉行に復帰する)。著者は、将軍の信頼が厚かったことをあげているが、もう少し掘り下げて欲しいところである。

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2015年09月24日

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