あらすじ
日本人研究者による待望の入門書、登場! 世界を創造した神は〈善〉か〈悪〉か? 「人間は<偽りの神>が創造した偽りの世界に墜とされている。われわれはこの汚れた地上を去り、真の故郷である<天上界>に還らなければならない」――誕生間もないキリスト教世界を席巻した<異端思想>。膨大な史料を博捜し、その実像に迫る。(講談社選書メチエ)
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Posted by ブクログ
古代地中海世界に誕生し時のキリスト教正統多数派教会とも並び立った「異端思想」、キリスト教グノーシスについて概説した書。同思想が勃興した紀元2世紀という時代に焦点を絞りつつ、代表的な思想家(教師)である(ウァレンティノス派の)プトレマイオス、バシレイデース、マルキオンの教説を取り上げ、彼らの思想を考察する。
本書は、神秘思想の一つであるグノーシス主義の中でも「紀元2世紀のキリスト教グノーシス」を解説したものである。五賢帝治世下にて宗教・哲学の大衆化が進んだ時代、まさにその時代にこそキリスト教グノーシスは盛期を迎え、後にグノーシス主義を代表する著名な教師たちを生み出していた。即ち、擬人(神)化された知恵(ソフィア)の堕落と救済の神話を説くウァレンティノス派のプトレマイオス、「存在しない神」による無からの創造を語るバシレイデ―ス、そして「正典」という概念を初めて教会にもたらしたマルキオンの3人である。
本書は紀元2世紀に活躍した彼らの教説をそれぞれ取り上げることで、キリスト教グノーシスの共時的な解説を試みている。各々の記述は概要と要点がよくまとまっており、まさにキリスト教グノーシスの代表的論者を分かりやすく紹介していると言えるだろう。また共時的なアプローチについても、キリスト教グノーシスが同時代の思想的風土の上で育まれてきたことが明瞭に示されており(例としては、プトレマイオスのソフィア神話とアプレイウス『黄金の驢馬』の比較――「好奇心」による破滅や上位存在からの「啓示」による救済のモチーフ)、その意味でも興味深く感じられた。