あらすじ
日本中世芸能の世界を、「勧進」「天皇」「連歌」「禅」という四つの切り口から論じる。経済活動の原動力としての勧進が芸能を包含していく過程、天皇制のなかの祓穢思想と芸能との発生のかかわり、位相の変化の連なりを集団の連関のなかで生み出す連歌のダイナミズムと美学、禅が孕むバサラ的思想。超域的な視点から能楽研究を拓いてきた第一人者の眼で歴史資料から鮮やかに見出される日本中世文化の全容を描く画期的講義の記録。(講談社学術文庫)
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Posted by ブクログ
松岡心平 中世芸能講義
中世の芸能に影響を与えた 勧進、天皇、連歌、禅 のテーマについて 論じた本。
中世芸能が、仏教や天皇制と強く結びついて成長したことがわかる。連歌や禅の熱狂的な共同原理の中に見られる無縁性(権力や政治から離れて生きる)が 中世思想の特徴なのかもしれない
各テーマのポイント
*仏教の経済活動である勧進が興行化され、芸能化されたことで 能楽に至った流れ
*天皇制の中で穢れを一身に背負う存在として 必要とされた河原者、芸能者など非人の役割
*連歌や禅の熱狂的、無縁的な共同原理
*禅のバサラ文化への影響
勧進興行は 今で言う 大仏再建のためのクラウドファンディング。人集め、資金集めのために勧進を行う聖が 芸能化していることがわかる。その先に猿楽があり、それらを様式化、昇華させたのが世阿弥とする論調
能「鵺(ぬえ)」「蝉丸」は 形象化された穢れであり、穢れを 天皇制の内部から排除することを意図しているとのこと
連歌や禅に見られる無縁の人たちの熱狂的な共同意識
*あの人がこう詠んだから自分はこう詠むといった個人個人が別個の世界ではなく、集団である一つの世界を追いかけていく
*一切の社会的関係を絶ち、何らかのシンボルのもとに平等に支配する自律的な無縁の共同体という感じ