あらすじ
東京下町、戦前は遊郭で賑わった洲崎にプロ野球専用の球場ができたのは、昭和11(1936)年のこと。沢村栄治がノーヒットノーランを演じ、伝統の巨人阪神戦がここではじまった。しかし、わずか1年後の昭和12年にできた後楽園球場にその場を奪われ球史から消えてゆく。今年2014年は、巨人が誕生してから80年、来年は阪神がそれに続く。「悲劇の球場」の詳細を野球少年だった著者が丹念な調査のもと蘇らせる。
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Posted by ブクログ
プロ野球勃興期の昭和11年から13年までのわずかな期間に,東京は木場に存在した洲崎球場を徹底的に取材した結晶.
生まれたての「職業野球」と蔑まれたプロ野球がいかなる想いを抱え,必死にその時代を生きたかという息遣いが聞こえてくる,非常に臨場感のある描画だった.
洲崎球場のあった東京の東部はブルーカラーの集まる地帯であり,もともとは新聞を読まない層の集まる箇所であった.この本を読んでいると,プロ野球の発展は新聞社の拡販とどう切っても切れない繋がりがあったことがよく分かる.下町の人々が,戦争の足音が次第に大きくなる時勢のなかで野球に熱狂した様子の伝わる名著だと思う.