【感想・ネタバレ】超合本 妖怪アパートの幽雅な日常のレビュー

あらすじ

共同浴場は地下洞窟にこんこんと湧く温泉、とてつもなく美味いご飯を作ってくれる手首だけの賄(まかな)い「るり子」さん――両親を亡くした稲葉夕士が、高校進学と同時に入居したのは、人間と妖怪が入り乱れる「妖怪アパート」だった! 見たことのない光景に度肝を抜かれながら、夕士は一歩一歩、大人になっていく。

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ネタバレ

中年になるとかえってキツい

構成はテンポ良い。主人公も努力家で困難に立ち向かう。性格も社交的。登場人物(妖怪)も多彩。小説として申し分無いはず…。
でも、私には合わなかった。
主人公とアパート仲間と親友には救いがあるけど、それ以外の人間はバッサリ切り捨てられてる感がある。
作者が市井の人物を睨めつけているような、そんな薄ら寒いおぞましさを感じてしまう。
この世界では妖怪に親和性のある人間はスポットライトが当たるが、そうでない人間は「単なる嫌みな奴」で背景同然に埋もれていく。
そうやって埋没していく人間を主人公は考察という名のレクイエムを綴る。
「ライトノベルのモブにいちいち感情移入してはキリが無い」と反論されそうだが。
しかし世の中の大半は、主人公に因縁つけて自滅した不良のような弱さ、主人公を家から追い出した主人公従姉のような意地悪さ、主人公親友にやり込められた新米教師のような未熟さを内包している。
そして妖怪アパートなぞ現実には存在しない。
ある程度歳を取った者にとっては小説の風景へ埋もれたモブに感情移入してしまうのである。
護送船団の如く主人公を守る妖怪は現実にいない。
「両親亡くしてバイトと学業両立しないといけない生活でも、なんだかんだで恵まれているやん」と、此方こそ主人公に突っ込んでしまう。

生活に疲れた中年には、かえって堪える作品だった。
私も、風景へ埋もれる側。
妖怪アパートの世界の人間でなくて良かった。

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2023年05月21日

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