あらすじ
「何でも知ることのできる不思議な鏡」をつかって小さな探偵事務所を営む女子中学生・襟音ママエ。自分の頭ではまったく推理をせず、鏡の力に頼りきりのママエだったが、ある事件がきっかけで、悪がしこい名探偵・三途川理(さんずのかわことわり)に命を狙われることになってしまい――!? 奇想の新鋭・森川智喜がおくる、知恵と勇気のファンタジックミステリー!
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Posted by ブクログ
魔法の鏡という,おきて破りのアイテムを登場させた本格ミステリ。この設定だけでも魅力的だが,襟音ママエやグランビー・イングラムといった登場人物のキャラクターも秀逸である。
更に,この本は,本としての構成も見事。第一部は,魔法の鏡を利用して襟音ママエが解決した事件が紹介されている。真相から逆算して推理をするという奇妙な設定と,襟音ママエのなんともいえないキャラクターの魅力もあり,この短編も,日常の謎系のミステリとして十分楽しめる。
この第一部を踏まえ,襟音ママエのキャラクターに愛着を持たせておいた上で,第二部には,こちらも強烈なキャラクターである三途川理を登場させている。
ある国の王位を継承するために,ダイナ・ジャバーウォック・ヴィルドゥンゲンから,襟音ママエの殺害依頼された三途川理は,魔法の鏡を利用したさまざまな襟音ママエ殺害計画を立て,実行に移す。三途川理と襟音ママエ…というより襟音ママエを守るイングラム陣営との対決。最終的には,もう一人の探偵である緋山燃の力もあり,三途川理の襟音ママエ殺害計画は失敗する。
ふしぎな国の法にのっとり,ダイナと三途川理はヒキガエルになる罰を受け,ママエは王位を継承するというハッピーエンド。読後感もよく,文句なしの★4つ。
Posted by ブクログ
毎度おなじみジャケ買いの一冊。
タイトル通り、白雪姫をモチーフにしたカバーデザインで、ついつい手に取ってしまったのですが、これがまたなかなか面白かった。
第14回本格ミステリ大賞を受賞作。
モチーフになっている白雪姫から「7人のこびと」を持ってくるのはまだしも、「真実の鏡」をミステリ作品に持ってくるというとんでもない作品。
襟音ママエの探偵活動を描く第一部は3つの短編で構成。依頼人の相談に、お茶を替える振りをしてサクッと鏡に犯人とトリックを聞いて問題解決! 助手の小人・イングラムが「もうちょっと考えようよ」と言ってもどこ吹く顔のママエ。
なんや? これ?
ミステリとは思えない最初の作品に当惑しながら2つめの話に。
ママエの答えに納得しない依頼人に、依頼人が納得する言い訳をまたも鏡に考えさせるという……うーん、なんだろう? この激しい違和感は……答えが分かる鏡というアイテムがあったら、ついつい倒叙型の作品になりそうなもんだけど。
なんだか分からないまま読み進めていくと、3つめの物語ではとうとうママエのやり方に違和感を持つ他の探偵が現れて級地に陥れられて……と、言うところで第一部は終了。
第二部になると、鏡の出所やイングラムの存在を補強する舞台が登場。おとぎ話には付きものの「悪い王女」が現れて、第一部でママエを追い詰めた探偵・三途川と組んで、ママエを無きものにしようと襲いかかります。
ここからはこの小説の真骨頂、「真実の鏡がある」ことを前提にした虚々実々の駆け引きが繰り広げられ、最後にはストンと論理に基づいた推理が展開されます。
なるほど、これは面白い。
著者のデビュー作のキャットフードは「人狼ゲーム」の変形版との解説があったので、興味津々。次はそれを読んでみよう。
Posted by ブクログ
2016/1/28
何でもわかる鏡を持ってる探偵って探偵小説として成り立つの?と思いましたが後半はなるほど。
読みやすい割に敵役の三途川が虫唾が走るほど嫌な奴で、主人公ママエがあっさりやられてイライラした。
Posted by ブクログ
「魔法の鏡」というお題で抜群に頭の良いひとが小説を書くと、なるほどこんなミステリが出来上がるのか……。
「あちらの世界」では王家を継承する血を引くママエは、それとは知らず「こちらの世界」で世話役の小人イングラムとともに暮らす中学生。そのいっぽう、母の形見の「魔法の鏡」を密かに駆使して探偵業も営んでいる。そんなある日、とある依頼人の手引きでおなじ探偵業を営むふたりのクセもの、緋山燃、そして「我こそは名探偵」と公言してはばからない三途川理と引き合わされたママエは、「あちらの世界」の戴冠式に絡んだ陰謀から思わぬ事件に巻き込まれてしまう……
ミステリーながら、いきなり「魔法の鏡」「小人」といった飛び道具(?)の登場に面喰らうし、年齢的に仕方ないとはいえ、ママエの幼さ、身勝手さに共感できないのも読んでいてつらいところ。とはいえ、「魔法の鏡」を縦横無尽に使い倒す三途川の頭脳には舌を巻かずにいられない。とにかく、読者に息つく暇をも与えない矢継ぎ早のトリックは面白く、おとぎばなし的な舞台設定もさほど気にならなくなってしまうのだ。ラストの種明かしは……う〜ん……ひとひねりせずにはいられない作者の性格が出ている感じ?
【以下、ネタバレ】
…… 「白雪姫」的なオチというのは分からないでもないが、個人的には、とどめはママエ自身の手でお願いしたかったかな? オトナへの階段として。シリーズものらしいので、そのあたりの事情からママエのキャラは変えたくないかもしれないけれど。