【感想・ネタバレ】ニューカルマのレビュー

あらすじ

人生や社会を豊かにすると喧伝するネットワークビジネス。ある日大学時代の友人から突然かかってきた電話で勧誘されたユウキ。今、彼の勤める会社ではリストラが始まり不安な気持ちが膨らんできていた。そんな状況の中、副業のつもりで入会し、順調に会員を増やしていき、次第にそのビジネスにのめり込んでいくものの、周囲からは冷ややかな目で見られるように。そして思ってもみない落とし穴に嵌まり──。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

「給料とは別に、百万円入ってきたら、良いと思いませんか?」

勤めていた会社の業績不振によるリストラの危機で将来への不安を抱えた主人公。旧友からの誘いで、初めは否定的だったネットワークビジネスに次第にのめり込んでいく様子を描いた作品。

(感想)
自分も、ネットワークビジネスには「成功、夢、仲間」という甘い響きの言葉を餌に人々を騙してお金を儲ける悪徳なビジネスというイメージがあり非常に嫌悪感を持っている。

ストーリーの序盤は、そんな悪質なネットワークビジネスにのめり込む主人公が破滅の道を辿る物語だと思って読み進めていたが、

途中から、「あれ、ネットワークビジネスって、やり方次第では誰も損をせず、必ずしも悪いものではないのでは…?」と思ってしまうような説得力があり、読み手の価値観やスタンスが足下から揺らぐ瞬間があった。

結局のところ、そううまくはいかないのだが、ネットワークビジネスにハマる人の心理のようなものを擬似体験するような構成となっていて、単純にネットワークビジネス否定本ではないという点に著者の筆力の巧みさを感じた。

不安を抱える中、騙され、裏切られ、懲りずに何度も絶望を経験した主人公がストーリーの最後にした決断は果たしてハッピーエンドなのかバッドエンドなのかは、読み手により意見が分かれるところだと思ったが、主人公の本気で人を幸せにしたいという気持ちは本物だと思わせるような描写もあり、不思議な読後感だった。

「自分は絶対にネットワークビジネスなんかに騙されないぞ」と思っている人ほど楽しめる内容だと思います。

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2022年11月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

勤務先は業績不振、将来への不安から主人公はマルチ商法に手を出す。
はじめはうまくいかないが有力な子会員を得たことで月収70万円を手にするようになる。しかしそれと引き換えに子会員から体の関係を求められる。枕営業。彼女がいなくなると途端に収入はダウン。体の関係があったと噂されグループにもいづらくなる。

せっかく足を洗ったのに借金苦から再びマルチに手を出す。マルチの借金をマルチで返済しようとする愚かさ。今度のグループの社長は一見善良なようで実はとんでもない悪党。自社製品のせいで健康被害が出ようが知ったことじゃない。

ラストはちょっと小説的にすぎるけれど中盤までの強引な勧誘によって周囲から人が離れていく様子は読み応えがあった。殺伐とした職場の描写は胃が痛くなりそう。

マルチの世界は狭い。ニューカルマの社長がウルトリアの石黒と裏で繋がっていたのは怖い。石黒と金村もグルだったのだろう。一度ハマった人間はリストに載って別のマルチに狙われる、そういうシステムがあるのかもしれない。

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2025年02月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

これも一気に読んでしまった。闇、、、
解説も面白かった。最後をハッピーエンドと見るか破滅の始まりとみるか。
私は闇だと思うし、、、依存症のように見えた。

主人公の妹との対比がすごかった。正当な道で自分の夢を目指した妹。をバカにしていてマルチにハマる兄。
そこは気づいたんだけど、タケシとの対比については解説を読むまで気づかなかった。世の中をよくしたい、何か社会の役に立ちたいという同じ思いのはずなのにベクトルがずれるとマルチ布教に。
そこでタケシと主人公の違いは、よく人を見ているかどうかというところではないかと思う。自分がよければいいというフィルターを通して見ていた主人公。親や他の人の状況を聞き取っていたタケシ。
身につまされる。

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2022年03月26日

Posted by ブクログ

ネタバレ

狭小邸宅に続き、2冊目。未来に希望が持てず、簡単に儲かり、自己承認欲求も満たせる上手い話に巻き込まれていく若者の様子が描かれている。興味深いのは、親友であり、議員として「真っ当な道を行く」タケシとの対比。ネットワークビジネスはその性質上、人を不幸にするものと認識されるが、「皆を幸せにする」という目的はタケシが描くそれと近似する。では何が正しく、何が間違っているのか。ネットワークビジネス=悪と簡単に判断できないところに気持ち悪さを残しつつ、故に自身の中の軸(≒善悪を判断する基準)なくしては、いつしか「こんなはずではなかった」自分になってしまうのだと思う。

「いいも悪いんもないんよ……世の中。腐ってんだからさ、根本から」(p.272)

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2022年11月07日

Posted by ブクログ

ネタバレ

サッと読める長さで坂道を転がり落ちていくようにネットワークビジネスにハマる疾走感が2回も味わえる素敵な小説
一回懲りたはずがもう一度ハマるとか同じ業界の中で人員がグルグルしてるとかその辺が怖いな〜と思うなどでした
ラスト搾取側に回るのがちょっと不自然だったかな?この主人公みたいな他人を通じて自己実現するタイプは永遠に利用される側のマインドに見えるし、ビジネスを立ち上げる側に変わるならそこに至った経緯を書いて欲しかった

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2022年06月08日

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