あらすじ
米中貿易戦争や米中ハイテク戦争の根幹には「中国製造2025」がある。トランプが怖れているのは、「中国製造2025」により中国がアメリカを追い抜くことである。中国は2015年5月に「中国製造(メイド・イン・チャイナ)2025」という国家戦略を発布し、2025年までにハイテク製品のキー・パーツ(半導体など)の70%を「メイド・イン・チャイナ」にして自給自足すると宣言。同時に有人宇宙飛行や月面探査プロジェクトなどの推進を盛り込んだ。また「暗号を制する者が世界を制する」と言われるように、「量子暗号」に力を注いでいる。中国は半導体と宇宙開発によって世界制覇を目指しているのだ。この現実を直視しなければ、米中関係も日中関係も見えてこない。中国国家戦略の正体とは何か。習近平の真の狙いとは何か。中国研究の第一人者が、人材と半導体および宇宙に焦点を当てながら分析し、中国の実態と野望を明らかにする。
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Posted by ブクログ
中国製造2025は2015年5月に中国が発布した国家戦略で、ハイテク製品のコア技術を獲得するとともに、宇宙開発等も推進しようというもの。この背景には、2012年の尖閣問題で、日本製品不買運動が持ち上がったときに、結局スマホなどメイドインチャイナのハイテク製品に日本製のキーパーツが使われており、それが反政府運動に繋がりかねなかったという状況があった。
新常態という概念も中国製造2025と関連づけられたものであり、成長率が多少低下したことはハイテクへの投資が優先されているから、と考えるべき。
中国の半導体メーカーは世界トップに登り詰めており、その原動力になっている人材を精華大学など世界トップクラスの大学から国内で賄えるようになっている。また、量子コンピュータ、量子暗号の分野では中国が先駆けて墨子号を実用化させている。
中国はアフリカ諸国との連携を深めており、米中関係で困った時の日本カードを使ってくるなど外交もしたたかに展開している。
簡単に一帯一路一空一天を実現させていいのかという筆者の問題意識には強く共感する。コロナ後の世界の動きを踏まえてどう中国関連の情勢を筆者が分析するかは気になる。
Posted by ブクログ
会社で回覧。
中国の中国製造2025の成り立ちを解説。
反日デモは反政府デモの表の姿でもある。
国家戦略の一端を知ることができた。
脅威に感じると共に、日本の国家戦略はどうなのか知りたい。
Posted by ブクログ
ブログで断片は読んでいたが、1冊の本としてまとまったものを読んでみると、著者の主張の説得力が増すように思う。
やはり中国人ネットワークは人材の宝庫だし、そこに強い決意と、豊富な資金とアサインメントが加わると、結果はついてくる。
幕末の我が国の拡大スケール版のようだ。
共産中国の下で進行しているのが、甚だ残念なのだが。
著者の推す対応策において、我が国がどう関与したらよいとしているのかが、今一つ見えてこない。
中共を助ける真似はするな、というのはわかるが、どうすれば...?
Posted by ブクログ
出張者のお土産。米中貿易摩擦でトーンダウンしているように見える「中国製造2025」。それがなぜ必要とされ、それがなぜ米国に恐れられるのか。
これを考えた習近平すごいし、それに気づいたトランプもすごいな。
果たして、「一帯一路一空一天」となるかどうか。
Posted by ブクログ
遠藤先生が、テレビの経済番組で中国を語る時の勢いや情熱が好きで、本書を手に取りました。
実はあまり時間がなく、本書は目次だけメモを使用かと思っていました。目次だけとはいえ、興味のあるページは本文を参照するわけですが、遠藤先生の語り口調と同じく筆の勢いも魅力的で、結局全部を一気に読んでしまいました。
中国事情に精通している方にとっては、目新しい情報ではないのかもしれませんが、日本国内で限られた情報のみで「中国」を見ている者にとっては、大変参考になりました。
量子暗号、量子コンピュータ、一対一路、BRICs+などについて書かれています。強い口調で中国を批判するかに見える遠藤先生ですが、「ホァーウェイ」にこだわるあたり、やはり中国愛が根っこにあるのかな、と思いました。
Posted by ブクログ
世界情勢は、毎年どころか日々刻々と変わる。
この本も2019年1月の上梓なのだが、既に若干の既視感が見える。一帯一路、中国製造2025が最高にパワーのあった当時としては、かなり深い分析のなされた良書と思う。
Posted by ブクログ
製造強国を目指すべく2015年に発表された「中国製造2025」について、半導体、量子通信衛星などの分野から詳述。今後、特に量子通信技術など一部の分野において世界を中国がリードすることで世界の覇権を握ろうとしている。
書評で気になり購入。よく理解していなかった中国製造2025の中身について、イメージを掴むことができたのはプラス。一方で時折話が脱線する点、加えて内容がかなり中国寄りな点が気になる。特に半導体については実際に記述通りなのか気になる部分があり、関連書籍を複数読み比べて自分なりに解を探る必要があるのではないか。
Posted by ブクログ
名前負けの本
長い割りに中身が薄かった
でも、中国の半導体はかなり進んでいて、日本のメディアで報じられている安かろう悪かろうではなくなっていることは、再確認した
Posted by ブクログ
【248冊目】【248冊目】著者の遠藤誉さんは中国研究者で、かつ、科学者。そして、中国で生まれ育ったということもあって、知識と主張が溢れ出てくる感じが伝わってくる。資料を何も見ないで書いてるんじゃないかと疑ってしまうぐらい笑。
中国製造2025(発表は2015年)で特に注意すべきなのは半導体、そして宇宙航空関係であるというのが本書の主な主張。とはいえ、習近平氏が2025を出す前から、特に半導体の重要性に中国は気付いていたようで、実態面ではスローガンが出来る前から徐々に歩を勧めていたらしい。特に電子機器等について「世界の工場」となった中国が、実は「世界の組立工場」に過ぎなかったと自覚してからの国ぐるみの注力はすごい。
ホァーウェイの躍進や嫦娥4号の月裏側着陸等近年目覚ましい躍進を遂げている中国だが、本書で最も印象に残ったのは「千人計画」(2008年)「万人計画」(2012年)に代表される中国の人材還流政策。これらの計画は、海外の優秀な人材を獲得するための計画だと思っていたが、実は、海外で学んだ自国民を還流させるための政策だったというのは私にとって新しい認識だった。
特に、シリコンバレーで働く中国人の言葉だという次の一節は、日本との対比で大変興味深い。
「国家はわれわれを知的資源の宝庫として位置づけ、大事にしてくれていますから、当然、私たちも祖国にもっと喜んでほしいと、誰もが全面的な協力体制に入っています。」
あと、2016年に打ち上げられた世界初の量子通信衛星「墨子号」についてもきちんと触れられていて好印象。