あらすじ
若田部昌澄が日銀副総裁就任直前に再評価、日本の新聞・出版が崩壊の危機に瀕する今、再び注目される技術革新によるメディアと人間の変貌の物語。
「日本人にかくも壮大かつ重厚なノンフィクションが書けるのかと驚嘆した。(中略)。市場経済の変化がメディアとジャーナリズムを否応なく変えていく半世紀余りをトップ経営者から現場記者まで、国際的、複眼的、重層的に描き出す」
(若田部昌澄 早稲田大学政治経済学部教授・当時 週刊ダイヤモンド 2017年9月30日号)
プロローグ
第1章 潰れかかった通信社
第2章 取引所とコンピュータ
第3章 黄金郷へ
第4章 国士
第5章 筆剣一如
第6章 同盟解体
第7章 強者連合
第8章 独裁と密告
第9章 退場する将軍
第10章 漂う通貨
第11章 ロイター・モニター
第12章 裏切られた革命
※本書の続編『勝負の分かれ目(下)』には、電子書籍版特典として著者がこれからのメディアの在り方について記した「そして『2050年のメディア』へ」を収録しています。
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Posted by ブクログ
「2050年のメディア」からの「勝負の分かれ目」。文庫版で読みましたが単行本は1999年の刊行なので21世紀が始まる前に新聞というメディアの地殻変動は激しく始まっていたことを今更ながらに認識しました。日本の新聞の発行部数は90年代にはピークアウトしてそれから今日まで減少の一途と聞いています。バブル崩壊、人口減少、デジタルの躍進、いろいろな理由を語る人はいますが、本書にあるのは新聞というビジネスをビジネスとして捉えられているかどうか、という新聞業界のインサイドストーリーです。政治ではなく経済へ、ペンではなくコンピューターへ、記事ではなく情報へ、国内ではなくグローバルへ、気づいている人と気づいていない人との大河小説。平家物語のような滅びの歌。しかし、本書が書かれて20年経ってもなお、新聞の壇ノ浦はまだ未だ来ていないと思っている人もまだまだいると思われます。「2050年のメディア」の縦糸と横糸はYahoo!と読売新聞社でしたが、本書ではロイターと時事通信社の交錯で物語は進んでいきます。その中で時事の長谷川才治の怨念のストーリーは濃厚で上巻の悪役としてものすごい存在感を放っていて、ぐったり。いざ、下巻へ。