あらすじ
美しいあの方のお傍に、恥じることなくいられるだけの強さが、ほしい――
平安中期、時の帝の寵愛を受ける中宮(平安時代の皇后)定子に仕えることになったなき子(清少納言)。
当時としては「年増」と呼ばれる年齢になってから才を買われて宮中に入ったなき子だが、定子に瞬く間に魅了される。
華やかな宮廷で卑屈に縮こまっていたなき子の心をほぐしてくれた、眩いほどに美しい年下の主人。
「女が学をつけても良いことは何もない」といわれていた時代、共に息苦しさを感じていた定子と清少納言は強い絆で結ばれていくが、定子の父の死によって栄華を誇った一族は瞬く間に凋落していく……。
定子の兄・伊周との身分違いの恋に苦しむなき子、そして紫式部との因縁。
悲運の時代を描いた哀切にして美しい平安絵巻に仮託した、女性の自立の物語。
「わたくしたちがずっとその心を忘れなければ、女が役に就ける御世がきっと来る。この悔しさを、のちの世の女は味わわなくてすむようになる」
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
これまでにも、何人もの作家のによる清少納言や中宮定子を読んできた。
自分の中ではやはり田辺聖子さんの『むかし・あけぼの』の存在が大きい。
そこでは歴史の流れ、政権の力関係が詳細に描かれていた。
田辺作品と比べると、こちらではぐっと登場人物を絞り込み、政争はごく簡単に迫害者道長の影を指すのみ。
行成も公任も斉信も登場しない。
敵と味方がくっきり書き分けられる。
紫式部や中宮彰子がこうもわかりやすい悪役になってしまうのには抵抗がある。
一条天皇の登場シーンも、ごくわずか。
その代わり、定子と清少納言の絆はもちろん、定子と妹の淑景舎の君、原子との仲睦まじさや、同僚の宰相の君との友情などが細やかに描かれる。
元夫、則光がなかなか格好良く登場するのも特徴的。
定子の物語は、どうしても最初に絶頂期が描かれ、どんどん寂しく、悲しくなっていく。
しかし、定子の死が「脚の間からの出血がいつまでも止まらず」と、生々しく書かれたのは他に知らない。
定子亡き後の登華殿の庭での、宰相の君とのラストシーンは悲しくも感動的だ。
Posted by ブクログ
宮木あや子の書く清少納言。
紫式部がすごい嫌な女に描かれていたけど、宮木あや子の書く紫式部も見てみたい。
しかし、呪詛ってホントに効くのかな……。
物語の中ではよく出てくるし、当時は効くものと信じられていたのだろうけど。
Posted by ブクログ
清少納言と中宮定子の絆は強し。
栄華なときは描かれど、その後の凋落をここまで追った作品は珍しいのではないか。
苦しんで悲しんで哀しんで。
そんな中でも主上と定子の仲睦まじさだけが輝いていて。
いや、それが輝いているからこそ、離される苦しみがあるのか。