【感想・ネタバレ】狼は眠らない 01のレビュー

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2019年04月18日

 迷宮の底で見つけた「黒穴」に入り、異世界から異世界へと転移した冒険者・レカンの冒険物語序章である。
 まさしくこの一巻は序章と言っていい内容だろう。
 異世界で最初に出会った領主家とのふれあいから始まり、街に向かう中での出会い、街で冒険者として体験した依頼、魔女との邂逅と師事、そしてゴルブル迷宮攻...続きを読む略。
 孤高の狼・レカンは貪欲にこの世界を体験している。この巻で言えば、この世界の魔法や薬学を体系的に学ぶ様などは典型的だろう。戦闘だけの物語ではない。
 また、彼が孤高の中でさまようだけの物語でもない。魔女が師事の前条件として提示した奉仕依頼の受諾における描写などは、彼の人柄をよく表している。意外に子供に好かれるタイプの狼さんである。
 そして戦闘におけるひりつくような展開。これがこの物語最大の魅力であるのは間違いないだろう。
 レカンは捨て鉢ではないが、根無し草の冒険者らしい死生観で命を懸けて迷宮を潜る。
 時に戦闘物でみられるような「まあ、どうせ主人公だから死ぬわけないし」といった白けからは程遠い、いまこの瞬間を生きている一人の冒険者が活写されている。

 まだまだ物語は序章であり、ここでの評価は星四つ半相当と少し抑えている。
 彼の生き様は魅力的だが、一方で人間関係などにおいてはまだ濃密とは言えず、胸がつまるような展開はここでは描かれていない。
 その意味で見ても、良くも悪くも序章であると言えるだろう。

 とはいえ、書籍化としては実に充実した内容で、外伝におけるエダの旅立ちに加え、間章として書かれた「シャドレスト家の花嫁」などは優れた加筆だろう。
 乾いた世界観によく寄り添ったイラストや、表紙の(おそらくは狼の引っ掻き傷を模した)加工など、かなりこだわりを持った書籍化である。
 ネット小説の書籍化としては特別ハイクオリティな類と言っていいと思う。

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