あらすじ
徹底した当事者取材! 発達障害の認知が広まるなかで増える「グレーゾーン」に迫る
近年、NHKが特集するなど話題になることが多い「大人の発達障害」。
「学生時代は大丈夫だったのに、社会に出たらミスばかりする」
「雑談が苦手で、周りから“空気が読めない人”と言われてしまう」
「衝動的にカッとなったり、一か所にジッとしていられない」
そういった悩みを抱えた人が今、「自分もそうかも?」と専門外来に殺到し、病院によっては数か月待ちという状況すら生まれています。
しかし、発達障害の“傾向”を指摘されながら、正式な“診断”には至らない「グレーゾーン」と呼ばれる人たちが相当数いるのをご存じでしょうか。彼らの多くは「クローズ就労(=会社には隠した状態)」で働き、「家族や友人にもなかなか理解してもらえない」という困難を抱えたまま暮らしています。そして、「自分もそうかも?」と思う人は、かなりの確率でこのグレーゾーンに当てはまる可能性があるのです。
「結局、どんな医者に診てもらったかで発達障害かどうかが決まっちゃう」(当事者談)
今では発達障害に関してさまざまなコンテンツが生まれていますが、グレーゾーン(成人)にフォーカスしたものは、ほぼありませんでした。そこで著者の姫野桂さんは「グレーゾーンを可視化する」という試みを始めます。当事者インタビューや当事者会への参加、精神科医、就労支援団体などへの取材を通じて、グレーゾーンとは何か?なぜこれほどまでに生きづらさを抱えるのか?を解き明かしていきます。
また、本書ではこれまで著者が見聞きした、発達障害の当事者やグレーゾーンの人が実践する「ライフハック」も収録しています。発達障害について知りたい人や、発達障害らしき症状に悩んでいる人にとって、少しでも生活向上のヒントになってくれたらうれしいです。
=============【著者プロフィール】=============
姫野 桂
フリーライター。1987年生まれ。宮崎市出身。日本女子大学文学部日本文学科卒。大学時代は出版社でアルバイトをし、編集業務を学ぶ。卒業後は一般企業に就職。25歳のときにライターに転身。現在は週刊誌やウェブなどで執筆中。専門は性、社会問題、生きづらさ。猫が好き過ぎて愛玩動物飼養管理士2級を取得。著書に『私たちは生きづらさを抱えている 発達障害じゃない人に伝えたい当事者の本音』(イースト・プレス)
特別協力/OMgray(オムグレイ)事務局
軽度の発達障害特性に悩む人の当事者会「ぐれ会! 」や「グレーゾーンのための問題解決シェア会」を運営する。同会が立ち上げたイベントにはこれまで400人以上が参加。代表のオム氏は支援機関などに呼ばれて講演活動も行う
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Posted by ブクログ
本書にも書いてある通り、最近書店でも「発達障害」関連の本がやたら目立つ。発達障害は最近になって注目され始めており、私も職場でいろいろと研修を受けたが、呼び方や対応も変遷してきており覚えきれない。発達障害についてもっと詳しく知りたいけど、どんな本が良いかわからない。
そんな中、鴻上尚史さんの「ほがらか人生相談」でこの本が紹介されていたので興味を持って読んでみました。発達障害の確定診断が出なくても、なんとなく生きづらさを抱えているグレーゾーンの当事者たちをルポし、具体的な解決方法をいくつか示している点がとても良い。いろいろな例が示されているので、発達障害ではない人が読んでも「あ、こういう面は私にもあるな」と共感でき、結局のところ、「基準」なんてものはなく、人はそれぞれ違うのだ、と腑に落ちる。
発達障害の傾向にあり、グレーゾーンの人たちは、その傾向そのものよりも、そこから波及する二次障害が深刻な場合が多い。失敗を繰り返し、小さい頃から怒られる経験ばかりを積み重ねて自己肯定感が低すぎたり、鬱や双極性障害を発症したりだ。その原因が人より極端に苦手なことがあるせいで、それを克服できさえすれば、またはそれを職場の人に理解してもらってフォローしてもらえさえすれば、解決できる場合もある、と考えたらかなり前向きになれる。
ところで最後にいろいろな人の体験談を読んでいて、おやおや、私も似ているぞ…と思ったのが、「どうしても人の顔と名前を覚えられない」という傾向。あと「スケジュール管理が苦手で人に迷惑をかけてしまう」。
私もこの傾向が最近顕著で、本当に困っている。週に2、3回顔を合わせて挨拶を交わすのに、どうしても名前が覚えられない人がいる。話すたびにスマホのメモや過去に一緒に撮った写真をめくって「今の方は○○さん…」と声に出して確認したりするのに、なぜか覚えられない。とても困っている。
あと、プライベートの予定と仕事の予定を脳の別の部分で理解しているらしく、何度もチェックしたつもりなのに、同じ日に予定を入れてしまうことが多々ある。電話でプライベートの約束を決めたその直後に、仕事の予定を同じ日の同じ時刻に入れてしまう、なんてことがある。自分がプライベート用と仕事用の2人いるとでも思っているのか?と自分に突っ込みたくなる。もしかして、これ、何かの障害だろうか?
本書には、自分の特性を分析して、社会でなんとか生きていく(仕事をしていく)ために、涙ぐましい努力をしている人たちもたくさん出てきた。自分を理解し、それに対処していくって、とても大事(そして意外に難しい)。
私の場合、障害ではなく老化現象か?と思うことも多いが、「若いころのようには○○できないから、こんな工夫をしよう」などと努力する必要があるな、などと思いました。
仕事の面でもとても参考になりました。
Posted by ブクログ
「発達障害の傾向がある」と診断されながら、健常者と発達障害者の中間で生きづらさを感じる当事者や専門医へのインタビューについてまとめた本。
グレーゾーン当事者同士のトーク会やインタビューでは、当事者が生きづらさを感じる場面について「あるある」と頷くことが多々あった。特に、発達障害傾向を会社や家族、知人に打ち明けることが出来ず、抱えこんでいる方が多く登場し、周囲の理解を得ることの難しさを感じた。
本書の特徴は、登場する医師や就労支援スタッフといった支援のスペシャリストまでもグレーゾーン当事者であることだ。生きづらさを感じている人に寄り添ってくれている。
結局のところ、発達障害の診断の有無は重要なことではなく、今生きづらさを感じていることへの認知と、その人なりの対処を工夫していくしかないというのが読み終えての結論だった。最後の章にまとめている当事者の対処法は些細なことだけど、だからこそ気軽に取り組める貴重な知見だった。
Posted by ブクログ
■著者
姫野 桂
フリーライター
発達障害当事者
LD強、ADHD,ASD傾向あり
この本はグレさん(グレーゾーン)の存在の可視化を目指している
■読者対象
自分は発達障害なのかな
とか、生きづらさを感じている人向け
グレーゾーンの集会の存在や、
グレーゾーンの方のライフハックをしることができる。
■メモ
本書は愛着障害に関しては触れられていない。
ADHDと愛着障害は症状が似ているので、ADHDの方は愛着障害について知ることもおすすめだと思う。
グレーゾーンの集会やライフハックを思い出したい場合本書を参照しなおしたい。