【感想・ネタバレ】言葉人形 ジェフリー・フォード短篇傑作選のレビュー

あらすじ

かつて、野良仕事に駆り出される子どもたちのために用意された架空の友人(イマジナリー・フレンド)、言葉人形。それはある恐ろしい出来事から廃れ、今ではこの小さな博物館にのみ名残を留めている――表題作ほか、大学都市の展望台で孤独に光の研究に励む科学者の実験台として連れてこられた少女の運命を綴る「理性の夢」、世界から見捨てられた者たちが身を寄せる幻影の王国が、王妃の死から儚く崩壊してゆく「レパラータ宮殿にて」など、世界幻想文学大賞、シャーリイ・ジャクスン賞、ネビュラ賞、アメリカ探偵作家クラブ賞など数々の賞の受賞歴を誇る、現代幻想小説の巨匠の真骨頂ともいうべき13篇を収録。【収録作】「創造」/「ファンタジー作家の助手」/「〈熱帯〉の一夜」/「光の巨匠」/「湖底の下で」/「私の分身の分身は私の分身ではありません」/「言葉人形」/「理性の夢」/「夢見る風」/「珊瑚の心臓(コーラル・ハート)」/「マンティコアの魔法」/「巨人国」/「レパラータ宮殿にて」/編訳者あとがき

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Posted by ブクログ

ネタバレ

ジェフリー・フォードの短編集その1。評判の良い「最後の三角形」が読みたくて、まずはこちらから。

非常に幻想味の強い作品が多く。ただ、それでも魅力的なストーリー展開の作品ばかり(いくつかは本当に訳がわからなくて、うーんていうのもあったけど。。。)。

以下、作品ごとの感想。

◯創造
木の枝や実で人形を作ると翌日にはいなくなっていた。生命を創造してしまったと考える少年の話。ラストの父との余韻が非常に良い。

◯ファンタジー作家の助手
有名なファンタジー作家の助手となった女の子の話。作家の妄想か、彼女の妄想か。本の世界が具現化する。終わってみれば、優しさに溢れた世界。

◯〈熱帯〉の一夜 ★おすすめ
昔自分を守ってくれていた二つ上の不良と、思い出深いバーで再開する。不良が歩んできた不思議な人生。冒頭からは全く想像できない意外な展開。かなりおすすめ。

◯光の巨匠
照明デザイナーの大御所(他に言い方わからない笑)にインタビューすることができた若い記者。幸運に感謝しつつも、聞かされた内容は摩訶不思議で。。。深掘りし始めると色々な発見があるのかもしれないが、結構難しい話。

◯湖底の下で
墓場の下に鍾乳洞を発見した少年少女の話だが、着地点は思った以上に情念が深い過去の悲劇に繋がっていて。合間合間に入る幻想的な風景も最後には全て繋がる。

◯私の分身の分身は私の分身ではありません
まずは題名よ笑。分身と一緒に分身の分身を倒そう、という話。展開は見え見えだけど、リンのキャラが良かった。

◯言葉人形
ある地域に伝わる言葉人形という儀式。全編に漂う不気味さ加減が絶妙。ちょっと難しい場面もあるが。

◯理性の夢
幻想的なSF作品。光の歩みを遅くする実験に人生をかけた研究者の話。意味不明な人体実験が怖いというより、おぞましい。

◯夢見る風 ★おすすめ
吹けば悪夢のように、色々なものが狂う風が止まる。皆がその風に怯えつつも、吹かなければ吹かないで不安が満ちる。想定外のラストが非常に良い。忘れ難い余韻。

◯珊瑚の心臓 ★おすすめ
まず珊瑚の心臓(コーラル・ハート)が剣の時点でカッコ良すぎる笑。剣を持つ戦士の冒険譚の一幕という体で、色々派生できそう。この短編だけでシリーズ化してほしい。

◯マンティコアの魔法
ある魔法使いとその弟子、そしておそらく最後のマンティコアの話。良い作品なのだが、良くも悪くも普通で、収録された作品の中では地味な方。

◯巨人国
ぶっちぎりで幻想味が強い作品。こういうものだと思って酩酊感を味わう作品なのだと思った。

◯レパラータ宮殿にて ★おすすめ
はぐれものたちが身を寄せる王国。王妃が死んで王が悲しみに沈み、王を助けんと魔法使いと呼ばれる者の助力を得るが。。。一瞬の輝きを描いた儚く美しい作品。

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2024年07月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ジェフリー・フォードの短編を読むのは初めてのはず(長編は『シャルビューク夫人の肖像』を読んだが例によって何も憶えていない)。訳者があとがきに書いているように《現実的なものから幻想的なものへ》と配列された作品のうち、後のほうの「珊瑚の心臓(コーラル・ハート)」や「巨人国」「レパラータ宮殿にて」などが面白かった。より奇想小説ふうの作品群からはエリック・マコーマックを思い出した。いずれにしても、物語は忘れても、特徴あるイメージがきれぎれのままおそらく長く私の頭に残ってときどきよみがえったりするだろう。一冊通して読んで、なんとなくこの著者らしい世界の感じはつかめたと思う。そのうえで、名高い長編三部作などは自分にはおそらく重すぎてしんどいだろうなという気がする。『シャルビューク夫人…』はどんなだったかしら、若くて気力体力のある時分に読んだから…

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2023年08月22日

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