【感想・ネタバレ】獅子吼のレビュー

あらすじ

稀代のストーリーテラーにして短篇の名手でもある浅田次郎の一球入魂の傑作短篇集。
時代に翻弄される名もなき人々の美しい魂を描いた、心ゆさぶる6篇。

「決して瞋るな。瞋れば命を失う」
父の訓えを守り、檻の中で運命を受け入れて暮らす彼が、太平洋戦争下の過酷に苦しむ人間たちを前に掟を破るとき――。

それぞれの哀切と尊厳が胸に迫る表題作ほか、「帰り道」「流離人(さすりびと)」「九泉閣へようこそ」「うきよご」「ブルー・ブルー・スカイ」を収録。

あの時、あの場所にいなければ降りかかってこなかったはずの過酷な運命に、彼らは勇気をもって立ち向かい、優しさをもって受け入れようとする――。
直球ど真ん中、華と涙の作品集です。

解説・吉川晃司

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Posted by ブクログ

ネタバレ

短編集であるのだが、表題作「獅子吼」「流離人」戦時中の話が刺さった。
「獅子吼」
動物園で飼われているライオンの心情が表される。動物の思いが中心となっているので意外な感じであったが、戦争に対する馬鹿馬鹿しさ、怒りが伝わってくる。
怒りの感情を滅す、という掟を死を前にして自らの矜持のため、対する人間のためだろうか破り吼える。
「恨み憎しみのかけらもない相手に、敵という名を付けて殺す戦争ではないか、その最中にある君が何をためらう」
人間を憐れむライオンの言葉が残る。

「流離人」
目的地を目指さず満州国を流浪する、桜井中佐。決して命令違反ではないと屁理屈のように言葉を返す。
この人もまた戦争を軍を馬鹿馬鹿しく感じている。それでも戦争からは逃げ切ろうと自ら迷子となり、沢村にもその道を薦める。
別れのとき、敬礼でなく帽子をとり頭を下げた中佐の思いは国の代わりに沢村に詫び、生き延びて欲しいという思いが切実と伝わる。そして死ぬなという最後の命令が終わりであって欲しい。

氏の戦時の物語は本当に戦争の愚かしさが伝わり考えさせられます。

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2023年09月07日

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