あらすじ
世界を飛び回っていたシーナが自宅に落ちつくことが多くなった。その理由は、なんと「孫」。本好きな長男、口が達者な長女、無鉄砲小僧の二男。ドタバタ騒がしい三匹のかいじゅうの成長ぶりを、基本的にダラシナイにやけ顔で見つめるシーナ。ぐんぐん新しいことを吸収する孫たちに対し、どんどんいろんなことを忘れていくじいじいは、ウロタエながらも大奮闘! 孫愛にあふれた「じじバカ」エッセイ。
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Posted by ブクログ
8月22日の読書:孫物語 椎名誠
カバー裏より
『世界を飛び回っていたシーナが自宅に落ち着くことが多くなった。その理由は、なんと「孫」。本好きな長男、口が達者な長女、無鉄砲小僧の二男。ドタバタ騒がしい三匹のかいじゅうの成長ぶりを、基本的にダラシナイにやけ顔で見つめるシーナ。ぐんぐん新しいことを吸収する孫たちに対し、どんどんいろんなことを忘れていくじいじいは、ウロタエながらも大奮闘!孫愛にあふれた「じじバカ」エッセイ。』
まさかシーナ君くんの「じじバカ」ぶりを読む日が来ようとは…。
ぬけぬけと「子どもより孫は可愛い」というシーナくん。
しかしシーナくんも早、70歳を過ぎているのだ。
複雑な気持ちで読み始めたが、やっぱり他人の孫と言えども子どもの成長は面白い。
孫に対して上からものを言うのではなく、ましてや媚びることもなく、孫たちの興味とシーナくんの好奇心が、自然に重なり合っているところがいい。
虫や植物が大好きで、大人しく一人で本を読むのが大好きで、妹や弟にとても優しい長男の波太郎くんとシーナくんとのやり取りは、これからの世の中をしなやかに生きていく子どもの伸びやかさと、それを目を細めて眺めるシーナくんの、緩やかな世代交代。
そして、この二人に交じって自分の世界をひらいていく次男・流くんの、日々真剣勝負な腕白ぶりがまた愉快。
男兄弟に挟まれた女の子は女王様になるらしい。
確かにうちも…。もごもご。
シーナくんのことを「おじいちゃん」ではなく「ラクダさん」と呼び、男は嫌いだからと私立の女子小学校に通う長女・小波ちゃんはマイペース、要するに自分の都合でシーナくんに係わってきたり、無視したり。
その辺もまた愉快。
北海道の余市にシーナくんの家があることは知っていたが、冬の山の中の一軒家を維持する難しさに、その家を手放そうと思った時、波太郎くんの「僕はあの山の上の家が好きなんだ。植物や虫がいっぱいいるし……」という一言で手放さないことを決意。
じいじいと孫の、男三人の夏休みは、羨ましいくらいに楽しそうだ。
そして椎名ファンの私の友達もきっと喜んでいるはず。
本当の豊かさとは”家族が揃う時間”にあること。その時間を持てることにあると気づくシーナくん。
そういう時間は存外短い。
だから今、このひと時が、猛烈に楽しく美しく愛おしいのだと思った。