【感想・ネタバレ】病気の9割は歩くだけで治るPART2 体と心の病に効く最強の治療法のレビュー

あらすじ

ベストセラー「病気の9割は歩くだけで治る」の続編が登場!

「病気の9割は歩くだけで治る」 が刊行されて3年経ちます。
医学会では、歩くということが病気の治癒に役立つということが注目され、この3年間に様々な研究がなされてきました。

そして歩くことによって病気が治るというエビデンスが、多く実証されました。
最新の科学では、歩くことによって、骨からホルモンが出るために、体の不調が治り、心も前向きになることが発見されています。
また、食事と歩くことを合わせることによって、より効果が高まることもわかってきました。

これらのことを踏まえて、歩くことによる病気治癒の新たな効果、さらに現代病とも呼ばれるうつ病や、心の病についての治療法を長尾和宏氏が解説します。

1章 「病気の9割は歩くだけで治る」エビデンスが続々出てきた
2章 実践編! 今日から歩こう
3章 歩行が自殺大国ニッポンを救う
4章 「本物の医療」を取り戻そう

1 歩くだけで病気が治った人が続出している
2 人が老いるには、3つの理由がある
3 歩行で若返るカギはホルモンバランスにあり!
4 遺伝子は歩行で変えられる
5 若さの味方「テストステロン」が増える
6 できそこないの男性ほど、歩行が大事
7 朝の歩行が睡眠の質を上げる
8 長寿は腸で決まる
9 骨から長寿ホルモンが出ていた!
10 痩せればすべて解決する
11 「フレイル」に気づいたときが、はじめどき
12 歩くことは全身の筋肉運動、関節運動だ
13 「1日万歩」ではなく、「10分×3回」歩行
14 めまい予防に効果的! 「階段」歩き
15 要介護者は室内歩行をしよう
16 「ながら歩き」には2種類ある
17 「インターバル速歩」のススメ
18 心が豊かになる「瞑想歩行」
19 膝・腰が不安な人、肥満の人におすすめ!「水中ウォーキング」
20 お金をかけるべきは「靴」
21 歩いていない時間をどう過ごすか
22 日本人はもともと「うつ気質」
23 もっとも有効な自殺対策は、休むことと歩くこと
24 定年後の男性が危ない!
25 元気のない男性を歩かせるには
26 薬を飲めば飲むほど病気になる
27 医療界全体が製薬マネーに汚染されている
28 生活習慣病は、歩行と食事だけ
29 医療は本来、療養アドバイザー
30 平穏死を望むなら、歩くことから
31 よく歩く人ほど、幸せに生き、幸せに死ねる

歩くだけで病気を治した人が続出!

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睡眠薬使い続けると脳が萎縮するらしい。不眠症とかも見逃されやすい潜在的貧血(フェリチン値不足)が関係ありそうなんだよな。鉄剤で不眠も治ったって声も聞くし。

長尾 和宏
昭和33(1958)年6月生まれ。香川県出身。趣味はゴルフと音楽。昭和59年東京医科大学卒業後、大阪大学第二内科に入局。昭和61年より 大阪大学病院第二内科勤務。平成3年より市立芦屋病院内科勤務。平成7年に、尼崎市に長尾クリニッックを開業、外来と在宅医療を両立。あえて「町医者」という言葉にこだわり、「町全体が私の病棟、自宅は世界最高の特別室」をモットーに、病院で1000人、在宅で1000人を看取ってきた。在宅医療のリーダー的存在、また、<日本尊厳死協会>副理事という立場から、高齢者の健康、終末期医療、尊厳死・平穏死について硬軟自在な論調で多くの提言を行っている。毎日綴るブログは医師部門ほぼ1位をキープ。有料メルマガまぐまぐ!「痛くない死に方」では、読者からのあらゆる死の質問に相談するコーナーを設け、好評を得ている。ほか、多くの媒体に連載を抱え、『平穏死10の条件』『抗がん剤10のやめどき』『薬のやめどき』『痛くない死に方』『親の老いを受け入れる』など、ベストセラー書籍多数。


一方で、必要だけれど良い効果だけではないホルモンもあります。その一つが、血糖値を下げるホルモンとして有名な「インスリン」。膵臓のランゲルハンス島というところでつくられるホルモンで、糖尿病の世界では血糖値を下げてくれるヒーローとして知られています。  ところが、アンチエイジングの世界では、「良い奴でもあり、悪い奴でもある」という評価です。なぜなら、インスリンは〝太らせホルモン〟でもあるから。

社会だって、良い人間もいれば悪い人間もいて、そのバランスが大事。悪い人間よりも良い人間が多くて、治安が良ければ、住みやすい町になります。  ところが今の医学は、臓器別の縦割りになり過ぎて全体を見る視点を忘れています。たとえば、認知症を〝アセチルコリン欠乏症〟だけと捉えて、薬でアセチルコリンを増やせば増やすほど良くなると考える、など。これは極めて乱暴なやり方だと思います。

ホルモンも「バランス良く」がポイントで、バランスを整えるのにいちばん良いのが歩行なのです。ウォーキングなどの適度な運動は、若返りホルモンのDHEA、やる気ホルモンのテストステロン、長寿ホルモンのメラトニン、幸せホルモンのセロトニンなどを増やしてくれることがわかっています。  特に、若返りホルモンであり、いろいろなホルモンの材料となるDHEAを増やすには、軽い負荷がかかる程度の運動で下半身の筋肉を動かすことが効果的といわれています。だから、ウォーキングはぴったりなのです。  その一方で、 ウォーキングでリラックスすれば、ストレスホルモン・コルチゾールの出番は減ります。 ただし、ハードな運動になると、逆にコルチゾールの分泌を増やすことに。だから、心地よいと感じる程度の運動──もし走るにしてもスロージョギングとか──がおすすめです。  また、歩くことで糖の分解が進むので、インスリンの出番も減る。もっと言えば、歩く習慣を身につけて内臓脂肪が減れば、脂肪細胞から善玉ホルモン・アディポネクチンの分泌が増えます。まさに「良いホルモンを増やして悪いホルモンを減らす」、一石二鳥の効果を得られるのが、歩行なのです。

この遺伝子のスイッチのオンオフは後天的な努力で変えられます。そして、後天的な努力とは何かといったら、いちばん効率的でもっとも普遍性があるのが、やっぱり歩くことなのです。

テロメアを伸ばす方法としてわかっているのが、運動です。それもハードなトレーニングではなく、軽めの有酸素運動が効果的。テロメアという観点からも、やっぱり歩くことが有効なのです。  テロメア研究でノーベル生理学・医学賞を受賞したエリザベス・ブラックバーンさんも、著書『テロメア・エフェクト』(エリッサ・エペルさんとの共著)の中で、「テロメアの健康を保ちたければ、運動をすること」「中程度の運動で体を鍛えるのが、テロメアに良いのは明らか」と書いています。  ある研究では、中程度の有酸素運動を 45 分間、週3回ペースで半年続けてもらったところ、テロメラーゼの値は2倍になったそうです。

さらに、 ● 運動をする人のテロメアは、しない人に比べて長い ● 座ってばかりいる人のテロメアは、少しでも運動をする人に比べて短い といったことが、いろいろな研究結果から共通してわかっています。  逆に、テロメアを短くすると指摘されているのが、ストレスです。心理的なストレスを受けやすい人、心配性の人は、総じてテロメアが短い。 「あー、私や……」と、またもや心配してしまった方、安心してください。そういう人はなおさら、歩くことが大事。体を動かすことは、ストレスによってテロメアが蝕まれるのを緩和してくれます。

遺伝子がまったく同じ双子でも、同じように老化が進むわけではありません。子どものころはそっくりでも、大人になって、環境や生活習慣に違いが出るにつれ、見た目にも体にも違いが出てきます。実際、 双子同士でも、体をよく動かすほうは、あまり動かさないほうに比べてテロメアが長い ことがわかっています。

男性も女性も、男性ホルモン(テストステロンなど)も女性ホルモン(エストロゲンなど)も両方持っていて、その割合が違うだけ。若い女性のテストステロンの量は、一般的に男性の3分の1程度といわれています。ただ、個人差があるので、なかには男性よりもテストステロンが多い女性も。女性社長や政治家など、社会でバリバリ活躍している女性は、総じてテストステロン値が高い傾向があります。  男性の場合、テストステロンは年を取るにつれて徐々に減っていくもの。一方で、女性は閉経後に増えます。女性ホルモンが減少する一方で、実は男性ホルモンが自然と増えてくるのです。だから、女性は長生きなのかもしれません。

ただし、ここでも欠かせないのが歩くことです。検査でテストステロン値が下がっていることがわかっても、すぐに注射で補充するわけではありません。まずは、日常的に歩いてもらう。 歩くだけでテストステロンは増えます。

 ところが、日本は睡眠薬大国です。 20 人に1人が睡眠薬を使っています。  私のクリニックにも、睡眠薬を求めて来られる患者さんがたくさんいます。多いのが、マイスリーやハルシオン、レンドルミンといった「ベンゾジアゼピン系」(以下、ベンゾ系)と呼ばれる睡眠薬。広く使われていますが、依存症になりやすく、薬を手放せない、薬がないと眠れない状態に陥りやすいという欠点があります。なおかつ、使い続けると認知症にもなりやすい。

脳内の神経細胞は、何歳になっても新しいものが生まれることがわかってきたのですが、ベンゾ系睡眠薬を長年使っていると、この神経新生を邪魔してしまうようです。ふだん使われない神経細胞(神経細胞の予備軍)にも機能的なダメージを与えます。実際、長年ベンゾ系睡眠薬を飲んでいる人の脳の画像を調べると、たしかに委縮しているのです。  睡眠薬を使い続けているうちに、脳が萎縮していく──。

ぞっとする話です。今すぐに手放したくなるでしょう。ただし、すでに依存症ができている場合、 急に服用を止めれば、「反跳性不眠」 といって、強い不眠症に襲われます。だから、薬の種類や量を少しずつ減らしていったり、依存ができにくい薬に置きかえながら減らしていったり、主治医とよく相談しながら根気よく減薬していってください。

これは、「ノルディックウォーク」 または「ポールウォーク」 といいます。正確には、両者は別物。ポールの形や使い方、そもそもの目的が違います。ノルディックウォークは、もともとクロスカントリー選手の夏場のトレーニング用に開発されたものなので、どちらかといえば体力のある人向け。高齢者や膝などに不安がある人におすすめなのは、ポールウォークのほうです。  このポールウォーク、何が良いのかといえば、両手にポールを持って歩くので安定感がある上、より上半身を使うのです。よく傘を杖代わりにして歩いているお年寄りを見かけますが、「どうせだったらもう一本貸しましょうか。そのほうが、バランスが良くなりますよ」と、つい声をかけたくなります。半分冗談、半分本気です。

 一度めまいを起こすと、怖くなってなおさら歩かなくなる方もおられますが、それでは悪循環に陥ります。めまいが心配な人ほど、歩くことを習慣にしてほしい。ちなみに、毎日歩いている人で「めまいがする」とおっしゃる方にはほとんど会った記憶がありません。

信州大学大学院医学系研究科の能勢博先生らの研究では、4千人を対象に、3分間の速歩きと3分間のゆっくり歩きを5~ 10 セット行う「インターバル速歩トレーニング」を週に4日以上、5カ月間行ってもらったところ、次のような結果が出たそうです。 ・体力が最大 20%向上 ・生活習慣病の症状は 20%改善 ・うつ症状と膝関節痛の症状はそれぞれ 50%改善 ・医療費は 20%抑制

 能勢先生によると、 15 分一気に速歩きをするよりも、速歩きとゆっくり歩きを交互に何度か行い、計 30 分歩くほうが、継続率は飛躍的に高まったそうです。それは、きつ過ぎないことと、緩急があって飽きないことが要因ではないでしょうか。  このインターバル速歩は、テロメア研究で有名なエリザベス・ブラックバーンさんも著書『テロメア・エフェクト』 の中で推奨しています。「鼓動が激しくなるような短時間の強い運動」と「回復期」を交互に繰り返すインターバルトレーニングを行ったところ、テロメアを修復する酵素であるテロメラーゼが2倍ほど増えたそうです。  より効率的に、より健康効果を高めて歩きたい方は、ぜひ「速歩き+ゆっくり歩き」にチャレンジしてください。

京都に「哲学の道」があります。哲学者の西田幾多郎さんが思索にふけったといわれる道です。歩きながら考えたほうがひらめくということを、きっとご存じだったのでしょう。  私自身も、考え事があるときには歩くようにしています。本を出すたびに「よくそんなに書くことがあるね」なんて訝しげに言われますが、本の内容を考えるのも歩きながら。歩きながら頭の中でひらめいたことを、家やクリニックに戻ってパソコンに向かって打っています。ただ、歩いているときには次から次へバブルのようにアイデアが出たはずなのに、止まったらすっかり忘れちゃっている、ということも残念ながらありますが……。

この仏教でいうところの「空」も、デフォルト・モード・ネットワークやゾーンと同じことでしょう。お坊さんの修行の一つに「歩行禅」 というものがあるそうです。お経を唱えながら、千日間、比叡山の峰や谷を歩く千日回峰行を成し遂げられた塩沼亮潤さんは、ご著書の中で、次の3つのステップで歩行禅を紹介されています。

私は、「歩かせていただきありがとうございます」 と感謝しながら歩くといいのではないか、と思います。歩けることは当たり前ではありません。生まれつき足に障害のある人、事故で足を失った人など、歩けない人もたくさんおられる。歩けること自体、とても幸せなことです。それに、歩くことで空の世界、デフォルト・モード・ネットワークに入れると、ひらめきがあるかもしれません。そう考えると、歩くことは神様からのギフトのように思えてきます。そうした感謝の気持ち、謙虚な気持ちを持って歩くことができれば、健康だけでなく、人間関係も仕事も上手くいくのではないでしょうか。

逆に、胸を開いて肩甲骨を寄せると、テストステロンが増えるのだそうです。理由はわかっていませんが、ホルモンという観点からも姿勢は大事なようです。

日本人というのはもともと、うつになりやすい民族といわれています。  秩序やルールに忠実で、献身的で、頼まれると「ノー」と言えず、まじめで仕事熱心で責任感が強い──。こうした性格のことを「メランコリー親和型」 と呼び、うつになりやすい性格として知られています。まさに、「ザ・日本人」の性格です。  良く言えば「まじめで几帳面」、悪く言えば「うつ気質」。だから、もともと自殺しやすい民族なのです。  そもそも、ハラキリの文化ですよね。失敗したら責任を取って切腹する。そういう昔からの文化がある上、欧米諸国に比べれば、自殺に寛容です。キリスト教文化圏では、自分で自分の命を絶つことは決して許されません。神に対する重大な罪であり、地獄に落ちる、最悪の死に方です。自殺が許されないから、オランダ、ルクセンブルク、ベルギーでは、「Physician-assisted suicide」といって、医者のほう助による死、つまり安楽死が認められています。

でも、自殺はやっぱり良くありません。なぜ良くないのかといえば、一つには、負の連鎖があるから。私自身も父親を突然、自殺で亡くしたのでわかるのですが、子孫はとても傷つきます。自分たちもいずれ自殺するんじゃないか、と思ってしまうのです。

 よく有名人が急性心不全で突然死したときに、「あの人は自殺だったんじゃないか」とささやかれますよね。それは、自殺には負のイメージがつきまとうからでしょう。それも、亡くなったその人自身というよりも、残された人たちに負のイメージを与える。本人は死んでラクになるかもしれませんが、残された人たちには大きなトラウマとなり、PTSD(心的外傷後ストレス障害)を起こします。だから、自殺は良くない。  それに、もったいないじゃないですか。せっかくこの世に生まれて、神様が決めた自然な寿命を迎えるまでにはまだ時間があるのに、自ら終わりにしてしまうのは、とてももったいない。ましてや人口減少社会のなかで、自ら命を絶たせてしまうなんて、社会にとっても「もったいない」の一言に尽きます。

「うつ」というのは、ある種の防御反応です。仕事なり、人間関係なり、ストレスのもととなっているものから逃れるために、脳が拒否をしている。いわば、うつモードに入って、脳がストライキを起こしているような状態です。  たとえば、労働時間が長くて、月の残業時間が 80 時間、あるいは100時間を超えれば、うつになって当たり前。ならないほうがおかしいくらいでしょう。100時間を超える残業を続けていてもうつにならない人はいますが、そういう人に限って、突然、命を絶ちやすい。まわりは「え? あの人が?」と驚きますが、「うつだ」と自覚があるほうが、まだ安心なのです。  自殺も、現実から逃れるための発作的な行動なのでしょう。自殺したくて自殺する人は、あまりいないように感じます。ただ、目の前の現実から逃げ出したいだけ。

うつからくる自殺を防ぐには、脳内ホルモンのバランスを変えてあげることが、もっとも効果的です。そのいちばん手っ取り早い方法が、歩くことです。  1章で、睡眠ホルモン「メラトニン」の話に関連して、「不眠には朝の習慣が大事だ」と書きました。朝起きたらカーテンを開けて光を浴び、できれば、朝の散歩に出かける。この朝の習慣は、不眠の改善だけでなく、自殺予防という意味もあります。

死にたくなったら、ハワイに行け!

もう一つ、うつ病や自殺予防に効果的なのが、「転地療法」です。環境を変えるということ。自殺は、寒いところ、日照時間が短いところのほうが多いので、暖かくて太陽の光をたくさん浴びられるところがいいでしょう。ハワイなんて、まさに最適だと思います。

以前に、倉敷市の伊丹仁朗先生が、末期がんの患者さんたちと一緒に、ヨーロッパアルプスのモンブランを登頂したり、富士山登山を行ったことが話題になりました。これは、「生きがい療法」と呼ばれ、延命効果が認められています。

うつ病は、男性よりも女性に多いのですが、自殺者が多いのは男性のほうです。 前出「自殺者の推移(自殺統計)」のグラフをもう一度、見てください。どの年も、男性のほうが2倍ほど自殺者数が多いことがわかります。人口 10 万人あたりの自殺者数も、男女合わせた平均は、2017年現在で 16・8人ですが、実は男性は 24・0人、女性は 10・0人です。

実は医者も、自殺の多い職業です。私のまわりでも、何人か亡くなってしまいました。ほとんどが、過重労働からうつ病を発症し、自殺に至っています。今、働き方改革が行われていますが、その対象に医者は入っていません。 「医者は労働者なのか」という議論があり、日本医師会長が「医師が労働者なのかと言われると違和感がある」と発言したことが話題にもなりましたが、現状、医者は労働者というくくりには入っていません。だから、ある面では「先生」と敬われる一方、労働基準法で守られていないので、自殺もしやすい。

自殺大国の日本だからこそ、歩くことをもっと国民運動にしてほしいと思います。働き方改革で、時間外労働の上限を月 45 時間、年360時間にして過重労働をなくすことももちろん大切ですが、それだけでは不十分です。同時に、歩くことも啓発して欲しい。

いちばん良いのは、会社単位でたとえばハイキングに行くなど、歩くイベントを定期的に行うことです。昔は、運動会やソフトボール大会、ボウリング大会などを行う会社が多くありました。だんだん忙しくなってこうしたイベントはすたれていきましたが、ここ数年、社内運動会を開催する企業が少し増えているそうです。狙いは、コミュニケーションの活性化だそうですが、会社を挙げて体を動かす日をつくることは、うつ予防、自殺予防にも良いと思います。

生活保護に対して日本では偏見が根強くありますが、実は、諸外国に比べて日本の生活保護受給率は圧倒的に低い。生活保護を利用する資格のある人のうち、2割弱しか利用していません。日本人特有の謙虚さ、責任感の強さなのかもしれませんが、それは「うつ気質」と背中合わせです。「本当に困ったときには生活保護に頼ればええ」と、ケ・セラセラの心を持ちましょう。

私は常々、 男性も女性も孤独死対策に近所のスナックを活用したらいいんじゃないかと思っています。スナックは男性が一人でふらりと訪れられる貴重な場所。そこでママさんとの会話を楽しむのもいいし、気の合う友人が見つかるかもしれない。ママさんが中心となって、日帰りバスツアーやバーベキューなどを定期的に行っているスナックもあります。

しかし、薬を飲めば飲むほど病気になる。これは真実です。  薬を5、6種類以上飲むことを「多剤併用(ポリファーマシー)」といいます。その怖さについては、高齢者の医学・医療を研究・実践する「日本老年医学会」も、「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン」のなかで指摘しています。

なぜ、こんなにも多くの薬を飲むことになってしまうのか。一つには、医療が専門分化しすぎているからです。お年寄りは、腰が痛い、おしっこの出が悪い、血圧が高い……など、多くの持病があります。その悩み事によって整形外科、泌尿器科、循環器科……と、たくさんの診療科にかかるので、薬が増える。  胃炎と逆流性食道炎、高血圧症というすべて内科の病気であっても、「消化器内科」「循環器内科」「神経内科」と3つの科に分かれます。内科のなかだけでも、かなり細分化されているのです。

これ、お金の問題で薬をやめたらかえって良くなった、という笑い話ですが、よくよく考えると笑えません。かなり深刻な話です。そもそも必要のない薬を飲んでいた(飲まされていた)わけです。人間の尊厳とは何なのか、高齢者医療とは何なのかという本質的なテーマが含まれているのではないでしょうか。

なぜ、薬が増えるのか。もう一つの理由は、製薬会社が医療を主導しているからです。医療界は、製薬企業から多額の資金提供を受けています。研究費にしても、国からも多少は補助金や助成金を受けていますが、国はお金がないのでほんの少ししか出ません。片や製薬企業は儲かっているので、医局への研究費として、あるいは、影響力の大きな医師個人への講演や原稿執筆の謝礼として、莫大な額の資金提供を行っています。

 薬を出しさえすれば、定期的に薬を取りに来てくれる。逆に薬を出さなければ〝リピーター客〟を一人失う。だから、わかっていても、商売のためについつい気軽に薬を出してしまうのです。言葉は悪いですが、「薬で餌付け」するようなもの。

病院に来られる患者さんは、総じて薬が好きです。しかも、医者からもらう薬が好き。日本ほど、お年寄りに多くの薬を出している国はありません。みんな、たくさんの薬を飲むことに慣れっこになってしまっています。それは非常に怖いこと。

薬漬けの医療に慣れた医者は、その習慣を変えることができません。薬を出すことが絶対的に善だと信じ込んでいるからです。どこか信仰のようなもの。

歩くこととの関係でいえば、お酒を飲み過ぎている人、糖質を摂り過ぎている人は、歩くと、心が満たされて、お酒や糖質(特に甘いもの)への執着がなくなります。お酒にしても甘いものにしても、2通りの飲み方、食べ方があると思うのです。一つは「美味しいから飲む(食べる)」こと、もう一つは「満たされないから飲む(食べる)」、いわば、やけ酒、やけ食いです。歩くことで脳内が前向きホルモンで満たされれば、やけ酒、やけ食いの分はなくなるでしょう。

たとえばゴルフ場に行くと、夏場でも炎天下で、 70 代、 80 代の男性が朝早くからコースに出ています。元気だからゴルフ場にいるのか、ゴルフ場にいるから元気なのかは定かではありませんが、ゴルフはよく歩くスポーツです。1ラウンドを回るのに、だいたい 10 キロほど歩きます。カートを使っても、その半分は歩きます。  よく歩くから、やる気ホルモンのテストステロンも、長寿ホルモンのメラトニン、アディポネクチン、幸せホルモンのセロトニンもたくさん出て、元気なのでしょう。だから、「ゴルフ場にいるから元気」なのだろうと、私は思います。  とはいえ、年配の人が多いので、たまに突然来なくなる人がいて、1カ月ほど経ったころに「亡くなった」という話を耳にします。でも、亡くなる1カ月前までゴルフ場に来ていたということは、まさにピンピンコロリではないでしょうか。  ゴルフ場通いをしている人というのはよく歩く人だと思うので、やっぱりそういう人はピンピンコロリタイプが多い。逆に、歩く習慣のない人ほど、メタボ、うつから始まり、体のあちこちが悪くなり、透析が必要になったり、胃ろうになったり、後手に回ってしまうことが多いように感じます。

㉛ よく歩く人ほど、幸せに生き、幸せに死ねる

この本を書いているさなか、私のクリニックの外来にかかっていた2人の男性がご自宅で亡くなっていた、と連絡が入りました。いわゆる孤独死です。お二人ともまだ 60 代と若かったのですが、お酒が好きで、歩くというイメージとはほど遠い方々でした。だから、「孤独死していました」と連絡を受けても、正直なところ、驚きはしませんでした。  私の経験上、 歩かない人というのは、孤独死しやすい。 死ぬときは誰しも一人なので、孤独死は寂しいことでも悪いわけでもありません。どんなに大人数のなかにいようと、家族に囲まれていようと、死ぬときは一人。

ところで、「年齢同一性障害」 という言葉を聞いたことはありますか? 性同一性障害というのは、「体は男性だけれど、心は女性」というように体と心の性が一致していないこと。年齢同一性障害は、実年齢と気持ちの年齢が一致していないことです。たとえば、 80 歳なのに、気持ちは 30 歳とか。「障害」というのは冗談で、むしろハッピーなことですよね。私もその一人になりたいと思っています。

 私が書いた「歩く本」は本書で4冊目になります。第1弾の『病気の9割は歩くだけで治る!』がベストセラーになり、その後『認知症は歩くだけで良くなる』、そして『歩き方で人生が変わる』が出て多くの人に読んでいただきました。3冊の本が出る間に歩行に関するエビデンスが世界中から続々と発信され、当初の目論見どおり、歩行が国民運動になりつつあることをとても嬉しく思います。

多くの高齢者はピンピンコロリ(PPK)が理想だとおっしゃいます。要介護や寝たきり期間はできるだけ短く、最期は「平穏死」ということでしょう。しかし漠然とそう願うだけでは決して叶いません。私は 35 年間のさまざまな臨床経験から、「歩行」こそがPPKの土台であると確信しています。もう一つは「バランスのとれた食事」ですが、これについては他書に譲ります。本書を手に取っていただいた方はどうか、「今」から、たった5分間でいいから歩いてみてください。歩くという行為がどれだけすごいことなのか、どれだけの快楽であるのかに気がついていただけたら幸いです。

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2024年03月21日

Posted by ブクログ

〈本から〉
老化の原因
① 細胞の酸化
② 細胞の糖化
③ ホルモンの変化

歩行で若返るカギはホルモンバランスにあり!

若返りホルモン、長寿ホルモン、やる気ホルモン、幸せホルモンを増やし、
肥満ホルモン、ストレスホルモンを減らす最良の方法が歩くこと。

老化と寿命を左右する「テロメア」。すとで縮み、運動で伸びる。運命は後天的な努力で変えられる。

男性の染色体はふぞろい。しかもY染色体は年々短くなっている。生まれながらにして出来損ないの男性こそ、歩かないでどうする⁉︎。

3分さっさと歩いたら、3分ゆっくり。交互に繰り返すインターバル速歩で病気をはねのけ、健康寿命を伸ばそう。

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2022年07月26日

Posted by ブクログ

歩くことは全身の筋肉運動であり関節運動、ストレッチ体操にもなっている。階段昇降(スクワットの効果)、インターバル速歩、「靴」にお金を。座ってるときは、座りながらも身体を動かすことを意識。長尾和宏 著「病気の9割は歩くだけで治る!PART2」2018.12発行。歩かない人が病気になり、薬を飲めば飲むほど更に病気になる。(歩くことで病気が治ったら医者や製薬企業が困る)患者が薬漬け医療から脱却、歩行と食事の見直しを。

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2019年08月02日

Posted by ブクログ

ネタバレ

本書はPART2であり、同名のPART1となる書籍が、2015年に発刊されている。その時にもベストセラーとなったようだが未読である。しかし、本書から読み始めても全く問題ない。

本書では最初に歩くことによる効用を5点あげている。
①抗酸化物質が増える
②ホルモンバランスをよくする
③テロメアが伸びる
④テストステロンが増える
⑤腸内環境が良くなる

これだけでは少々言葉が難しくてピンとこないが、読み進めていけば、一つひとつ丁寧に説明されている。

著者は、老化の原因を3点があげている。
・細胞の酸化(活性酸素による)
・細胞の糖化(糖分取りすぎによる)
・ホルモンバランスの崩れ

そうすると、歩くことの効用の①から、歩くことは「老化を防ぐ」ということがわかる、同じく効用の②からもホルモンバランスを整え、これまた老化防止に役立つということだ。

著者は、健康に関係する主なホルモンを紹介してくれている。
〇DHEA(ホルモンの母、若返りホルモン)
・アディポネクチン(善玉ホルモン、長寿ホルモン)
〇テストステロン(男性ホルモン、やる気ホルモン)
〇メラトニン(睡眠ホルモン、長寿ホルモン)
〇セロトニン(幸せホルモン)
・オキシトン(愛情ホルモン)
●インスリン(肥満ホルモン)
●コルチゾール(ストレスホルモン)

歩くことで、健康を増進する〇印のホルモンが増加し、逆に健康を阻害する●印のホルモンが減少すると説明されており、これがホルモンバランスをよくするということだ。

歩く効用の④テストステロンが増えるというのは、上記にあるように「やる気」ホルモンの分泌を促進するということである。テストステロンは「男性ホルモン」と呼ばれていても、女性の体内にも存在する。やる気の源だ。

そして、歩く効用の④にあるテロメアとは、染色体の端っこについているもので、寿命の長短に影響するものらしい。これが長いと長生き、短いと短命ということだ。そして、歩くと、このテロメアが伸びるというのである。つまり歩くと染色体レベルで長生き度がアップするということだ。

そして、歩く効用の⑤腸内環境、すなわち腸内フローラのバランスを改善し、健康状態もよく長寿化につなげてくれるというのである。

歩く効用に次いで、歩き方のアドバイスもあった。量より質だそうだ。つまり「歩数」より「歩く姿勢」。
1日1万歩でなくても、10分✖3回を推奨している。
姿勢のポイントもメモしておこう。
・背筋を伸ばす
・しっかり腕を振る
・なるべく大股
・肛門しめる
・下腹部に力を入れる

歩いているときに「よいアイデアが浮かぶというのを、デフォルト・モード・ネットワークに関連付けて説明しているのも面白かった。

後半は、「歩くことによる健康改善」訴える医師として、薬の弊害を主張していた。「処方する阿呆に、飲む阿呆」とは名言である。ただし、「飲まにゃ、損損」とはならないので要注意。

薬が医者の収入源であったり、製薬会社の宣伝を医師がして医者が儲けるというコンビネーションが、無用な薬を増やしており、それが医療保険財政を圧迫しているという意見も痛烈であった。

薬を飲むより、まず歩いて健康を取り戻せ。
実証実験の価値はありそうである。

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2020年02月09日

Posted by ブクログ

 歩くことが絶対ではないでしょう。

 ただ、歩くことは人として生きていく中で必要な事だという事は間違いないと思う。

 人が病にかかるという事が自然界の常識と考えれるのであれば、その病は自然の力で治癒しなければおかしいのではないか。

 いかに、今の医療が間違っているかがこの本を通じて良く分かる。

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2019年12月24日

Posted by ブクログ

男性ホルモンの代表格テストステロンは、筋肉や骨を強くし、やる気や記憶力、精力を高めてくれる。また、テストステロン値の低い男性は心筋梗塞の発症率が4倍も高く、うつにもなりやすい。このとてつもなく体にいいテストステロンは、なんと歩くだけで増やすことができる。みんながこぞって歩き、国民全体のテストステロン値が高まれば社会性も高まり国全体に活気が溢れ強い国家の礎ともなる。国家社会に貢献すべく今日もしっかり歩きたい。

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2019年02月17日

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