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予防接種その二
一部ご紹介します。
・おたふくかぜの病原体はムンプスウイルス。成人では睾丸炎や卵巣炎を、小児では髄膜炎や難聴を惹き起こすことがある。
・麻疹は感染後、数年してから脳炎を発症することがある。
・風疹ウイルスに妊娠中の女性が感染したら、胎児が先天性風疹症候群になる可能性がある。
・麻疹も風疹も発症したら治療法はない。だが、2回の予防接種を受ければ、ほぼ100%の免疫がつく。
・ワクチン接種で期待されるのは、免疫反応を起こし、感染症を防ぐ働きである。
・これに対し、望ましくない反応もある。副反応である(ほかの医薬品では副作用。どちらも同じside effect)
・免疫がつく=人の体の中で病原体への防御機構ができる→炎症反応発生=熱が出たり、注射したところが腫れる等々=副反応。
・副反応は主反応(期待された効果)の別側面。どんな医薬品も、人の体に作用する限り、副反応や副作用が全くないということはあり得ない。
・副反応のほかに有害事象がある。薬物投与後に生じた望ましくない事象全て。科学的な因果関係は問われない。例えば、ワクチン接種後に転んでけがをしたとする。これがワクチンのせいなのか、たまたまなのかはわからない。
・特に多感な時期では、心の葛藤やストレスが引き金になって、痙攣のような動きを見せる心因性非てんかん発作や、原因不明の歩行困難など、心因性と思われる症状が珍しくない。
・有害事象で苦しんでいる人たちがいるのは事実。その人たちが回復することは重要。しかし、ワクチンに疑問を投げかける人々の声や、有害事象ばかり大々的に取り上げる報道は、その病で亡くなった人たちの遺族や重い後遺症を背負った人たち、そして、その治療に向き合ってきた医療従事者たちの声をかき消してしまうことが多々ある。予防接種で防ぐことができる感染症は、ほんのわずか。自然は恐ろしいものでもあるのだ。
・注射に嫌なイメージがあるのは子供も大人も変わらない。だからこそ、「痛いけれど体を守るために必要なこと」だということを伝え、終わったら思いきり褒めてやるとよいのである。
・予防接種は義務ではない。自分や家族、周囲の人たちを守るための権利なのだ。
Posted by ブクログ
病院薬剤師の現場を描くシリーズの7巻は、全巻から続く予防接種の重要性についてを前半に置き、後半では市販薬依存についてを軸に薬剤師の存在意義にメスを入れている。
相変わらず現場を描くことについてドラスティックな描き方をされている。
「第35話 理想の姿」辺りはわりと真面目に
「お読みの薬剤師さん、楽しく読めてます……?」
と心配になるところである。(余計な心配)
それはさておき、まず最初にこの作品が意義深く、今回も星五つ評価からブレることのない内容であることを明言したい。
丁寧に描かれた、両親を対象にした予防接種講座の内容などは非常に有用性が高く、興味深く読ませていただいた。
市販薬依存などは、正直言って存在自体が初耳で、こちらも興味深い内容である。
ドラマ性も確保しながらこの情報量だから、率直に言って恐れ入るところだ。
一方で、物語的に見ると少し肩透かし感があった面もある。
これは産婦人科の物語でもそうだったが、物語の描く方向性が
「これから一巻を使って腰を据えて描きそうな雰囲気なのに、意外にあっさり終わった」
といった形になっているためである。
今回で言えば、ワクチン接種に関する話題は情報提供を重視し、ドラマ部分である「反ワクチン派との対話」はあくまで脇役となっている。
この辺で「あ、そこはあっさり……」と思ってしまったのは正直なところである。
ドラッグストアのスーパーマーケット化の問題についても、シャープでドライな物語の描き方ではある。
物語的に「会社の方針通り動く、現場を無視したエリアマネージャー」という対立軸を用意していて、大変わかりやすくはあるのだ。
たぶん、こうした存在は実在するだろう。嫌味なタイプの人間も多いに違いない。
一方で、彼もまた中間管理職であり、彼の言い分そのものが正当性を持っている(利益が上がらないと雇用が維持できないのは間違いないのだし)部分も気になるところである。
そこで深入りせず、「嫌味な中年と理想に燃える若者の対立」というわかりやすいドラマ像を構築しているのは、少し気になるところはある。
というわけで、面白いし、タメになるし、星五つは間違いない作品であり、今回もその評価は変わらない。
一方で「啓蒙」要素が強く、物語として少し気になった面があった点は、ここで正直に記録しておきたい。