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Posted by ブクログ
ぶっ飛んでいるようで、実はお手本のような群像劇なのではなかろうか。群像劇というのは、私小説と並んで、近現代において生まれるべくして生まれた文学の形態なのだろうと思う。キャラクターに過度な個性は必要なく、誰もが記号的で、けれど明確に個人である。形而下にありながらどこまでも形のない。つまりは矛盾というものに整合性を付けようという試みなのかもしれない。きっと、「世の中」というものが漠然としたものでは済まなくなって、人が一人で生きていくのに必要なエネルギーが人一人分の質量では足りなくなってしまって、それを見据えたかのように大きめに造られていた容器に、他人を部分部分、継ぎ接いで、自分+αを自分だと言い聞かせて生きていくことを強いられている。その顕れが、柳の下に見えるような気がして、現代人はそれが不安で仕方ないのではないかと、この本を読み終えて、思うのだ。