あらすじ
【『モータル・エンジン/移動都市』映画原作】トムは移動都市ロンドンに住む、ギルド見習いの孤児。久々にロンドンが獲物を追って疾走中だというのに、博物館で陳列品のほこり払いだ。我慢できずに仕事を放りだし、けんか騒ぎまでおこした罰に、最下層での作業に追いやられてしまう。そこで出会ったあこがれの史学ギルド長は、親しく声をかけてくれたばかりか、捕獲した町の解体作業の監視に同行させてくれた。天にものぼる心地のトム。だが、ギルド長の命を狙う謎の少女ヘスターを助けたことで、彼の運命は一変する。大きな都市が小さな都市をむさぼり、大都市同士が共食いする奇怪な世界を舞台に、たくましく生きるトムとヘスターの冒険を描いた、傑作シリーズ第1弾。
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Posted by ブクログ
壮大なスケールで描かれている物語。
宮崎吾郎監督が映画化しそう。
遠い未来の地球。
全体的に重いけれど引き込まれる。
史学ギルドと工学ギルド。
クロームの最後の言葉「ロンドンを守りたかっただけなんだ、強くしたかっただけなんだ」
人類は同じ過ちを繰り返す。自国の為、自衛の為、他国を脅かす兵器を作り出す。現代の人類が歩んでいる道を突き進み続ければ、この物語のような世界が生まれることもあり得るのかもしれない。
Posted by ブクログ
都市が都市を食らうという、衝撃的な設定のSF。移動都市ロンドンが獲物を捕らえるシーンは、まるでスペクタクル映画を見ているかのようだった。
主人公のトムは、史学ギルドの見習い。しかし、ある出来事がきっかけで、都市の最下層部であるガットへと送られてしまう。ガット、捕獲された都市が解体される場所。暗く、暑く、悪臭が漂うその環境は、まさに地獄絵図だ。
ガットでトムは、憧れのギルド長、サディアス・ヴァレンタインと出会う。なぜかトムの家族を知っているというヴァレンタイン。トムにとってヴァレンタインとの出会いは、運命を大きく変えるものだった。中盤以降はトムと彼の仲間である少女ヘクターの友情を中心に進む。最初は反目し合っていた二人だが、共に困難を乗り越えるうちに、固い絆で結ばれていく。
本作の魅力は、壮大な世界観と、そこに生きる人々のドラマが絶妙にバランスが取れている点だ。移動都市というSF的な設定でありながら、登場人物たちの感情や葛藤は非常に感情移入できるものだった。
また、物語のスピード感も本作の見どころの一つ。都市同士の戦いや復讐劇、逃亡劇など、次々と展開されるアクションシーンのおかげで途中で中だるみすることがない。特にクライマックスに向けた展開は圧巻で、ページをめくる手が止まらなかった。
Posted by ブクログ
面白かった。登場人物の名前とか固有名詞とか、覚えにくかったけれど。
人間は裏切る。良い人そうに見えても、良い人ってわけじゃない。それぞれがそれぞれの考えのもとに行動している、と言えばそれまでだけれども。それでも信じて、裏切られて。トム自身も、たくさんの人を殺す結果になり、英雄ではない。それでもヘスターの言葉が救いになる。あんたは英雄じゃないし、あたしは美少女じゃない、でも一緒にいる。
人間である限り、すべての者が悪なのだろう。メドゥーサを生み出した古代人も、それを使って攻撃しようとするクロームも、ヴァレンタインを殺そうとするヘスターも、結局何も出来ずにヘスターを助けるキャサリンも。すべては繋がっている。完全な善人はいない。ただ自分の信念に従うだけ。何が正しいのか? 移動する都市が必然なのか、都市は静止して生きるべきなのか。分からない。ただ、人間は争い続ける。60分戦争によって荒廃した後の世界においてでさえも。