【感想・ネタバレ】教養としての認知科学のレビュー

あらすじ

人間はどのように世界を認識しているか?「情報」という共通言語のもとに研究を進める認知科学が明らかにしてきた,知性の意外なまでの脆さ・儚さと,それを補って余りある環境との相互作用を,記憶・思考を中心に身近なテーマからわかりやすく紹介.自分はしっかりしていると思っている人こそ,読むべきである.

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Posted by ブクログ

ネタバレ

表象と計算という伝統的な認知のフレームワークを見直し、「生物学的シフト」つまり知性を生物学的な特質をもつものとみなす考え方にもとづき、多様なリソースの中で絶えずゆらぎながら生成と変化を繰り返すという、知性の姿にせまる本。

認知科学は学際的である。心理学、哲学、言語学、教育学、人類学、生理学、神経科学、動物行動学、生態学、人工知能研究、ユーザインタフェース研究などが集まってできあがってきた。その共通の基盤が「情報」という考え方である。

大きな潮流としては「生物学的シフト」つまり知性を生物学的な特質をもつものとみなす考え方を基盤にしている。つまり、生成的であるという知性の特徴と変化、成長、発達できるという特質が背景にある。

情報という概念=表象と計算

情報の取得と保持=記憶。記銘、保持、想起。記憶を中心に知性はたえず生成される。人工的な記憶装置とは全く異なるイメージ。

記憶や知識ははかない。状況な中で絶えず揺れ動き、変容、組み換えを繰り返しながら動的に生成される。

情報の利用=思考。人間の思考は、さまざまなタイプがあるが、合理性、論理性とはかけ離れたものである。

表象=representation。
知覚表象
記憶表象=概念、エピソード、手続き的知識

有用な知識:一般性、応答性、関係性(特に階層性)

知識をうまく利用、表現するための試み
・構造をもった知識=スキーマ、フレーム、スクリプト
・プロダクションシステム=手続き表現のための基本的枠組み(アーキテクチャー)プロダクションルール(if-then形式で表現)
・ニューラルネットワーク=ニューロンとグリア細胞による並列分散処理(PDP)、コネクションニズム

錯視:表象を支持する現象
・ミューラー=リア―の錯視:長さの異なる代理物。育った環境によって世界が変わってみえる
・カニッツァの三角形:三角形という見えないものが見える
・ネッカーの立方体:アイデンティティが不成立

文の理解は単語と文法だけでは説明できない。状況=外延的次元の理解の必要性

記憶
・記憶はつながりである

想起、検索方法

感覚記憶:アイコニックメモリ、エコイックメモリ
短期記憶:

ビット:二進数一桁、つまりゼロと1だけで表せる情報=場合の数が2の場合。。例:男女の区別
一般に情報量は、2を底とする場合の数Nの対数。log2Nで表現できる
・自由再生
・手がかり再生
・再認

チャンキング

長期記憶
・エピソード記憶:時間順
・概念:意味的な関係による組織化。例:入れるものと入れられるもの
・手続き的知識:行為、運動。例:文法も

短期記憶から長期記憶に移行させるには
・リハーサル:復唱
・精緻化:推論を行うことで、与えられた情報に何らかの別の情報を付け加えること。カテゴリー情報、物語法、場所記憶法

符号化特定性原理

チェンジ・ブラインドネス

構造写像理論:対象と属性と値

表象は断片化されており、外の世界と相互作用をする


思考
・推論:演繹、帰納、仮説推論、類推。与えられた情報から別の情報を生み出す
・問題解決:現状と望んでいる状態の不一致の解消。初期状態、目標状態、オペレータ、オペレータ適用制約。ハノイの塔
・意思決定

ヒューリステッィクスの活用:山登り法
問題表象
効用、期待効用、再認ヒューリスティックス、
直近ヒューリスティックス、最良選択ヒューリスティックス、
利用可能性ヒューリスティックス、代表性ヒューリスティックス(カテゴリー判断、プロトタイプ、社会的ステレオタイプ、サンプリング)
確証バイアス

批判的思考:
主張の明確性、根拠の有無、根拠の種類、根拠と前提の関係、根拠の得られ方、代替仮説の検討、
トゥールミンの議論の図式。主張、根拠、保証(主張と根拠の関係性)、保証の妥当性、反論、再反論・限定

実用的推論スキーマ:許可のスキーマ、社会契約制における利得ー対価のスキーマ

人間の推論は文脈に依存する

洞察=ひらめき
よい試行の発生頻度は、問題解決を続けるうちに徐々に増加していく

知覚的シンボルシステム:身体化しているので、
記号接地問題が起きない

世界への表象の投射
・世界が覚えている
・世界が問題を変える

インタープレイによる認知の拡張。外化

拡張された心概念

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2021年02月23日

Posted by ブクログ

ネタバレ

おもしろい。「知性」という曖昧な概念を科学的に位置づけることができる。この本を踏まえた上で昨今のAI=人工知能の議論に目を向けると、また違う視点で見ることができそう。内容としては『サブリミナルインパクト』を既読だったため、驚きは大きくなかった。

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2017年04月22日

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