【感想・ネタバレ】ヨーゼフ・メンゲレの逃亡のレビュー

あらすじ

ヨーゼフ・メンゲレ、アウシュヴィッツ絶滅収容所に移送され、降車場に降ろされたユダヤ人を、強制労働へ、ガス室へと選別したナチスの医師。優生学に取り憑かれた彼は、とりわけ双子の研究に熱中し、想像を絶する実験を重ねた。1945年のアウシュヴィッツ解放時に研究資料を持って逃亡。その後、49年にアルゼンチンに渡った彼は、79年にブラジルの海岸で死亡するまで南米に潜み、捕まることも、裁かれることもなく様々な偽名のもと、生き続けたのだった。そして、その死が遺骨のDNA鑑定によって確認されたのは90年代になってからのことだ。なぜメンゲレは生き延びることができたのか? 彼は、どのような逃亡生活を送ったのか? 謎に満ちた後半生の真実と、人間の本質に、ジャーナリスティックな手法と硬質な筆致で迫った傑作小説。ルノードー賞受賞作。

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Posted by ブクログ

アウシュヴィッツに大量に送られてくるユダヤ人をまるでオーケストラの指揮者のように振り分ける-この本では、収容所に到着してすぐ行われる選別を「オーケストラを奏でる」と多くのシーンで表現されている。異次元の残虐行為、すなわち人体実験が描写されている箇所は少なく、その描写も極めて淡白なもの。むしろ「死の天使」の戦後の逃亡劇を通してを持たない怪物ヨーゼフ・メンゲレの卑劣さ・心の惨めさ非常にリアルに伝えている。そう、彼は私たちと何ら変わりもないちっぽけな人間なんだ。戦争犯罪-非常に難しい。戦時下の東欧では市民の手によりポグロムが多発したが所詮彼らは無責任。愛国心ゆえに国家に忠誠を尽くした人は、負ければ立派な犯罪人として罰せられ、勝てば有耶無耶にされる。この矛盾に苛まされ人として腐敗していく。表象し難い複雑な思いです。
戦争犯罪人にフォーカスを当てた作品は被害者視点の作品に比べ圧倒的に少ない。ひとつの事象を捉えるとき、両者の視点で描かれた作品と客観的に描かれた文献を読むと、多角的な見方ができるだけではなく、自分自身がその事象から学べることが何倍にもなったのではないかとすごく実感しました。これからこのような読書スタイルも沢山取り入れていきたい。

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2020年06月10日

Posted by ブクログ

「死の天使」と称されたヨーゼフ・メンゲレの逃亡記。
史実と文献をもとにした“ノンフィクション小説”

戦時中に行った彼の非人道的な行為と、逃亡生活中の卑小さ傲慢さが際立つ。(さらにアイヒマンが登場することでその卑小さ俗物さが増す)


「命令に従っただけで自分は悪くない」
最期まで狂信者だった。

最期の章に書かれていたことには胸を打たれた。

いつの時代にも、メンゲレ(あるいはアイヒマン)のような人物を生み出してしまう可能性がある恐ろしさ。

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2020年05月14日

Posted by ブクログ

メンゲレのような「命令に従っただけで自分は悪くない」という言い分が通ると思っている卑小な悪、陳腐な悪は決して珍しいものではない。

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2019年01月07日

Posted by ブクログ

悔悟も悔悛もない。同情も共感もできないけど、最後の一文に胸を突かれた。いつ、どんな時代でもメンゲレになる人間は存在している。

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2018年12月07日

Posted by ブクログ

ノンフィクションのような記録文学。

積極的に受け入れていた南米を逃亡先に選ぶ犯罪者が多かったのにまず驚く。

国の施策として研究と銘打ち、個人的趣味での手術をしていた人物と認識していたが、その最後は怯え隠れ卑小な姿で描かれていた。

頑なに罪を認めず自身を肯定しながら人生が終わったが、それならば逃亡せず法廷で堂々と主張すれば良かったのにね。

都市伝説のような羽ぶりの良い生活では全くなく、落ちぶれてゆく姿に人間の業のような醜態を見た気がします。

後味が良いわけではないですが、読んで良かった一冊です。

翻訳が読みやすくその点も好印象。

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2025年12月07日

Posted by ブクログ

あとがきによると、著者は、この本のモデルはカポーティの「冷血」でした、と答えているそうです。
「ローズ・アンダー・ファイア」と続けて読んでしまったので、まさに彼女たちに施された人体実験の首謀者である悪魔の医師が、このような卑小な人物であると知ると、やりきれなさが倍加します。
イスラエルの諜報機関であるモサドに対する見方が変わりました。何故、ターゲットを地の果てまでも追い詰めるはずの執念深さでは地上最強のはずの彼らが、メンゲレを最後まで捉えることができなかったのか…意外な理由でした。

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2018年11月08日

Posted by ブクログ

「アウシュヴィッツの死の天使」メンゲレの戦後の逃亡の記録。そう言えばアイヒマンも捕まったのは南米か。戦中戦後、建前中立だった南米がナチの巣窟だったってのは聞いたことはあったけど、そこメインで書いてる本は初めて読んだ。なかなかおもしろい。

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2018年11月01日

Posted by ブクログ

ドイツのユダヤ人作家?による「ノンフィクションノベル」。アウシュビッツで恐れられていた白衣の悪魔メンゲレ医師の南米での隠遁生活。驚愕の新事実とかではなく、メンゲレの狂気と恐れをじわじわと描く。3.0

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2020年11月18日

Posted by ブクログ

『スターン』誌じゃなくて『シュテルン』じゃないかと思うんだけど。
それはさておき、戦争責任って難しいんだなあと思う。勝ったか負けたかで立場は全然変わるし、命令を下した側が罰せられるのはともかく、命令を受けて行動した側は、じゃあそれを拒否すれば良かったのかというと、それは勝ったか負けたかという結果が出てから言えることだし・・・もしあの戦争でドイツが勝っていたらメンゲレが行っていた実験等々は責められるどころか褒め称えられてたのかなと思うと、恐ろしい話しだよなあとつくづく思う。

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2020年07月19日

Posted by ブクログ

ナチズムへの傾倒と功名心から、アウシュビッツで非道な人体実験を行い、多くのユダヤ人などを死に至らしめたヨーゼフ・メンゲレの逃亡記。彼は最後まで「狂信者」だった。

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2019年08月30日

Posted by ブクログ

ナチスの人体実験に関して、最も名の知れた科学者ヨーゼフ・メンゲレ。
ユダヤ人輸送の責任者アドルフ・アイヒマンほどの大物ではありませんが、自身の研究と到着後の“選別”によって夥しい死を実行しました。
自然死するまで逃げ切ったナチスの一人であり、動向に不明な点が多い人物です。
著者のメンゲレ研究の末、事実と想像を交えた小説の形で世に出た一冊。

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2019年02月08日

Posted by ブクログ

アウシュビッツでユダヤ人を医学サンプルとして冷酷に選別し人体標本や実験をしていたナチスの医者・メンゲレ。戦後南米に逃亡し1979年にブラジルで死んだ。そのメンゲレの逃亡を小説にしたのが本作。
メンゲレを支えたのは、メンゲレ家の資産とヒットラーに心酔する人々の存在であった。メンゲレも生涯ユダヤ人の劣性を信じ、自分の行いに非は無かったと考えている。ドイツ人の優性を主張し、ユダヤ人のみならずかくまってくれているアルゼンチンやブラジルの人々をも軽蔑していた。自分の正当性を信じ、あくまでも生き抜くことに執着している。
アウシュビッツでの行為に記述や、傲慢な逃亡生活に読んでいて辟易してしまう。それでも最後まで読んでしまうのは、作者の力量なのか。
そして、これは事実をもとにした小説であることを忘れてはいけない。

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2018年12月14日

Posted by ブクログ

メンゲレを怪物ではなく人間として描くことには成功している。アウシュビッツで行った残虐な人体実験や殺戮の描写には読んでいて吐き気をもよおすほどなのだから、残虐性を描くことにも成功していると思う。ただ、余りの残酷さはやはり読んで面白いものではない。一片の同情も酌量の余地もないので、逃げ切ったことへのカタルシスも全くない。私には苦い読書だった。

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2018年11月24日

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