あらすじ
経済学の抽象的な印象に苦しんだり戸惑ったりしたことはありませんか? 経済学は物事を考えるための強力なフレームワークとしての側面もあります。この本はたくさんの現実と理論のキャッチボールを紹介します。図表や数式は全く使いません。まずは気軽に本書『読むエコ』を読んでみてください。
※本書の底本は2012年刊行ですが、電子書籍化にあたり、「まとめとオマケとあとがきと」の章の文献に関する記述は2018年の情報で更新しました。
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Posted by ブクログ
ビジネスエコノミクス超入門書。非常に平易に書いてある分、ここの理論はもっと深く考えたい!と思わされた。市場デザインの話がやや浅い印象。ゲーム理論と組織デザインは勉強し直したい。
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とても良い本だった。作者自身はこの本だけで経済はわからないというがこの本をきっちりと読みこなすことができればそこそこ理解できるのではないかとさえ感じる。
Posted by ブクログ
直感的にわかるグラフや数式を用いないため、言葉だけで理解するのはもしかしたらかえって難儀する部分もあるのかもしれないが、数学に苦手意識がある自分にとっては大変ありがたい本であった。
少なくとも大学在学中に読んでいれば、(専攻や学科は違うものの)経済学に対する解像度・理解度がより高められたのではないかと思う。
8章のマーケットデザインに関しては理解が追いつけなかった...
Posted by ブクログ
メカニズムデザインや契約理論,組織の経済学等の最近のトピックを,数式を使わず豊富な事例を交えて紹介しています.
学部初級のミクロ経済学で詰まらないと感じた人には是非読んでほしい本です.ただ,経済学を全く知らない人には内容や経済学特有の考え方が難しいかもしれません.
Posted by ブクログ
ミクロ経済学の入門書。解りやすい記述ながらも、扱っている内容は結構高度。オークション、シグナリング、アドバースセレクション、確実性等価、インセンティブ、企業の境界、取引コスト、マーケットデザインなどなど。ホットな研究テーマが取り上げられている。
この本を読んだ後、経済学を幅広く勉強するもよいだろうし、特定のテーマに絞って深堀するも良いと思う。巻末の参考文献も参考になる。
大学生向けに書かれた本のため、事例が学生生活中心になっているが、内容的には社会人にも読んで欲しい本。次作として、企業経営に関心を持つ社会人向けの啓蒙書を是非執筆して頂きたい。
Posted by ブクログ
<概要>
経済学を社会科学的な思考のツールとして位置付け、経済学における概念(例えば逆淘汰とかモラルハザードとか)の紹介を行う本。「ひたすら読む」の書名通り、数式・グラフによる説明を一切排除している(個人的には数式はともかくグラフor図はあった方がいいなー、と思った)。
<雑感>
・内容は入門レベルにとどまるので、個人的には知っている(はずの)概念に関する復習として有用でった。ほかには経済学部の新入生とか、高校生とかが読むとためになるのでは。
・マッチングとオークションは勉強したことがなかったけれど、少し興味が湧いた。セカンド・プライス・オークションは買い手が真の留保価格を提示するのが最適になるからファースト・プライス・オークションより駆け引きの要素が減る、みたいな議論は考えてみれば当たり前だけど直観に反していて面白いな、と。
・気になったのは、秀史先生はどこでDEATH NOTEとかのネタを仕入れたのか。勝手に漫画とか読まない方とお見受けしていたけど。
Posted by ブクログ
この本は非常にわかりやすかったです。
経済学を導入する上で、身近なものから経済を紐解くという意味でここまで落としこんでくれると、経済を毛嫌いしている人も読める、読める、と思います。
「ひたすら読め、読め!」
わからないところあれば、授業を受ける(大学生向けだからですね)や他の本を読めというスタンスがすごくいいです。
そのためか、あることでむしろややこしくなってしまう数式はほとんど使われておりません。グラフも皆無。
学生が身近な事例(どの種類のラーメン選ぶか?飲み放題のビールは何杯飲むのがいいのか?)を通して、すごく入り込みやすい内容となってます。構成も、意思決定から始まり、ゲーム理論、インセンティブ..と経済学としてはとっつきやすいところから読み進められます。
冒頭で著者が言っているように、この本だけでは完結できません。ここからがスタートです。
本書はミクロ経済学が中心となっているので、他の分野については他の本で補うのがいいでしょう。
大学一年目で読めれば、経済の印象もがらりと変わったことでしょう。
もちろん、いい方向に。
とはいえ、非常に読みやすく、わかりやすいので社会人にもオススメな本書だと思います。やや、経営学チックな部分も多いです。
Posted by ブクログ
経済学は個人の合理的意思決定を前提とする。会社を分析対象とする経営学とは異なり、世界を理解するための文法のようなもの。モデル化は、本質的な部分を抽出して単純化するため。
経済学の合理的意思決定とは、1.可能な選択肢を明らかにし、順位付け可能、2.選択可能な選択肢の中から最も順位付けが高いものを選ぶ(同順位で無差別の場合も含む)
意思決定の際には、1.トレードオフ、2.機会費用、3.サンクコスト、4.限界効果を気をつけるべき
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不確実性には、自然の不確実性と、(相手の行動である)戦略的不確実性がある。そこでの合理的意思決定は、ゲーム理論で考えられる。両者の合理的意思決定が定まるとき、それはナッシュ均衡であると言える。利害の対立がないとき、「コーディネーションゲーム」であると言われ、利害が絡むと「男女の争い」になる。
双方YESが効用を最大化するが、相手NOだと最悪の効用になる場合、「確信ゲーム」と呼ばれる。双方YESが最悪で自分YESが最上だと、「チキンゲーム」、相手NOが最悪で自分NOが最上だと、「囚人のジレンマ」になる。
価格に関するゲームで、各社の限界費用が製造・販売量によらずに一定かつ同一であるという仮定で行われる競争は、ベルトラン競争と呼ばれる。この場合、売価のナッシュ均衡は製造原価(=限界費用)である(機会費用も含んでいるので会計上はプラスになる)。ここから脱するためには、1.コスト優位性の確保、2.製品差別化、3.スイッチング・コスト、4.生産能力の不所持(シグナリング)、5.談合。
4に関しては、最大生産でも追加利潤を上げられるようになり、相手の意思決定確認後も自社判断が不変である。これをクールノー競争と呼ぶ。このように、自らの行動制約を示すことでゲームをいい方向に持っていくことをコミットメントと呼ぶ。
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ある価格以下であれば買う場合、その価格を留保価格と呼ぶ。また、価格水準に対する市場全体の需要量を市場需要関数と呼ぶ。ここで、収入の少ない家計がより多く必要とする劣等財であるために、価格の上昇に対して需要量が増加する財のことはギッフェン財と呼ぶ。ハード購入に伴って購入されるソフトが決定することを、ロックインと呼ぶ。
総利潤=(価格ー可変費用)×需要量ー固定費用。前者はマージン。ここで、需要量の単位を均一化するために、価格と費用の変化は%では測る。価格に対する変化を、需要の価格弾力性と呼ぶ。これをふまえ、顧客ごとに適切な価格設定を行うと、一次価格差別(完全価格差別)、グループごとに行うと三次価格差別になる(例:学生割引)。ほかに、消費者に選ばせる場合は二次価格差別になる(例:エコノミークラス)。これは、情報を持たない側が持つが側に開示させるという点で、スクリーニングと呼ばれる。使ってみないとわからない製品(経験財)。
市場供給関数は価格と限界費用で決まる。市場の需要量と供給量が等しくなる状態は市場均衡、そのときの価格を均衡市場価格と呼ぶ。このとき、市場がもたらす総余剰は最大である。この状態を、経済学では効率的と呼ぶ。これは社会にとっても望ましい状態で、厚生経済学の基本定理と呼ばれる。
市場の失敗は、1.独占、2.外部性(各買手や売手の活動が別の経済主体の利害に直接影響を与えるとき、ネットワーク外部性もその一部。これは共有資源の扱いでよく見られる)、3.情報格差、4.取引相手が見つからない。ここで、自由な取引を促進することを、経済ガバナンスと呼ぶ。
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モラルハザード:隠された行動
エージェンシー関係において、モラルハザードを引き落とす主体をエージェント、それを緩和しようとインセンティブを設計する主体をプリンシパルと呼ぶ。
エージェンシー問題の解決のためには、1.モニタリング(行動監視)(例:抜き打ち検査)、2.エージェントのプリンシパル化、3.成果に基づくインセンティブ設計。3に関しては、リスクとインセンティブの間にはトレードオフ関係があることに注意。また、成果の表面化は一部なので、プリンシパルが真に高めたいとかんがえる価値との間に乖離が生じる可能性がある(例:量と質のトレードオフ関係。マルチタスク問題)。加えて、自己知覚理論の発生にも注意すべき。
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逆選択:隠された知識
問題ある人間が保険に来ることをアドバース・セレクション(逆選択、逆淘汰)と呼ぶ。これは、分業により知識が集中していることと、その知識が暗黙知とされており、言語化する際に全て再現できないことによる。また、Bの選択を好むが周りが全てAだったとき、Aに流れることを合理的群集行動と呼ぶ。
これに対処するためには、情報の保持者がシグナリングを行うべきである。なぜなら、口先だけでは都合のよいチープトークが可能なので、模倣されにくい行動で示す事が重要だからである(例:リーダーが率先して動く)。
しかし、以下の場合はシグナリングが十分に機能しない。1.シグナルに十分なコスト差がない場合(最近のMBA)、2.意図せざるシグナリング効果が発生する(例:リスクを取ったプレーをするため、負傷してもレギュラー剥奪しないという条項が、古傷の存在を疑わせる)。シグナルを送らないこともシグナルになる可能性があることにも注意(例:返品無料)。
情報の非保持者はスクリーニングで情報を開示させる方法がある(例:二次価格差別、業績評価制度で自分に自信があるものが集まる、起業家への段階的出資による継続的労働の証明)。
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経済ガバナンスのために、マーケットデザインという市場を設計するという視点が必要になる。
まず、オークションには公開オークション(オークションの進行が公開)と封印オークション(非公開。入札は基本的に一度だけ)がある。前者は、さらに価格せり上げ方式か競り下げ方式(超高価格から下げていく)かに分かれる。また、もっとも高い入札価格から落札される場合(一位価格オークション)と二位の価格にプラスαの報酬を支払う場合(二位価格オークション。指定価格までの自動入札はこれ)がある。
入札側としては、二位価格と公開競り上げオークションでは留保価格を提出することが効用を最大化させる。この点で、オークションはスクリーニングであると言える。
封印オークションでは、自分の留保価格が他の入札者の動向を見ても変わらない必要がある。このとき、個人として絶対購入したい、という私的価値があると言える。逆に、入札者が共通して関心を持つ場合、共通価値があると言える。
自分の価格よりどれくらい低い価格を提示するか、という点で一位価格封印と、公開競り下げは性質として同じであると言える。このとき、評価額の確からしさに参加者間で差がない場合、留保価格が高い順が獲得する傾向が高い(逆に、高い留保価格っぽい人がいたりすると、本当に高い留保価格の人がでなくなる場合がある)
出品側からすれば、実は4つのオークション手法どれを取っても期待収入が変わらない(収入等価定理)。一位価格は留保価格を下げるし、二位価格は留保価格以下の二位で決定されるからである。したがって、オークション手法を変えるという方法もある(例:入札者全員に支払わさせる「全員支払いオークション」)が、典型的オークションが最大とされている。
また、「作られた効率的市場」の例にはマッチングもある。両者がこれ以上ない最大価値を生むとき、安定性があると言われる。安定性を生むマッチングにはDA方式があり、両者の第一志望をとりあえず定め、合わない場合に調整するというものである。このとき、両者とも大量に母体があり、集権化すれば良い。
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取引には市場を通すものと市場を通さないものがある。ここで、その際に異なるのは権限関係である。権限委譲のメリットは、モチベーション喚起と分業(情報集中化)である。ただし、デメリットとして、会社と権力主体が目指す方向性が異なるというコントロールの喪失がある。
加えて、分業は、暗黙知、合理的群集行動、インセンティブのズレを生み出す。最後の例として、トップの期待する回答を行うことでボーナスが得られる、などがある。さらに、他部署との連携が取りにくくなるというコーディネーション問題も発生する。
ただし、権限移譲をした後にトップの権限でミドルの決定を覆すと、コントロール件を失わない代わりに、モチベーションは失われる。これはエージェンシー問題でもあるため、その対策でいくらかマシになる。
また、評価制度も重要になる。ミドルの意思決定、組織と事業部のインセンティブのズレに影響を与えるからである。取引を市場で行うか企業内部で行うか、という問題は企業の境界という問題とされている。このとき、市場取引のための費用として取引費用が認知されるようになった。具体的には、契約が不完全だった場合の不完備契約などがある。その場合、組織内取引を採用するというメリットがあるが、生産費用が高くついたり、最終権限者の過剰介入でモチベーションが失われたり、インフルエンス活動と呼ばれるボトムからトップへの働き(インフルエンス成功による損失、インフルエンス活動を行うことによる機会損失、インフルエンス活動防止のための費用)が発生する可能性があるというデメリットもある。
以上を踏まえた上でのアドバイスとしては、取引費用があまり高くならない取引は市場、不確実性や複雑性が高い場合、不完備契約を避けるために組織内取引、がベターであると考えられる
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世界には異なる市場が存在し、関係しあっている。他市場を固定して1つの市場を見ることを部分均衡分析、同時に分析することを一般均衡分析と呼ぶ。
市場を創るーーバザールからネット取引まで
経営戦略の論理