あらすじ
立ち上がれ! 発明家たち
世界的大企業を相手に一歩も退かず特許の争いを勝ち抜いた男の、熱い戦いの軌跡を追い、個人が戦うために必要な知識と日本の特許・知財法制の課題を浮き彫りにする。
2015年9月、iPodに搭載されたクリックホイールを巡る特許訴訟で、最高裁は原告の個人発明家・斎藤憲彦氏の言い分を認め、アップルに対し3億3000万円の支払いを命じた。一個人が世界的企業を相手に戦った特許侵害訴訟で、勝訴が確定した瞬間だった。
個人発明家が大企業と互角に戦うためになくてはならないものの一つが特許だ。しかし、特許を武器にして勝つためには、心理的・経済的・法律的なノウハウを組み合わせた、高度な戦略を必要とする。一方で、「知財立国」を標榜しながら、新しい技術・製品開発に閉塞感が漂う日本はいま、知財の正しい実務知識を身につけた「ジャパニーズドリーム」の実現が求められている。斉藤氏が歩んだ道は、まさに特許取得から、それを武器に実際のビジネスにするまでのフルコースの物語である。
本書は、特許実務の専門家・知財コンサルタントとして活躍する筆者が、当事者である斉藤氏および周辺関係者へのインタビューを実施。斉藤氏の戦いをノンフィクションで追跡しながら、特許戦略、特許に関わる諸問題のポイントを解説していくもの。一個人でも巨大企業を相手に勝てること。そのために必要な基本知識を実際例のなかで整理するとともに、一方で日本が抱える「知財立国」実現をはばむ意外と語られていない問題点をもあぶり出す。
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Posted by ブクログ
これはスゴイ物語だ。
そして、よくまとまったいい本だ。
一般の人には特許の話は難しいかもしれない。
しかしエンタメ業界含めて知的財産という権利商売をしている人にとってはこれは必読ではないだろうか?
自分が持っている権利を主張して戦う姿勢も参考になる。
逆に、我々がAppleの立場になりえることも示唆している。
大会社だからと言って安穏としてはいけないのだ。
実は他人の権利を知らずに侵しているということが、十分にあり得る訳なのだ。
(あらゆる権利について事前に調べることは事実上困難だろう)
そしてその代償は決して安くはない。
そういう注意喚起も含めての物語ではないだろうか。
確かにAppleほどの巨大企業であれば、3.3億円という損害賠償費用は微々たるものだろう。
しかしそれが当社規模の会社あれば、相当なダメージになる。
著者は3.3億円でも勝訴とは言えなかったという。
この発明はそれだけ価値があるという主張であるが、原告被告双方にとって特許裁判が非常に難しいものだということをこの本から学ぶとができる。
これだけ社会や権利が複雑化している中で、普段何気なく行っている事業について、ある日突然に特許侵害で告訴されるかもしれない。
そういうリスクを知るだけでもためになるだろう。
(2019/8/16)