【感想・ネタバレ】やっぱ志ん生だな!のレビュー

あらすじ

芸人としてトップを走り続け、映画界では「世界のキタノ」となり、「究極の純愛小説」を書き下ろし文学界に殴り込みをかける―― 常に挑戦し続ける巨匠であり、異端児でもあるビートたけしがいま初めて明かす、「志ん生」「落語」という自らの「原点」。

なぜいま志ん生なのか、なぜいま落語なのか。

ビートたけしが最も敬愛する落語家として挙げる五代目古今亭志ん生。戦後の東京落語界を代表し、「天衣無縫」と言われた芸風で愛された落語家は、なぜこんなにも人の心を掴んできたのか。本書では、そんな志ん生の“凄さ”をたけし独自の視点で分析し、いまのお笑い界、落語界を斬りながらとことん語り尽くす。希代の名人への敬愛を込めながらも鋭く説くその芸の真髄は、たけし自身の芸への愛であり矜持である。たけしが芸人人生をかけて志ん生に真っ向勝負を挑む!

「志ん生を今に蘇らすには
ビートたけししかいない。
噺家には絶対書けない志ん生。」(笑福亭鶴瓶)

奇しくも2019年NHK大河ドラマ『いだてん~東京オリンピック噺~』では古今亭志ん生役/ナレーションに決定している、ファン必読の書である。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

やっぱ志ん生ですよ!
怖くて、とぼけてて、江戸っ子で、無駄がなくて、
艶があって、フラがあって…
とにかくやっぱ志ん生は面白い!

志ん生に憧れて、なりたくて、なれなくて、
談志になった談志、たけしになったたけし。

志ん生が大好きで、誰かと語りたいような方は
「そうそう!」とか、「そこ!それ面白いよね」とか
はたまた、たけしの芸人目線の分析に感心したりと、
たけしと二人で志ん生で盛り上がった心持ちに
させられる芸談でした。

ーーーーーーーーーー

ああいうものは普通の努力ではつくれないんだよな。
一生懸命やって、何度も挑戦しつづけて、
でも偶然だかなんだかわからない領域でできあがってしまった、
という類のすごさなんだ。
古今亭志ん生にも、ああいうものと同じすごさを感じてしまう。

オイラが落語の世界にいたとしたら、
絶対に志ん生さん、それから談志さんのことは、
追い抜いてみようと思っただろうね。
気持ちとしては一番でないとイヤなんだ。

おそらく本人も、感覚的にはわかっていても、
分析できない境地なんじゃないかな。
ある意味、データの積み重ねを超えた領域なんだよ。

落語がいまでも聴かれているのは、
いつの時代も人間は「相変わらず」だから、
庶民の本質なんてそうは変わらない。

落語に出てくる登場人物って、欲望に正直なんだけど
体裁だけは取り繕うとするから、みんな笑ってしまうんだ。

そこへいくと志ん生さんは、負けず嫌いではあるんだけど、根底に、あくまで落語とはお客を笑いに持っていくための道具である、という考えがあって、「俺の芸を見ろ」というふうにはならない。

一見、まったく力が入ってないように見えるし、
人によってはどれだけ笑わされても、
そのうまさには気づかない。

志ん生さんがいて、お客がいて、
みな「この世界を楽しもう」としか考えていない。
上も下もないんだよね。
この空間が、自分の芸で楽しくなればいいやとしか
思ってないのが録音からでもよくわかるよ。
そういうフラットさをつくれるのも、
やっぱり味があってこそなんだよな

「なんだお前の落語、志ん生師匠みたいだな」
と言われたことがあった。
「だけどね、お前は映画監督とかやったほうがいいんじゃねえか」
とも言っていたから、自分よりうまくなる可能性が
あると思ったのかもしれない。
まあ、談志さんのことだから、それでも負けないよ、
というのはあっただろうけど。

志ん生さんの落語を聴きたくて聴いているんだけど、
いつのまにか、大好きなおじさんの噺が聴きたい、
という感じにさせられているんだよな。

七十代後半の志ん生さんの落語も、わりと好きなんだよね。
滑舌は悪いし、間もちょっと長くなっているんだけど、やっぱり、うまい。
これはこれで芸だなと思わせるものがあるんだ。

「なんかこの人、人前で話すのが好きなだけなんじゃねえか」
とすら思えてくる瞬間があるんだよね。

ライブを終えたら、一緒に出た若い連中とよく飲むんだけど、
そのときに「ウケた」っていうことぐらい、最高のつまみはないよ。
いまだに、これほど高級な酒の肴はないっていうくらい。
ある意味、中毒なんだろうな。志ん生さんだって。
オイラだって、やっぱり客前に出たいと思う。

芸人同士、だいたい並んだ瞬間に
「どっちが勝ち」かはわかるんだよね。
だいたいどちらかが先に頭を下げてしまう。
オイラはいまでもほぼ負けないっていう自信があるけど
落語に限っては、
志ん生さんにはかなわないなっていう意識がある。

芸人の強さってなんだと言われれば、
それは「危うさ」なんだよな。

動物園で人気があるのって、やはり猛獣なんだよね。
檻があるなら近くで見てみたい。
金払って家畜を見たってしょうがないもの。
高座でも、芸人が舞台にいる状態だから、
みんな安心してゲラゲラ笑うことができるけど、
もしかして降りてきたら怖いかもしれない。

実は破天荒なのは高座の芸のほうであって、
そこがすごいというのがすべての始まりなんだ。
志ん生さんは志ん生になるために酒を飲んだのではなくて
ただ酒が好きだから飲んだだけ。
歴史のエピソードというのは、
勝手につくられていくものなんだよ。

志ん生さんは間違いなくスターでもあるんだけど、
時代状況があってのものではないのがまた、すごいんだ。

笑いがとれなくて、いろんな芸に目をつけて吸収し、
ギャグもいろいろと研究して、高座に上がるときには
それをほんわかとした空気の中で客に届けていた。
ほんわかして見えるけど、実は蓄積が効いていて、
シュールで、技術があるのも明らか。
だから現代の人が聞いても、普通に笑えるんだよな。

談志さんがよくこんなことを言っていた。
稽古をつけてもらいにいろんな師匠のところに行ったけど
一番、稽古をつけてもらっちゃいけないと思ったのは
志ん生師匠だな。
…もう教える内容が毎回、違うんだってさ。

長男の馬生さんが、
俺たちが正しく噺を覚えても、親父が間違えてやるから、
俺たちのほうが間違っているように思われてしまう。
と意見したら、志ん生さんが言ったのは、
そんなんどうだっていいんだ
だったそうだ。
志ん生さんからすれば間違えようが何しようが、
志ん生の世界がちゃんと伝えられれば
それでオッケーだと思っていたんだろう。

なんでいまさら落語に手を出したりするのか。
それは、動き続けることで自分を保とうと
しているのもあるんだろうな。

0
2022年11月05日

Posted by ブクログ

ネタバレ

近年落語家としての活動もしているビートたけしさんが、古今亭志ん生の落語の魅力を思う存分語った一冊。内容としては今まで聴いてきた落語の話と、その聴きどころが中心。たけしファンの人が落語の世界に踏み込むにはいい入門書になるかもしれない。
ただ、この一冊だけを読んで、最初から志ん生の落語から聴き始めた人だと、好き嫌いが別れるかもしれない。また、たけしさん自身が「現代」を語っている部分が少ない。「過去」のエピソードが多いので、根っからのファンが読むと「その話他でもしていた」と重複する部分に飽きてくるかもしれない。
談志ファンの私としては、談志師匠の『談志百席』等で書いてある志ん生批評のほうが濃い内容に感じたので、そちらも見て欲しい。

0
2018年08月19日

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