あらすじ
あなたと私のどちらかしか幸せになれないなら、私は私の幸せを選ぶ――謎の死を遂げた友人の妹に招かれ、軽井沢の別荘に集まった四人の男女。彼らが語りだす、それぞれの人生の選択とは。
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Posted by ブクログ
李龍徳氏の作品は、敢えて人間関係を瓦解させるような言葉が飛び交う。著者の作品は、これまで単行本として三冊発行されているが、意識的に相手を打ちのめす、呪詛ともいえる暴言が必ず吐かれる。
著者の作品の肝は、その会話劇にあることが多いのだが、当たり障りもない自然で穏当な場面から、あることがきっかけに、徐々に不穏な空気が漂ってくる。人は情報をさらけ出しながら生きている生き物なので、それが外見にすでに立ち現れたり、自分の口からつい漏らしてしまったりする。会話が白熱していくと、次第に男女らは険悪なムードになっていく。もうそこから、嫌な予感というものがひしひしと感じさせられて、まさにその瞬間、相手を傷つける一言を口にしてしまう。本来、そこまで言ってしまっていいのかと躊躇するような言葉は、諸刃の剣で、言われた相手も言った本人もいろんな意味で傷つく。しかし、言ってしまった直後に、お互い計算なんてできない。言われた相手は、とても看過できない言葉に、人格を貶められて、尊厳を踏みにじられて、理性では憤りを諫めることが難しく、売り言葉に買い言葉、相手を罵倒する怨嗟の言葉の応酬がひたすら続く。とても見逃すことができない、心の核を貫く本質的な暴言には、平常の理性的な振る舞いはできずに、ただただ感情的にがなり立て、自分自身の理性をコントロールできなくなってしまう。果たして徹底的に化けの皮を剥がしあったその先に、幸せな結末が待っているのか? 否、徹底的に殴り合うことで分かり合えるのは、少年漫画の登場人物くらいで、相手を傷つける目的の悪意たっぷりの罵り合いの先には、別離しかない。
Posted by ブクログ
意表を突かれました。
タイトルに惹かれ読みましたが、思いもよらない
物語・・・心中小説と書かれていますが、
ストーリーというより、人物を追うような小説。
登場人物がリアルで、本当に存在しているのだと
思ってしまうし、実際そんな人間を、人間の様を
描いている小説なのだと思う。
いいとか、悪いとかでもなく
面白いとか共感でもなく
なんとも言えないバランスを保ちながら
進む登場人物の人生。
小説をもっと読みたくさせる作家さんだと思いました。