あらすじ
大河ドラマ『西郷どん』でも描かれる、江戸無血開城。西郷隆盛と勝海舟という傑出した人物のみでなく、徳川慶喜、皇女和宮、篤姫らの選択が歴史上の決断に結節した。歴史学・政治学・脳科学など各分野の専門家と共に、磯田道史が歴史のif に挑む!
※電子書籍版では一部掲載していない図版があります。
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Posted by ブクログ
NHK「英雄たちの選択」の放送の中から、「江戸無血開城」に関連する4回分の放送とそれに著者が加筆し、再構成したものです。
主要な登場人物は、徳川慶喜、勝海舟、和宮、篤姫等です。そして最後は勝利者であったはずの西郷はなぜ非業の死を遂げたのか・・・というテーマで切り込んでいます。
幕末の時代に対して、私が予てから持っていた疑問は、
①幕府は外国に対して開国するにあたり、禁じ手である天皇の勅許を必要としたのか?
②鳥羽伏見の戦いに敗れた後、徳川慶喜は何故いとも簡単に政権を放り出したのか?
③勝海舟は元々の直参旗本でもないのに、何故老中格となりえたのか?
④西郷や大久保は下級武士なのにどうして、藩政を動かし得たのか?
上記の疑問に対して、例えば②に関して、江戸幕府最後の将軍徳川慶喜は「大政奉還」をし、鳥羽伏見の戦いで敗れると、大阪から江戸へ逃げ返った「アンチヒーロー」として受け取られています。
しかし最近の研究では、慶喜の実像や慶喜が率いる政権の持つ意味合いが明らかになってきて、その政治手法が再評価され、慶喜なくして明治維新は実現しなかったことが分かってきました。詳細は・・・
いろんな分野の専門家が集まり、最新の歴史研究を踏まえて、上記の私の疑問に答えるような解が散りばめられています。
また、この本ではなく最近の放送でしたが、上記④の解として「小松帯刀」の再評価の放送もありました。
歴史に興味のある方には、是非お薦めいたします。
Posted by ブクログ
聡明で知られた慶喜ですが、自らの出自には、とらわれていました。自分の母親が皇族である。つまり天皇の親戚だと言うことで、他の兄弟たちよりも高い位置にあると言う意識を持ちます
よく徳川慶喜は、徳川幕府15代将軍、最後の将軍と呼ばれていますが、実は私は、京都幕府の初代将軍と言うべきでだと思っています
民主的な議会を作ることで、国民各層の中を結集する。それこそが、欧米と肩を並べる国づくりの基本であると、西郷は考えていたわけです
戦いが長い長引けば、西郷軍を見る周囲の目も変わってきます。あの西郷が率いる軍勢に寄せられる期待は徐々に薄れ、やがて、政府に逆らう賊軍を見る視線に変わってきます
歴史にifは必要です。ifを考えない歴史は役に立たない歴史になりがちです
歴史とは、過去の出来事を興味本位に拾い上げ、記録する営みにとどまるものでは決してありません。人生や社会を正しく運用していくための知識を集積し、必要に応じて引っ張り出せるレファレンスでなければならないと思います