【感想・ネタバレ】コンビニ人間のレビュー

コンビニのアルバイトとして18年働く、独身女性の古倉恵子36歳。
週5でシフトに入り、勤務態度はマニュアル通りの”正しい”対応。
店長から重宝され、同僚ともうまくやっている、はずでした。
新入りのアルバイトが入ってくるまでは…。

かく言う私もコンビニ店員として4年間働いていました。
正社員、歳の近い学生アルバイト、日中に働く40代の主婦、未婚(恐らく)の30歳以上の謎の人。
日本社会の縮図かと思えるほど様々な人がいますが、それぞれ自分の価値観で相手をみていて、
「自分こそが主人公」だと思っているはず。
本作は、「コンビニ店員である自分こそが、普通で正しい主人公」と考える恵子の主観が鮮明に描かれています。
「なぜコンビニ店員なのか」。これが神髄だと思います。

目まぐるしく変わる衝撃展開に魅了されたいあなたも、
世の中の“普通”について考えを深めたいあなたも、
1~2時間でサクッと本を読みたいあなたも。

世界各国で読まれていることからも、作品の魅力は語るに及ばずですが、
皆様に1度は読んでいただきたい名作です。

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ネタバレ

おもしろい

読後の最初の感想は、「今っぽい話だなぁ」でした。
私は小説を頭の中でしっかりと映像化する癖があり、俳優さんや女優さんを当てて読みます。そうすることでより入り込めます。
今回の主人公は黒木華さん、店長は長谷川博己さん、など。

主人公は周りとは少し"違う"という幼少期をすごし、極力自分から何かを発さないように過ごします。
ゆくゆく自分が"違う"部分を治すのではなく、周りの"普通"な人を真似てあたかも同じかのように振る舞い生きていく。
それが非常にスムーズでやりやすいと感じたのが、コンビニ。
"古倉さん"という店員として存在し、幼少期がどうだとか考え方がどうだとか、主人公の感情や生き方など誰も気にしない。
品出し・レジ・掃除など必要とされていることを必要な分こなすという生活を35歳まで、アルバイトのまま、未婚で、続けます。

そもそも、この「誰も気にしない」というのは"普通"の人なら寂しく感じることだろうと思うけれど、主人公はその環境が心地よく感じています。
今まで"違う"ということを押し付けられていたがために、コンビニの一部になれていることに幸福を感じている。
正直、今は社会でもプライベートにまったく介入しないというのがむしろ良しとされる風潮がありますよね。
若者に多いのが
有給を取る理由を言う必要があるか?
恋人の有無を教える必要があるか?
オンライン会議では部屋を映さない  とか。
何かとハラスメントでネーミングされます。

主人公のと訳が違うのは大前提ですが、
「迷惑をかけているわけではないのだから放っておいてくれ」というのは、今っぽいですよね。
白羽は迷惑かけまくってましたけど。

といった感じで、そのリアルな社会の感じが気分を暗くさせます。
それだけ入り込めるということだと思います。
いくらでも書けそうなので強引に締めました。

あと書いておきたかったのは途中で一瞬出てきた"主人公の成れの果て"の男性です。
お客の癖に商品を整理したり客の列を正したり。
白羽に促されるまま就職してしまったら、ああなっていた。
だから主人公の判断は正解で、ハッピーエンドだと思います。

#深い #タメになる

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2022年06月23日

ネタバレ 購入済み

読みやすくて

一気に読みました。発達障害者と思われる人物がコンビニで有能なバイトとして働く様子、ラストの決断に、ロッカーや正社員のふりなどは非常識な行為ではありますが、社会に大きな迷惑をかけるでもなく、この主人公がいきいきと輝ける場所があることを嬉しく思いました。

#タメになる

0
2021年09月20日

ネタバレ 購入済み

読みやすかった。

とても読みやすく面白かった。主人公の思考や価値観が淡々と語られている。考えさせられる内容ではあるが、読後感は意外とすっきり。

0
2020年04月25日

Posted by ブクログ

ネタバレ

コミカルながら含蓄に富んだ面白い小説だった。

主人公が、言われたことを実直に実行する超絶マニュアル人間で、さらには、いわゆる「普通の人」の倫理観を持ち合わせていない。
喧嘩を止めてと言われたらスコップで殴り倒してでも止める。
泣いてる子供を見たときにナイフを見ながら、静かにさせるだけなら簡単なのに、と考える。
普通に見られるために、男を家に住まわせる。
実際だったらドン引きモノだけど笑ってしまった笑

一方で、摂取する世界が変わって自分が変わるといったことや、人が普段どれだけ自分にとっての普通を押し付けているのかといった、人間社会の表現が深くて考えさせられた。

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2024年06月12日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 最後の数行を読んで、「産声」「脈打つ」という言葉が頭に浮かんだ。動物的で、生命力に満ちているような感じ。読んでいるこっちまで体温が上がって、耳奥で拍動を感じた。伝染かな。
 物語の始まりからずっと、古倉さんには無機質さを感じていたけど、最後に裏切られたなあ。いい意味でね。

 作中に限らず、自分の生活の中でも「普通」を要請するような声に煩わしさを感じることはある。とはいえ、それもみんな動物だから仕方ないのかも、と思った。
 「わからない」は怖い。それらしい定義や手順、理由があれば、それが実際にはないものだとしても、安心感は手に入れられる。生命維持のための秘訣として、「普通」を作ることの獲得だって、動物としての本能と表現できないかな?

 作品の中に仕込まれているエッセンスやヒントをいまいち理解できてない感覚が残っている。全体的に今まで味わったことのない作風。違う作品も読んでみたいな。

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2024年06月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

誰に教えられなくても分かる当たり前のこと分からない主人公。
表情から仕事内容まで、全てがマニュアル化されているコンビニ店員は彼女にとって自分を人間にしてくれる空間だった。
大学生になってコンビニバイトを始めてから18年間アルバイトとしてコンビニで働く。その18年間の中で彼女なりにコンビニ店員として処世術を身につけていくが、歳を重ねることで人間として求められていくものも変化し…


主人公ほどではなくてもこの世界に生きにくさを抱えていたり、みんなと違うことに苦しむ人は多いと思います。「喧嘩をとめて」と言われた主人公がスコップで同級生を殴ったシーンでは、衝撃とともに彼女の「これが一番早いと思った」という発言に少し納得してしまいました。感覚的なことを理解できない彼女にとっては目的は喧嘩を止めること。一般的な人が思うような暴力は良くないとか、怪我をさせてしまうということが分からない、もしくは言葉として分かっていても今いちばん優先するべき「喧嘩を止める」という目的を果たすためにそうしない理由が分からない。
この主人公にまだ救いがあったのは家族に愛され家族を愛していたことかなと思います。

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2024年06月08日

ネタバレ

まず読み始めて、主人公は発達障害の傾向が強いなと思いました。
私自身ASDの診断を受けており、主人公には共感する部分が多い、というよりも、私が書いた日記を読んでいるかのような感覚でした。

作中で、主人公が妹に「いつになったら治るのか」「どうすれば普通になるのか」というように責められる場面があります。それに対する「指示をくれれば私はどうだっていい。ちゃんと的確に教えてよ」という主人公の言葉は、まさに私の主張そのものでした。主人公や私のような人間は、周りの要望に応えるためにわざわざ行動しようとしているというのに、一体どうして具体的な改善案を出してくれないのでしょうか。こちらが歩み寄ろうとしているのに、一方的に糾弾してくるなんて、どう考えても非があるのはあちらではないのでしょうか。

自分自身のモヤモヤが物語になった、というような作品で、共感は得られましたが、感動や新たな発見はありませんでした。

#ほのぼの

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2022年07月16日

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