あらすじ
日本が世界に誇る宗教哲学者・鈴木大拙は明治3年(1870年)に生まれ、若くして禅の奥義を体得、27歳で渡米して10余年にわたって仏教活動を展開する。戦後も欧米の多くの大学で講義をするとともに、一流の思想家や哲学者と交流しながら、95歳で没するまで仏教の人間観や世界観を広め世界から注目される。禅や日本浄土教に基づく広く深い思想から発せられた言葉を、膨大な著作や同時代に生きた人々の証言から選んで解説。
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Posted by ブクログ
鈴木大拙の39のことばを引用し、その意味をわかりやすく解説している本です。また巻末には大拙の生涯をコンパクトにまとめた文章も収録されています。
著者は、大拙の思想の継承者である秋月龍珉の弟子であり、いわば大拙の孫弟子にあたる仏教研究者です。大拙の禅理解に対しては、実証的な仏教学の立場から批判がなされており、近年では沖本克己の『禅―沈黙と饒舌の仏教史』(2017年、講談社選書メチエ)で厳しい評価がくだされていますが、大拙の思想が彼独自のものであるとしても、近代日本の思想史・宗教史において重要な位置を占めることはたしかだといってよいでしょう。本書は、大拙の思想を示す章句を紹介し、大拙の禅思想の世界へと読者をみちびく手引きとして、良書なのではないかと思います。
たいへんコンパクトな本なので、この一冊で大拙の思想がわかるというわけにはいきませんが、すくなくともその魅力の一端に触れることができたように感じました。