あらすじ
「僕は地面に杭を打ち込むように、吹けば飛ぶ芸術から
どうやっても動かない聖地をつくろうとした。」
“現代アートの聖地”はなぜ、どのようにして生まれたのか?
仕掛け人が明かす圧巻のドキュメンタリー
「一生に一度は訪れたい場所」として、国内のみならず
世界中から観光客がこぞって押し寄せる、瀬戸内海に浮かぶ島・直島。
そこは、人口3000人ほどの小さな島ながら、草間彌生や宮島達男、安藤忠雄ら
錚々たるアーティストたちの作品がひしめきあう「現代アートの聖地」となっている。
世界に類を見ないこの場所は、
いったいなぜ、どのようにして生まれたのか?
今まで、その知名度とは裏腹にほとんど語られてこなかった誕生の経緯を、
1991年から15年間、ベネッセで直島プロジェクトを担当し、
「家プロジェクト」や地中美術館などの画期的な作品群・美術館を生み出した
仕掛け人が、2006年に島を離れて以降初めて、自らの経験をもとに語り尽くす。
そこには、暗闇のなかでも諦めずがむしゃらに挑戦し続けるひとりの人間の姿があり、
その苦闘の末に生み出されるのは、あらゆる理不尽を飲み込み
時代を超えて受け継がれる奇跡のようなアートの数々である。
「それはまるで、一流のアスリートがオリンピックという晴れの舞台で世界記録を出すような瞬間である。単なる一流選手の個人の記録を超え、なにか時代を画する、時代を次のフェーズに動かしていくような奇跡のような記録を残す。そういう作品を、アーティストが直島で制作することを望んだ。そうでもしなければ、あの小さな島に誰かが注目してくれることなどないと思ったのだ。」(本文より)
◯目次
PROLOGUE はじまりの直島
第1章 「直島」まで
第2章 絶望と挑戦の日々
第3章 暗闇のなかを突っ走れ
第4章 現代アートは島を救えるか
第5章 そして「聖地」が誕生した
EPILOGUE まだ見ぬものを求めて
安藤忠雄氏による特別寄稿
直島に関する参考資料
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
凄かった!ライターをしていた著者が、ベネッセの学芸員として採用され、直島に現代アートを展開する経緯が克明に語られる。当初からの計画ではなく、いろいろな制約を受ける中で突破していくうちに美術館の外側にも展開し、島全体に及んでいったものだったとは。圧巻なのは最終に近い、地中美術館を生み出していくくだり。著者は途中、直島でやっていることの説明として、キュレーター中心からアーティスト中心への変化を語っていたが、地中美術館はキュレーターである著者も作品を読み込み、それに相応しい場所を創造し、ほぼ同じアーティストとして(もしくはアーティスト、建築家とがっぷり四つに組んで)生み出したものであると言えるだろう。凄まじい創造のエネルギーを文中からも感じた。福武氏との緊張感のある相剋も描かれ、読み応えがあった。直島のアート作品が生み出された経緯もわかり、ますます直島に行ってみたくなった。ライターの経験がある著者の文章は、臨場感あふれてぐいぐい読めるしわかりやすい。ミュージアムを作る時、展示を作る時に何を考えて作るのかについても明快に語られており、参考になった。
Posted by ブクログ
今年の夏休みに直島を訪れた際に感銘を受け、アートの島がどのように形成されたのか興味をもちこの本を手に取った。
期待通り、直島が瀬戸内の小島から現代アートの聖地と呼ばれるまでに変貌を遂げていく様子が現場のアートディレクターという立場から臨場感をもって描かれておりとても面白かった。福武さん、安藤さんやアーティストたちといった主要プレーヤーを繋ぎ、支える著者の働きがあったからこそ直島はここまで変われたのだろう。
現代アート市場の交渉現場や、タレル、デマリアなど直島に作品を展示するアーティストのリアルな姿などアートシーンの記述も興味深かった。
直島を訪れた方、これから訪れる方にぜひお薦めしたい本。
Posted by ブクログ
直島は、2014年1月に回ったけど、有料施設は入らない主義なので、この本に書かれているベネッセミュージアムや地中美術館は見てなかった。次回、行けたらゼッタイ観て回りたくなる本です。
Posted by ブクログ
瀬戸内海の小さな島がなぜ世界的な現代アートの聖地となったのか?その答えが得られる本。
直島のアートシーンをつくり上げる中核を担った筆者が、アーティストや島民など関係者との関りも含めて、アートの背景にある物語を詳細に描いている。
直島のアートだけではなく、現代アート全般に関する理解にもつながる話があり勉強になる。
その場所に行かなければ見られないもの、体感できないもの。
この本を読めば直島でのアート体験が格段に違ってくる。
Posted by ブクログ
芸術の島直島の立ち上げ頃からベネッセ中途入社社員として関わってきた秋元氏の直島誕生の回想録。
芸術がひとつの島を聖地にし、瀬戸内を活性化した経緯を克明に記す。
金と人が両方うまく回った稀有のケース。
そういう意味では越後妻有はパトロンという意味ではホント凄い。
Posted by ブクログ
あれは2000年か2001年だった。かねてから興味を持っていた直島を知人の紹介で訪問し、全くの素人ながら、現代アートの島に激しい衝撃を受けた。本書に登場した地元の菊田さんに案内してもらい、恐らく秋元氏にも会っていたのではないか。本村地区の家プロジェクトは、開館時間を過ぎていたのに、案内いただき、そこには福武夫人もいらっしゃった。最も印象に残ったのは、安藤忠雄建築でジェームズ・タレル作品の南寺である。暗闇に案内され、待つこと15分、微かな光を認識するようになると見えてくるアートに、完全に心を奪われた。そして翌日に大阪に行くと、梅田茶屋町で真っ白なスーツ姿の安藤忠雄氏に遭遇。以来、ずっと直島が自分の現代アート鑑賞の基準である。
本書で直島が形作られる様を知り、秋元氏の普遍性とは独自性である、との言葉が沁みた。
知己のルクセンブルクの弁護士が新婚旅行で直島に行ったというほど、メジャーな存在となった直島。天邪鬼としては、盛り上がりが治った頃に、再訪して地中美術館を訪れたい。
Posted by ブクログ
直島を一気に復興させ、アートの島としての知名度を築く過程が詳細に書かれていた。内容が細かいため流し読みしてしまった部分も多いが、アートにかけた熱量が凄く伝わってきて、良い一冊だった。
Posted by ブクログ
会社員として、直島を現代アートの聖地にした立役者の物語。
「芸術を目指すとは、なんとも夢見ごちで現実離れしたことか」という言葉が印象的。
アートという言葉を聞くと華やかなイメージを浮かべるが、実際はアーティスト、建築家、オーナーとの苦闘が続いた先に展示がある。
Posted by ブクログ
アートは難しい。感性の問題ももちろんだが、有名どころを集めてみてもテーマの一貫性の面で、見る側にも違和感を抱かせるに至ってしまう。
本書でも、上記のような視点が記載されている場面がある。著者の面接時のエピソードだ。詳しく書くとネタバレになってしまうので割愛するが、ここの描写は思わずクスッとしてしまうような人間味ある話となっているのでぜひご一読いただきたい。
芸術に関心が薄くとも、本書は多方面で楽しめる作りとなっているので少しでも興味が湧いたのであれば、ぜひ手に取っていただきたい。
Posted by ブクログ
今や現代アートの先進地として、また、地域活性化の成功事例として海外でも評価が高い直島。このアートの島の誕生にキュレーターとして関わった秋元氏の奮闘記。直島がどのように変化していったのかがよくわかる。やはりキーとなるのは現場の思いだろう。福武さんの英断、資金、交友関係もなくてはならないが、秋元氏の考え抜く、突き詰める、諦めない姿勢が組織や島民、芸術家を動かしてしていったのだと感じる。ここでも本質を見極める姿勢が大事だったのだと感じる。
Posted by ブクログ
直島のアートプロジェクトを手がけた筆者の、立ち上げにまつわる苦労話やエピソードを紹介。
特に、迫力あるのは、ジェームスタレルを招聘した南寺という作品だろう。体験型のこの光のアーティストは、長い時間をかけて光が飛び込んでくる様をアートにした。実際、ちょっと不安になるくらい真っ暗だから、人はいかに暗闇を畏怖するのかと思ったくらい。
そして、モネの睡蓮を飾ることになる地中美術館、これはMOMAで目の前にしたモネの絵の感動と、同じくらい素晴らしい体験だった。教会のようだという表現が本書にもあったが、まさにそんな神聖な感覚を持つ。こんな美術館は他にない。自分がどこにいるのか一瞬忘れるような体験。そして、ジェームスタレルのオープンスカイと、デマリアの作品も本当に素晴らしい。直島に行くと、必ず足を運ばなくてはいけない作品だったし、これからも行くことになるんだろうなと思っている。この建築を安藤忠雄の意図と、各アーティストの作り方とを合わせていくのは至難の技だったはずだが、それを乗り越えて、実現した世界観は本当にすごいと思った。壮大な挑戦の後で行った人には、この困難かつ努力はわかるまい。本書を読んでよかった。
Posted by ブクログ
「豊島」に行ったことがある
それも海路を伝い船で行ったことがある
もう何十年も前のことである
瀬戸内海の汚染の傷跡を巡る旅だった
「豊島」の港に降り立った時に
産廃の撤去運動をしておられた
猟師さんのお話を聞かせてもらった
そのすぐ近くに
「直島」という島があることを
教えていただいた
「直島」が現代アートの聖地と呼ばれるようになった
と見聞した時に
東京の「両国」のことを想ってしまった
江戸期に刑場としてあった場所が
そののち見世物小屋、芝居小屋、相撲興業、…
いわゆる庶民が寄り集う歓楽街になっていった
という史実を重ねていた
そんな意味で気になっている場所の
一つが この「直島」である
いつか 行くかもしれない
それが いつのことになるやら
自分でも わからない
ただ わかることは
みんなが 行くなら
私は 行かないなぁ
そんな 場所のひとつになっている