あらすじ
今、日本の「リベラル」は世界基準のリベラリズムから脱落しつつある。
再び希望を取り戻すには、どうしたらいいのか?
若者が自民党を支持するワケからネトウヨの実態、リベラルの未来像まで、
世界の大潮流から読み解く、再生のための愛の劇薬処方箋!
目次
●PART1 「リベラル」と「保守」が逆転する不思議の国
1 安倍政権はリベラル
若者の「右傾化」は教育が悪いのか
不思議の国のアリス
変わらなければ生き残れない
3人の「ポピュリスト」
右傾化する「リベラル」政党
安倍政権は旧民主党のコピー
「一億総活躍」以外にどうしようもない社会
「リベラル」の欺瞞
2 リベラル化する世界
三位一体の巨大な潮流
「右傾化」というバックラッシュ
アメリカでは「人種差別」は減っている
今の男性は1970年代の女性よりフェミニスト
リベラルは勝利したことで敗北する
日本でも「リベラル化」は進んでいる
●PART2 アイデンティティという病
3 「ネトウヨ」とは誰のことか
非マイノリティポリティクス
「白人至上主義者」はネトウヨ
「人種差別」をしないレイシスト
「絶望死」する白人たち
日本人アイデンティティ主義
「在日認定」とはなにか
離島は「乗っ取れる」か
誇るものの価値
4 正義依存症と愛国原理主義
「俺たち」と「奴ら」
「正義依存症」のひとびと
「愛と絆」による差別
思想的リーダーの誕生
右派論壇のポストモダンとエンタメ化
右派論壇の「愛国原理主義」
愛国の哲学者
右翼と「愛国リベラル」
「加害」と「被害」の非対称性
“右傾化”の正体
●PART3 リバタニアとドメスティックス
5 グローバルスタンダードの「リベラル」
「己の欲せざるところ、他に施すことなかれ」
ダブルスタンダードの罠
リベラルの「理想社会」
リベラルを懐疑する「保守」
無知のヴェールと「格差原理」
チンパンジーにも「正義」はある
4つの政治思想
サイバーリバタリアン
知性主義と反知性主義
6 「保守」はなぜ「リベラル」に勝つのか
チキンで性行為をすることは許されるか
6つの道徳基盤
「保守派部族」と「リベラル部族」
アイデンティティとしての政治
ビヨンセはなぜアメリカ国歌を歌ったのか
グローバル空間の「リベラル共和国」
「安倍一強」の秘密
●PART4 「リベラル」と「保守」の進化論
7 きれいごとはなぜうさん臭いのか
ニューリッチはリベラルの牙城
道徳の貯金箱
「きれいごと」はなんにでも使える
潜在的な偏見を可視化する
8 リベラルはなぜ金持ちなのか
政治的態度の遺伝率
知能と政治的態度の相関
ネオフィリアとネオフォビア
雑食動物のジレンマ
3歳児の「リベラル」と「保守」
「リベラル」と「保守」の遺伝子を探す
イデオロギーは匂うか
「リベラル」が嫌われるほんとうの理由
エピローグ サイバー空間のイデオロギー戦争
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
ネトウヨ:日本人であること以外に誇るものがない日本人アイデンティティ主義者 とう言う定義腑に落ちる。国の経済力が落ちて、劣化が進む日本で、日本のリベラルに必要なのは、保守化した「リベラル高齢者」の既得権を破壊する勇気、すごく腹落ち感があって面白かった。これを書いている著者が60歳で、若くなく、この本を出した出版社が朝日新聞出版と言うのも面白かった。
Posted by ブクログ
橘氏らしい、データに裏打ちされた議論。
本来リベラルが取るべき政策を、野党・及びマスメディアが避けている。安倍政権はもうこれ以上の右には展開する必要なく、リベラル政策を選挙公約に掲げ、しっかりと勝利している。
朝日新聞や毎日新聞、民進党や立憲民主党はこの本の問いかけにどうこたえるのであろうか?
Posted by ブクログ
朝日嫌い 2018
2022/01/03(月)記述
朝日嫌い よりよい世界のためのリベラル進化論
橘玲氏による著作。
2018年6月30日第1刷発行
題名に朝日と出している。
これは日本のリベラルの象徴として朝日としているだけだ。
リベラル嫌いという題名でもある。
その理由を考察した本だ。
今(2022/01/03)レビューを書いているけれども、
もしもっとこの本の指摘する所を立憲民主党が意識していれば
2021年10月の衆議院選挙でももう少しマシな結果になったのではないか。
今更ではあるが・・・
それだけに本書の指摘をもう少し正面から受け止め改善しないと
日本のリベラルに未来は無いと思う。
懸念するとすれば、れいわ新選組のような一見リベラル主義の政党が国債は借金にあらずとするMMT理論(無限に国債発行は出来ないので勿論誤りの思想だ)に傾注し、無限にバラマキ政策ができると盲信していることだ。無限に国債が発行できるのなら、税金や社会保険料は無料でも問題ないはずだ。だから既存のリベラル以上に悪質だれいわ新選組は。
野党共闘路線を取り続ける限り、立憲民主党に未来は無いだろうから根本的に足元から変えていくことを期待したい。
印象に残った点
重層的な差別である日本型雇用を容認しながら、口先だけで「リベラル」を唱えても
誰も信用しなくなるのは当たり前だ。
リベラリズムを蝕むのは「右(ネトウヨ)」からの攻撃ではなく、自らのダブルスタンダードだ。
日本のリベラルにいま必要なのは、保守化した「リベラル高齢者」の既得権を破壊する勇気だ。年金も健康保険も終身雇用も年功序列も何一つ変えないまま、若者に夢を与える未来を描くことなどできるはずはない。
「リベラル」を名乗る組織は、リベラルがどのようなものかを身をもって示す責任を負っている。多くの人がそれを見て、「自分もあんな風になりたい」と思うことで社会は前に進んでいくのだ。
リベラルとは、本来は「Better World(よりよい世界)」「Better Future(よりよい未来)」を語る思想のはずだ。だがいつの間にか日本の「リベラル」は、憲法にせよ、日本的雇用にせよ(あるいは築地市場の場所まで!)現状を変えることに頑強に反対するようになった。「改革」を否定するのは保守・伝統主義であり、守旧派であろう。
これは「戦後リベラル」を担う層が高齢化して、「何一つ変えない」ことが彼らの利益になったということでもある。
リベラルの失敗は、「自衛隊は憲法違反だ」と叫んでいるうちに憲法改正を右翼・保守派に先取りされたことだ。その結果、北朝鮮のミサイルが上空を通過するようになって「9条に陸海空軍その他の戦力は、これを保持しないとあっても個別的自衛権は自然権なので自衛隊は合憲だ(ただし集団的自衛権は認められない)」という苦しい理屈を繰り返さざるを得なくなった。しかしこれでは、「だったらなんでそう書いちゃいけないの」という子供の疑問に答えられないだろう。
憲法改正を拒絶するリベラルな憲法学者は、複雑怪奇な理論によって自らの主張を正当化しようとするが、これは「無知な大衆は黙って従え」というエリート主義そのものだ。
憲法はすべての国民のものなのだから、アカデミズムの密教の中に囲い込むのではなく、中学生や高校生でもわかるように書き直していくべきだ。
日本は未だに、イエを単位とした前近代的社会から個人を単位とした近代的社会に移行できていない。憲法24条の「両性の合意」を「双方の合意」に改正するとともに戸籍制度を廃止し、資産や親権を共同でもてるシンプルな家族制度にするべきだ。
年金や健康保険などの社会保障もイエ単位になっているが、家族の多様化で矛盾が拡大している。北欧などと同じく、これも個人単位に変えていくべきだろう。
日本統治時代の名残で韓国には戸籍制度があったが2008年に廃止された
仲間たちがどこまでなら許し、どこから許さないかを正確に知るには、高度な「道徳センター」を持っていなければならない。これは一般に「良心」といわれる。
すなわち道徳的社会では、繊細な良心(高機能の道徳センサー)と高い知能を持つ者がもっとも効果的に抜け駆けできる。良心はひとびとを社会のルールに従わせるために内面化されたが、それを仲間を出し抜くために使うこともできるのだ。
きれいごとを言う人は、道徳の貯金箱がプラスになったように(無意識に)思っているので、現実には差別的になるのだ。
安倍一強の秘密を読み解くこともできる。
それは以下の4つの戦略の組み合わせだ。
1国際社会では「リベラル」
2若者に対しては「ネオリベ」
3既存の支持者に対しては「保守」
4日本人アイデンティティ主義者に対しては「ネトウヨ」
「モリカケ問題」で権力基盤が揺らいでいるとはいえ、これが現代日本においてもっとも広範な支持者を確保する最強の戦略であることは間違いない。とりわけ有利なのは、中国や韓国・北朝鮮に強硬なポーズを取り「朝日」「民主党」を批判することで、最も面倒なネトウヨを「私設応援団」にできることだろう。
現代社会が抱える問題とは、先進国でも新興国でも、知識社会から脱落し、仕事や恋愛での自己実現に失敗し、「たったひとつのアイデンティティしかもてなくなったひと」がますます増えていることだ。彼らのアイデンティティはきわめて脆弱なので、それを侵す(と感じられる)他者に激烈な反応を示す。
原理主義的なイスラームを説くウラマー(イスラーム知識人)に共通するのは、栄光あるイスラームを蹂躙した西欧の植民地主義への怒りと、自分たちがイスラーム世界の周辺に追いやられ、差別されていることへのルサンチマンだ。この憎悪が、ISのプロパガンダと強く共振することはいうまでもない。
同様に、「愛国原理主義」を説く右派論壇にもリベラルへの強いルサンチマンが感じられる。それはおそらく、自分たちが「知」の主流派(エスタブリッシュメント)から排除されてきたという屈折から来るものなのだろう。
同様のルサンチマンは、金融緩和政策を強硬に主張し、エスタブリッシュメントである日銀を執拗に批判したリフレ派と呼ばれる一郡の経済学者やエコノミストにも見ることができる。しかしこれも日本に特有の現象ではなく、アメリカの一流大学は「リベラルの牙城」でそこに加わることができない右派の「思想的リーダー」から激しい憎悪を向けられている。
(*おそらく藤井聡や三橋貴明のことであろう)
同様に道徳に反した者を罰すると、それを見ただけで脳からドーパミンが放出される。こうした傾向は男性に特に顕著で、ネトウヨがアルコール依存症やギャンブル依存症、ドラッグ中毒と同じ、インターネット社会が生み出した病理現象=正義依存症であることを示している。
正義依存症はもちろんネトウヨだけではない。「反安倍」や「反原発」でえんえんと呪詛の言葉を書き連ねるのも同じだし、女性タレントの不倫から男性ミュージシャンの不倫を暴いた週刊誌まで、匿名の「正義」を振りかざす機会をさがしてネットを徘徊するのも同類だ。
ネットメディアの世界では、もっともアクセスを稼ぐ記事が有名人のゴシップ(噂話)と正義の話だというのはよく知られている。「こんな不正は許せない」という話にひとはものすごく敏感だ。
ふつうのひとたちが不道徳な政治家や芸能人、犯罪容疑者を夢中になってバッシングするのは、それが共同体を維持するのにもっともコストの安い方法だからだ。
「正義は快楽である」これだけだ。
復讐はもっとも純粋な正義の行使で、仇討ちの物語はあらゆる社会で古来語り伝えられてきた。脳の画像を撮影すると、復讐や報復を考えるときに活性化する部位は、快楽を感じる部位と極めて近い。道徳的な不正を働いた者をバッシングすることは、セックスと同じような快楽をもたらすのだ。
日本の右傾化とは嫌韓・反中を利用した日本人の「アイデンティティ回復運動」のことなのだ。
1970年から1995年までのアメリカの大学生男女の意識について調べると、「女性は自分の権利を心配するよりも良妻賢母になることを考えるべきだ」などの質問項目に対し、1990年前半の男性は1970年代の女性よりも高いフェミニスト意識を持っている。
先進国では、今や誰もがフェミニストなのだ。
この歴史的変化に伴って、妻に対するDV(ドメスティックバイオレンス)も急速に減っている。
アメリカでは(日本でも)つい最近まで夫が妻を殴ることは犯罪とは見なされなかったし、不倫をした妻を殺すことには叙情酌量の余地があると考えられてきた。
1987年には「男性が妻をベルトやステッキで殴るのは一様に悪いこと」と考えているアメリカ人は全体の半分しかいなかったが、それが10年後の1997年には86%まで大きく増えた。同様に、今では80%以上のアメリカ人がDVを「社会的にも法的にも非常に重要な問題」と考え、99%が「男性が妻を負傷させた場合は法的介入が必要」と回答している。
レイプと同様にこの20年で、夫婦であっても女性への暴力は強く忌避されるようになったのだ。
「反知性主義・グローバリズム批判・保守化」というのは、愛煙家による「嫌煙ファシズム」批判と同じで、行き過ぎた「知識社会化・グローバル化・リベラル化」に対するバックラッシュ(反動)なのだ。
知識社会というのはその定義上、知能の高い人が大きなアドバンテージを持つ社会だ。知識社会化が進むということは、仕事に必要とされる知能のハードルが上がるということでもある。そう考えれば、「知識社会化=グローバル化=リベラル化」が三位一体で進むにつれてそこから脱落する人が増えるのは避けられない。これが「中流の崩壊」と呼ばれる現象で、欧米では彼らの怒りが社会の保守化=右傾化を招いている。
シリコンバレー型の「リベラル」とは、普遍的な人権を前提として、グローバル市場から能力=知能のみで労働者を平等に選抜・採用し、そこから生み出されたイノベイティブな商品やサービスをグローバル市場に平等に提供するビジネスモデルのことなのだ。
ここに日本の「リベラル」の欺瞞がある。彼らは差別に反対しながら、自らが「差別」する側にいるのだ。
これを手短に要約すると、「日本のサラリーマンは過労死するほど長時間働いているが、生産性がものすごく低く、世界でいちばん会社を憎んでいる」ということになる。
日本社会は「既得権にしがみつかないと生きていけない世代」と「既得権を破壊しなければ希望のない世代」によって分断されている。「リベラル」を自称するひとたちは世代間対立論を毛嫌いするが、これ以外に高齢者と若者で右と左が逆転する理由は説明できない。
Posted by ブクログ
完全に好き嫌い分かれるだろう本だけど、やっぱり橘玲の本は面白い。
自分は「リベラル」と「ネオリベ」の中間にあたる価値観を持っていることも本書を読んで客観的に感じることができた。
自分の考えや価値観が「どこにあたるのか」を知っておくことで、友人関係などに応用できるんじゃないかなと思う
Posted by ブクログ
著者が「はじめに」で書いていたように、これは決して朝日新聞を批判するものでも擁護するものでもない。その現代の傾向をもとに、「保守」「リベラル」など政治志向とはなんなのかを根本から整理する内容。
保守は保守、リベラルはリベラルではなく、時代の状況やステイクホルダーにより、相対的に変化していくもの。
それを「右傾化」「アイデンティティ主義」というキーワードで紐解いていく。日本の安倍一強の謎についても腹落ちした。
いま一度、保守・リベラル・リバタリアン・ネオリベを理解し直し、さらにサイバーリバタリアンの動向にも注目したい。
社会的な動物である人間の世界を生き抜くための教養書。
Posted by ブクログ
さすが橘玲さんとしか言い様がない内容。保守とリベラルについての話では今まで読んだもので一番わかりやすかった。「言ってはいけない」をはじめ、遺伝についての後半は私の咀嚼力を超える話題が多いので解釈が難しい。本文ではセントリズムを貫いて書かれているだけに本気の本音のあとがきは痛快。大変に良い本です。
Posted by ブクログ
流石橘氏だ。リベラルと保守の関係性と変遷が、日本だけでなくグローバルに考察され、入門書のように非常に分かり易いにも関わらず、専門書を長々と読まなくてもズバッと結論を引き出してくれている。これは3000円くらいでも買って損はない本です。政治に興味なくてもスッと入っていける一冊です。オススメ。しかしタイトルが今一つだと思うな、インパクトはあるが。
Posted by ブクログ
タイトルに惹かれて…
じゃなくて朝日新書が本書を出すんや〜
まだまだ朝日も捨てたもんやないなと即買いでしたd(^_^o)
朝日的なもの=戦後民主主義がなぜ若者に嫌われるかというところを順序立てて説明されています。
詳しくは本書を読んでいただくとして
朝日的なものはリベラル高齢者やシニア左翼の既得権益を守る立場なので
「明日は今日よりずっと良くなる」
という本来のリベラルの価値観を若者に示すことができないと。
こう読むと右とか左とか保守とかリベラルとか昔のカテゴライズは今の日本では無意味なのかなとおもいます。
世界的には保守もリベラルも愛国というパトリオティズムが前提になるはずが愛国=軍国としてきた戦後民主主義は今更何も変えられないんですよね。
いや「何一つ変えないこと」「既得権益を守ること」が朝日的な考え方なのかもしれませんが。
個人的には功利主義的な思想なんやなとおもいます。
AIをはじめとした強大なテクノロジーの発展は社会を最適化する方向に進むと思うからです。
ただ僕はBIの可能性を捨ててないので著者とは少し違う考え方かもしれません。
本書は通して一気に読めると思います。
ただもう一回読み直さないと意味理解は深まらないかなと思います。
Posted by ブクログ
面白かった→
リベラルな政策の選択肢を先に政権与党に奪われ、高齢の正規職員で構成される労働組合を支持基盤に持つ野党が保守的な政策の選択肢を選んでしまうってとこ。
Posted by ブクログ
リベラルとか、保守ってなんだっけ?いかにしてなるもの?というものを調査結果を用いつつ明らかにしている本。
リベラルとか保守、いまいちよくわからんという方には一読の価値あり。
Posted by ブクログ
中公新書の「戦後民主主義」を読んで、民主主義の来た道、行く道を考えるには、「戦後民主主義」の気分を作ってきた朝日新聞研究だろ、と思い開いた本です。書名から完全に感情的朝日ディスリ本パターンかな、と思い積読本にしていたのですが、内容は全然違う目鱗な本でした。初・橘玲です。ミチコ・カクタニの「真実の終わり」でショックを受けたポスト・モダンが反知性主義を生んだ、ということが端的に論理的にピシッピシッと語られています。そして、「保守」がなぜ「リベラル」に勝つのか、の説明に用いられる「道徳の味覚」というロジックも衝撃。しかし、グローバルでは結果的に「リベラル」が「保守」を凌駕するという再転現象も納得。ビヨンセがオバマ大統領の就任式で国家を歌う意味を市場性というテーマで説明していて、なるほど・ザ・ワールド。人間という生き物の生存戦略としてのネオフィリア(新奇好み)とネオフォビア(新奇嫌い)のストラグルも説得力ありあり。「雑食動物のジレンマ」のアナロジー、これから自分でも使いまくりそう。そして心理学、遺伝子まで話は広がり、イデオロギーは匂うか?みたいなテーマまで振り回されます。そして、最後の最後、「リベラル高齢者」「シニア左翼」の牙城となった「朝日的」なるものにブーメランみたいに戻って来るのでありました。男はつらいよ、がファンタジーであるように朝日はつらいよ、からは若い世代へのストーリーは動き出さないかも…
Posted by ブクログ
現状認識は全く同感。
リベラル化していること、その結果が能力のみによる選抜となること、それに対して従来のマジョリティ、既得権益層の反発が各国で起きていること、彼らの主張が非論理的であること、リベラル派のダブルスタンダードが弱点であること、いちいちごもっとも。
しかし、著者の結論であるさらにリベラル化、グローバル化をすすめるべきというのには疑問。これまでの歴史の失敗例である理性万能主義を感じる。
本の中にもあるが、人間はそれほど理性的か?現在のリベラルの考えは19世紀にはあったが、遅々として進まなかった。
国家や地域の中間団体、家族が残る限り、すべてが個人として平等に扱われることはないだろう。
しかし、リベラル化と反対派の摩擦はますます大きくなっていく。
なお、著者のリベラルと保守の遺伝子とか匂いで同種の異性がわかるとかトンデモくさいし、人種による知能指数と同じ傾向を感じる。両極端は一致するか。
Posted by ブクログ
もちろん、タイトルに釣られました(笑)。
ただ内容はタイトルから想像するような表層的なものではなく(著者も冒頭に断っていますが)、非常に深い。
現代日本の保守派とリベラル派の行動が逆転している現状を戦後から分析したうえで、世界的に考察を広げて深く保守派とリベラル派を深掘りしている。
橘玲さんの著作は好きで結構読む。こういう政治的な姿勢を深掘りした著作は必ずしも100%合うわけではないので賛同できない面もあるが、その豊富な知識と卓越した考察には毎回張り倒される。
不思議の国、日本を冷静に考えることができる一冊である。
Posted by ブクログ
自分がリベラルであると自認するならば、論理的帰結はこうなるという事が示された本です。
最新の生物学、経済学の理論をベースに書かれており、非常に面白いです。
が同時に毒があります。
リベラルであるか、保守であるかは、遺伝学的に決まる部分があるのではないかという事を示唆しています。
遺伝学的な要素が自分の行動を決定する範囲が大きいという事は、部分的にはマーケティングでアプローチする層を特定できるかもしれない、という結論に至りそうです。
将来自分の遺伝子情報からマーケティングが行われているかもしれません。
Posted by ブクログ
タイトルが誤解を招きやすいが、朝日新聞を糾弾する本ではない。
日本のリベラルと称する勢力が、実はグローバルな視点からは既得権益にしがみつく保守層である、ということ整理してみせている。
p.232「今必要なのは、すべての労働者が身分や性別、国籍に関係なく「個人」として平等に扱われるグローバルスタンダードのリベラルな労働制度に変えていくことだ」との意見に賛同する。
Posted by ブクログ
「安部政権はリベラル」だという主張にのっけからガツンとやられる。そして、その強さの秘密に納得。「リベラル」や「保守」というものを如何に理解していないか、単なるイメージでしか捉えていないんだな、ということを思い知らされた。
政治思想をもっとよく勉強しよう。
そして、橘玲氏は、やはり好きな書き手である。
Posted by ブクログ
世界でも日本でもひとびとの価値観は確実にリベラルになっている。リベラルが退潮しているように見えるのは、朝日新聞に代表される日本のリベラリズム(戦後民主主義)がグローバルスタンダードから脱落しつつあるからだ。
朝日新聞出版が発行しているのは、とりあえずはえらいと思いました。由来は、戦後の非愛国リベラル教育+人口不均衡+男性支配、あたりか。
Posted by ブクログ
リベラルが世界の主流派なのに、なぜ日本のリベラルが信用されないのか、が良く分かりました。返す刀で日本のネトウヨの問題点も指摘しています。
筆者が戦後民主主義でもなく、ネトウヨでもない第三の道を行こうとしているのは理解できました。
ただ、途中の論旨がやや脱線気味で、少し冗長にも感じました。
Posted by ブクログ
橘節満載。面白い。
論点: 安倍政権の政策はリベラル政策。
世界は、急速にリベラル化している。今の保守層だって、その言動は、50年前の中間層よりもずっとリベラルより。
リベラルは、どの国の国内でも少数派だが、世界全体で見ると、他の国のリベラル層と連帯できるために多数派になる。保守層は、国内では多数は出会っても、ナショナリスト(自分たちの優位性を守りたい)であるために、他の国の保守層と連帯できず、国際的には少数派になる。
国内で保守層が強いのは、理論ではなく、感情に基づいた思想だから。人間の脳が進化の過程で獲得した性質が保守思想を生んでいる。
国内では、保守層に訴えかけ、国際的にはリベラルな政策をとっている安倍政権は、無敵。
きれいごとを言う人は、「道徳の勘定」効果により、自分のことになると道徳に反したことをすることに抵抗が少ない。このダブルスタンダードが批判される。
人の性格のかなりの部分(30%以上)は遺伝の影響を受けている(知能は、80%程度遺伝の影響)。
Posted by ブクログ
2019.1.25
日本がどこかシニカルなのは愛国主義=軍国主義のイメージがあり、愛国主義者を名乗りづらいからかというようなことを感じた。
「繊細な良心 高機能の道徳センサー と高い知能をもつ者が、もっとも効果的に抜け駆けできる。」
ダブルスタンダードも使いようかなと。そうでない人なんてほとんどいない。
Posted by ブクログ
日本の政治における「リベラル」と,いわゆる世界の「リベラル」というのは,実は随分意味合いが違うということを恥ずかしながら初めて知りました。
日本の政治において,野党の票がいまいち伸び悩んでいる理由がずばり指摘されていると思いました。
著者の考えに賛同できないところもありますが,あとがきは「そうだよねえ」とくすりと笑えます。
朝日ぎらい よりよい世界のため
始めて橘氏の本を読みました。
日本のリベラルに対して持っているもやもやを大分晴らしてくれました。
ただ自分が持っているもやもやはすべて解消されなかったのは残念でした。
Posted by ブクログ
世界は急速にリベラル化し、奴隷制などの善悪のはっきりしている問題のほとんどを解決する成果を上げた。残っているのは、信仰の自由と世俗主義の対立、経済格差と自己責任、地球温暖化と原発の是非など、簡単には善悪を決められない問題ばかりのため、リベラルは敗北するようになった。
人びとが不道徳や犯罪を夢中になってバッシングするのは、それが協同体を維持するのに最もコストが安い方法のため。道徳に反したものを罰すると、それを見ただけで脳からドーパミンが放出される。週刊誌のゴシップやネットの書き込みは、正義に依存した病理現象。
歴史的に個人よりも世間が重視されてきた日本では、リベラルと呼ばれる人の多くはコミュニタリアン左派にあたる。
リベラルか保守かは、経験への開放性(新奇好み/嫌い)と強く相関することが様々な研究で示されている。政治的態度に関与する遺伝子を探る研究(Peter K. Hatemi etc.)において、有意な相関がみられたもの:
・第4染色体にあるNMDAという情報処理や抽象的思考などの認知能力に関係する脳の受容体の遺伝子
・第4染色体にあり、恐怖や不安に関係するNARGI受容体の遺伝子
・第9染色体にあり、NMDAを活性化させるドーパミンの方種と関係しているDBH受容体の遺伝子
・第9染色体にある臭覚の受容体の遺伝子
認知能力に関係するNMDAやDBHの遺伝子を持つ人は、知的好奇心が高く、新しい経験に開かれていて、政治的にはリベラルになる。恐怖や不安に敏感なNARGI遺伝子を持つ人は、世界を敵対的なものとみなし、新奇なものを嫌悪し、政治的には保守派になる。
Posted by ブクログ
本書の内容は、題名からネトウヨ的立場による朝日叩きかと思ったが、朝日叩きの内容はほとんどなく、リベラルと保守の本質を突き詰めていく内容である。
なぜ各国でトランプのようなポピュリズムが台頭し、リベラルがどのような経緯で成り立ち、なぜポピュリズムに勝てないのか等リベラルや保守、ポピュリズムを知る上でかなり参考になった。また保守は各国独自の価値観に左右されるが、リベラルは国際基準で同じ価値観であるから、世界的に普遍の価値を有するということがリベラルの本質をついていると思われた。
本書の冒頭で、日本においては自民党が革新的立場にあり、共産党や立民党が保守のような立場にあることが、若者層の支持を得ずリベラル衰退の要因と書かれていた。最初はインパクト狙いの詭弁と思ったが、まさにそのとおり的を得た見方であった。
とにかく内容は難しかったが、リベラルを知る上でためになる一冊であった。
Posted by ブクログ
朝日の最終面接前に読んだ。面白かった。朝日新聞、変われるのかなあ。真にリベラルになれるのか。期待と一抹の不安、自分が変えるという気概を持って臨みたい。
・「朝日ぎらい」は、リベラル化とアイデンティティ化という現代社会の2つの大きな潮流から説明できる。
・社会において自己実現に失敗し「日本人であること」以外にアイデンティティを求められなくなった人がネトウヨの正体 → ネトウヨはびこる原因は社会全体のもっと深いところにあった。じゃあ今のネットの言論状況を変えるにはもっと根本的に社会の旧弊を打破し、どんな人にも居心地の良い社会を作っていかなくては。ネトウヨを救うのはリベラルでは?!
・かつての「リベラル」が既得権益層となり保守化している、若者はじつは「リベラル」であるという、リベラルと保守の逆転が起きているという見方に納得。
・安倍一強の秘密は4つの戦略の組み合わせ
①国際社会では「リベラル」
②若者に対しては「ネオリベ」
③既存の支持層に対しては「保守」
④日本人アイデンティティ主義者に対しては「ネトウヨ」
・どこかに「???」なところ(理解に苦しむ箇所)があったのだか見つけられない