あらすじ
ケシの実、青カビ、ブタの膵臓……人類はあらゆる材料を駆使して新薬を創りだしてきた! 創薬の第一線で35年にわたり活躍する研究者が、先人たちの飽くなき挑戦の歴史を描き出す。薬に対するあなたの理解を一変させる科学ノンフィクション。解説/佐藤健太郎
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Posted by ブクログ
新薬の開発はますます困難になってきており、ファイザーのようなメガファーマもこの頃では創薬からは手を引いて他社が作った薬の導入に専念したいと考えている。ここまで薬剤はどのようにして見つけられ(作られ)てきたのか、わかりやすい歴史的背景と豊富なエピソードで描かれた良書。
・薬剤の創造は当初は自然にある物質をそのまま使っていた。アヘンからモルヒネが合成され、さらにその誘導体としてヘロインが作り出された(日本におけるアンフェタミンのように当初は依存性のない薬として市販されていた)。ペルーのキナの木の皮からはキニーネが合成された。
・次に純粋に工業的に製造される時代が始まり、エーテルが麻酔薬として用いられるようになった。高価な塗料(巻き貝から作るティリアン・パープルやカイガラムシから作る深紅)の染料を作ろうとする中で、化学物質の構造を少し変えるだけで劇的な変化が起こることが知られるようになり、合成化学による創薬の時代が始まった。サリチル酸はすぐれた抗炎症作用を有するものの、胃痛や耳鳴り、吐き気などの副作用が強く使いにくい薬であったが、これにアセチル基を付与することでアスピリンが合成された。
・さらに、受容体仮説が提唱され、分子レベルで標的を定めた薬剤合成の時代が始まり、サルバルサンが作られた。
・そしてペニシリンが発見され、土壌由来の医薬品、特に抗生物質が大きなトレンドになった。当初はペニシリンは極めて貴重であったため、患者の尿は一滴残らず回収され、ペニシリンはリサイクルされていた。
・その後、分子生物学の発展により、大腸菌でインスリンが合成された。
・ピル、壊血病とビタミンC、セレンディップな抗精神病薬の発見
・グッドマンとギルマンはもともと大学の同僚であったが、ギルマンの方は息子をアルフレッド・グッドマン・ギルマンと名付け、この息子はGタンパク受容体に関する研究で1994にノーベル生理学賞を受けた。