あらすじ
中世から現代までの千年に渡る膨大な歴史資料を網羅する英国国立公文書館。ここには米国独立宣言のポスター、シェイクスピアの遺言書、欧州分割を決定づけたチャーチルの手書きメモから、夏目漱石の名前が残る下宿記録、ホームズや切り裂きジャックの手紙、タイタニック号の最後のSOS、ビートルズの来日報告書まで、幅広い分野の一次資料が保管されている。この宝石箱に潜む「財宝」たちは、圧巻の存在感で私たちを惹きつけ、歴史の世界へといざなう。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
英国国立公文書館に眠る一次資料をもとに、歴史の裏側を読み解く一冊である。夏目漱石やビートルズ来日時の記録など、日本と英国のつながりを示す資料も紹介されており、親しみやすい。帝国主義、戦争、外交など多様なテーマが扱われており、一枚の文書が持つ重みに圧倒された。特にチャーチルのメモには、その一言に込められた政治的重圧を強く感じた。ケンブリッジ・スパイ事件をはじめとする興味深いエピソードも多く、日本の公文書館にもぜひ訪れてみたいと思わせる内容であり、公文書の保存と管理の重要性を学ぶ良い機会となった。
Posted by ブクログ
英国の歴史にかかわる出来事を公文書館(National Archives、以下NA)の資料を引用し纏めたもの。類書がありそうな(NAがそれぞれの出来事でパンフを作っていそうな)気もするが、この視点があったね、うん、と納得の1冊。読み易く、取り上げられている内容も日本との関わりからマグナ・カルタ、サイクス・ピコ、女性参政権、タイタニックと幅広い。ケンブリッジ・ファイブの謎めいた内容、公開を100年近く伸ばしている内容も興味をそそられる。20世紀あたりの章は東西冷戦からインド周辺や中東の現在の混沌とした状況にいかに英国が(鉛筆一本で)大きな影響を与えていたかがわかる。巻末には参照資料も記載されている。日本での公文書のあり方についてもページが割かれている点も好感。大学生の教養課程に使えそうな良書。
一点疑問。エドワード8世の退位に関する章で自分の思いを直接国民に語りたいという国王に対しボールドウィン首相が「憲法に関わることです」「憲法違反です」といっているがここでいう「憲法」とは何だろう。成分化されたものはない国だから首相は慣習法について言及しているのか。一般には王制の危機を説いたと言われているところだが。