あらすじ
アメリカの大統領選挙やイギリスEU離脱の国民投票では、私たちが無意識のうちに提供している多くの個人情報が選挙キャンペーンや世論形成に利用された。嘘を混ぜたプロパガンダや個人の不安に直接訴える「マイクロ宣伝」といった、巧妙なサイバー戦略は、近い将来行われるであろう日本の国民投票でも使われるのは間違いない。これらによって醸成されたポピュリズムに私たちはどう抗うのか。欧米での徹底的な取材からデジタル時代の民主主義を考える。 【目次】まえがき/第一章 ビッグデータは監視し、予測し、差別する/第二章 「心理分析」データを使った選挙広告キャンペーン/第三章 ソーシャルメディアは敵か、味方か/第四章 ロシアのサイバー作戦が欧米のポピュリズムを扇動する――ロシアから「ボット」をこめて/第五章 デジタル時代の民主主義/あとがき/主要参考文献
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Posted by ブクログ
まだ読んでいる最中だが今年のザベスト確定。ポピュリズムの話かと思いきや、序章はビッグデータブローカーが節操なく暗躍する現代を的確に表現。
・ソーシャルメディア上では「すました自分」を見せがちで嘘がつかれることが多いが、検索は真実を語る。
・やっぱりアメリカはデータ産業への規制が緩い。Facebookに自分に関する情報を請求したら消去したはずの記録も含め拒否した友達リクエストなど膨大な行動記録が残っていた。人の繋がりの監視が実現してしまっている。
・しゃべるスマート人形「ケイラ」はいつも会話に待機しているため、周囲の会話が勝手にサーバーに送られていて、ハッキングされる可能性も高かった。シリは大丈夫??
・リベラルな著者のFacebookフィールドに保守の友人の投稿が表示されなくなった。友達関係は解消していないのにFacebookが勝手に自分の考えに近い投稿を表示しているよう。自分の好きな情報ばかりの「フィルターバブル」に閉じこもる、面白ければ偽ニュースがバズる、陰謀論が拡散する。。。これがデジタルポピュリズム。
・ドイツはナチスに国民が煽動されて政治がメチャクチャになった歴史があるから国民投票はない。デジタルポピュリズムはプロパガンダキャンペーンで世論を恣意的に操作しやすい。そもそも多数決で白黒つける国民投票は「国民の決めたこと」として議会のチェックバランスを超越してしまう。直接民主主義が間接民主主義よりすぐれるわけではない。制度的に急進的、排外的法案が可決されないことに間接民主主義の価値がある。
・Facebookはミャンマーで無料にネット接続できる代わりにFacebookの選んだサイトに接続するサービスを提供し、ミャンマー人のインフラになったが、ロヒンギャに関するフェイクニュースが拡散するなど問題があった。インドはFacebookの申し出を断り、イギリス支配時を彷彿とさせる「あなた方のためだから」にも嫌悪感を示した。
著者はケンブリッジアナリティカによるトランプ選挙支援に問題意識を持ってこの本を書いたとのこと。
Posted by ブクログ
多くが米国の例で特にトランプの大統領選挙を中心としたSNS関連のものである。筆者の友人との実例もあるので、読んでみて米国のSNS利用について知るのはいい。
卒論では、SNSの日本との対比としての米国の実例としては使えるのかもしれない。
Posted by ブクログ
ソーシャルメディアと政治の関係は年々密接になっている。特にアメリカ大統領選挙2020は代表的な例だった。特に最近は新型コロナの影響もあってソーシャルメディアのようなオンラインのプラットフォームは政治家にとっても有権者にとっても重要な媒体。オンラインで繋がれるメリットは大きいが、情報の信頼性といった点では課題が残る。また無意識に自分が得る情報も自分に似た考えばかりになってしまうのも問題。
Posted by ブクログ
ツイッターやフェイスブック等のソーシャルメディアは、コミュニケートしたい人たちとだけ、コミュニケートする。字数も限られ、論理だった物言いではなく、決めつけ・生な感情の吐露が中心となる。自分の見たい現実だけを見ることが通常化し、事実かどうかより、あってほしい世界が大切にされる。エコーチェンバー現象。閉鎖的な空間でのコミュニケーションを繰り返すことにより、特定の信念が増幅または強化されていく。
パーソナリティに応じて、ニュアンスや広告のタイプを変える「個別化されたプロパガンダ」としてのマイクロターゲット広告。それが、SNSを事業とし、拡大し、既にTVを超える広告収入をもたらし、巨大産業化を可能にしたが、それを自らの政治勢力を拡大することに活用する人々が出てきた。敵をつくり、嘘と陰謀で、恐怖・不安をあおり、人々の怒りを増幅させ、組織のエネルギーとしていく。単純化したスローガンを連呼する強いリーダーを求めるようになる。結果、イギリスのEU離脱が起き、トランプ大統領を生み出した。
デジタル・ポピュリズムへの対抗は容易ではない。あれかこれかで整理できるような問題解決などない。課題も複雑で、多元主義的なアプローチが必要となる。だからデジタル・ポピュリズムは当分続く。デジタル・ポピュリズムを考えるうえで好著。
Posted by ブクログ
SNSをやらないから知らなかったが、こういう世界がすでに相当な深度で社会に浸透していることに衝撃を受けた。支配者層の”養分”となって搾取される運命にあることが知られるようになっても、今さらSNSを使うのをやめるわけにはいかないし、国家権力で規制する訳にも行かないのだろう。これからも似たような、そしてさらに強力な情報収集、解析ツールが登場すると思われるが、もはやなすすべもなく、無力感しかない。
Posted by ブクログ
最初はダラダラまとまりがないなぁ‥と感じたものの、豊富な事例(週刊誌みたいで失笑をさそうものも含め)と各国の状況や国民性が丁寧に記述されていて好感が持てる。ポピュリズムの台頭をネットやSNSだけの責任にはもちろんできないが、民意を操作しようとする権力者にとっては非常に便利で残酷な兵器に、私たちは便利さを享受することと引き換えに片目をつぶった状態で今までやってきたのだという事を改めて考えさせられた。
Posted by ブクログ
ポピュリズムは、日本語では「大衆迎合主義」となるけど、要するに<反多元主義>だろう。
つまり、民主主義と真っ向から反対するのがポピュリズム。これはかなり厄介だ。
そのデジタル版がテーマということで、本書は、ダイナミック・プライシング、マイクロターゲット広告、フィルターバブル問題などに言及して紹介をしているが、読み進めていくにつれて、トランプ大統領の黒幕の富豪についてや、監視国家であった旧東ドイツなどのおぞましい面も紹介されている。
新書でライトな読み物だろうと読み始めたが、ハードな記述もあり、なかなか脅威を感じる読書だった。
私は、デジタルから距離をどの程度取るか、今の課題になっているけれど、いまさら、プライバシー完璧と謳うダックダックゴーを使うのも手遅れな気がするし、(まぁフィルターバブルされているであろう某SNSは手放したけど、)それでも既にスマホニュースにはマイクロターゲットでロックオンされているであろう記事が流れ込んできて、ホテル予約アプリからはダイナミック・プライシングで通知がじゃんじゃん来るし、なんだかなあという感じだ。
いずれにしても、社会的弱者の側面がある私には、かなり危険を感じる内容でした。
Posted by ブクログ
消費生活と政治に関する最新のデジタルテクノロジーの手法を紹介し、「民主主義」に及ぼす影響
使い方はどんどん洗練され上手になっていくのが歴史の流れ。起こり得る結果であったとしても、