あらすじ
いま、過熱する「発達障害バブル」。専門外来では、予約から診察まで3か月待ちは当たり前といった状況が続いている。
わが子の行動やコミュニケーションに不安を抱く親たち。
仕事や人間関係の尽きない悩みに原因を求めるおとなたち。
皆、「生きづらさ」のよすがとして、「発達障害」という記号を求めているのではないか、と精神科医の香山さんは指摘する。
早く診断を受けて、適切な支援を受けさえすれば、この「生きづらさ」は軽減されるのか?
発達障害に関する分類や考え方は、まだまだ大きく変動しており、精神科医でさえ、その変動についていくのは難しい。
過熱する患者や家族の心理と変動し続ける発達障害診断。
「発達障害」はどこへ行くのか?
精神科医・香山リカさんが、生きづらさの原因を「発達障害」に求める人たちの心理と時代背景に斬り込んだ意欲作!
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Posted by ブクログ
近年自分自身を発達障害ではないかと疑い始めていることもあり読んでみた。
・発達障害を取り巻く環境、これまでの経緯などが易しく書かれていて読みやすい。
・発達障害の概念が精神科医でさえ難解だと感じるほど複雑なものであり、定量的に「あなたは発達障害だ/ではない」と決定できるようなものではないらしい。当事者にとっては不安かもしれないが、今後この概念の研究がどのように進むのかに着目しようと思う
以下の記述は少し納得できない点があった。
・4章p.110~p.114のあたりに「人との直接的なコミュニケーションを重視しない人(本文中でASD型人間などと記述、要はグレーゾーンの人を指していると思われる)が増えると、日本の少子化問題の解決が遠のく」と読み取れる記述がある。
少子化云々の話はこの本の趣旨から逸れていると思うし、その問題の原因を発達障害の人のみに押し付けているように感じられて私は不快だった。
Posted by ブクログ
※若干流し読み。
香山リカ氏の著作は、過去に『就活がこわい』(講談社)を読んだことがある。『就活~』とこの著書をみると、現代(当時)の人々が持っている不安に焦点を当てることが得意なのかな?と思った。
「大人の発達障害」「うつ」という言葉が頻繁に耳にする時代になり、著者は、軽度または障害出ない患者が多く診察に来るようになったこと。そしてその仕組み(ビジネス)について指摘する。
そこに関しては新たな知識が得られた気がする。これが作品のはじめに書かれた「社会的な現象」なのだろう。
しかしながら、医療関係者ではない一般読者の私としてとしては、発達障害になれなかった「平凡恐怖」についてもっとページをさいてほしかった。
なぜ彼女らは「平凡」を恐れるのか、障害のような症状をなぜ許せないのか。そして苦しいのか。その社会的背景と解決?を知りたかった。…それは著者の書きたいことではなかったのかもしれないが…。この、あと一歩…二歩踏み込んでほしい気持ちは、『就職~』でも感じた。